新型コロナウイルス 小児が軽症な理由<新しい知見>
新型コロナウイルス感染は小児や若年者では重症化が稀である、ということは分かっています。この理由として①コロナウイルスが感染するときにACEというたんぱく質を介するためこの濃度に年齢差が関係している、②類縁の軽症コロナウイルス(いわゆるかぜ症候群)に対する抗体の保持率が小児ほど高いため、それが予防的に働いている、等の報告(論文)があります。①に関しては欧米とアジアでの流行状況や重症度の差の説明にはなりますが(欧米人とアジア人ではACEの平均発現率と型に違いがある)、年齢差の説明にはなりにくいと考えられます。②についても若い人や小児の抗体保有率は数%高いだけなので果たしてこれだけで圧倒的に低い小児の重症化率の説明にはなりにくいと考えられます。
今回報告されたのは、③獲得免疫説です。病原体が体内に侵入したときにその病原体に対して初期の免疫反応が起こります。もともと備わった免疫反応でマクロファージやNK細胞、最近分かってきた自然リンパ球がこの反応を担っています。この反応を自然免疫と言います。それに対してより強力に病原体を排除するメカニズムを獲得免疫と言います。これに関与するのがB細胞やT細胞で抗体産生やサイトカイン産生を通じて全身の免疫反応を総動員して病原体の排除を行います。小児はこの獲得免疫系が未熟なために病原体排除は自然免疫系が主体となって行います。成人ではこの強力な獲得免疫が主体となって働くのです。この強力すぎる免疫反応が自己の身体を攻撃することが重症化の要因であると推論しています。SARSウイルスなどで抗体依存性感染増強(抗体が存在することがかえって感染を悪化させる現象)が報告されていることもこの説を裏付ける根拠になっています。