百合香と地方紙
翌日の地方紙で(自称)百合香はその活躍を報じられた。片隅だけど。
「お兄ちゃん見て。
へへーん、『ゴスロリ美少女大手柄』だって」
「おう、良かったな。
これで(自称)百合香も地方の有名人だな」
「もう、そう思うならいい加減(自称)は外してよね」
ぷぅっと膨れる百合香の頬っぺた。
そのうちな、と言った程度では膨れは戻らず、俺は両手で(自称)百合香の顔をサンドイッチし、物理的にその頬を元に戻す。
そういえば
「(自称)百合香、昨日はどうやって事件を解決したんだ?
何故か兄ちゃんには全く思い出せないんだが……
それに、出来ればあんまり危ない事はして欲しくないんだぞ」
「へへーん、百合香の活躍は描写厳禁なの!
お兄ちゃんがそう言うなら十分注意するよ。
でも、お兄ちゃん心配してくれるんだ、嬉しいなぁ。」
しかし、そんな俺の心配と(自称)百合香の言葉とは裏腹に、翌日から毎日の様に(自称)百合香の活躍は紙面を賑わせた。
『ゴスロリ美少女再び!』
『またもゴスロリ美少女』
『ゴスロリ美少女、その名は百合香ちゃん』
『決めゼリフは【私が妹だ!】』
一ヶ月を過ぎる頃、この街で(自称)百合香を知らない者はいなくなっていた。
かつては根暗で友達もいなく、ずっと俺の後ろをついてまわっていた(自称)百合香。
そんな(自称)百合香も人気者となり友達もでき、それでもやっぱり俺の周りをついてまわる(自称)百合香。
和やかな日々が、ずっと続いていくものだと信じていたそんなある日。
俺たちの両親が突然いなくなった。