日本が“一般年収122年分”の値段で購入した国宝中の国宝! 日本刀の最高傑作「大包平」の歴史エピソードとは?

日本が“一般年収122年分”の値段で購入した国宝中の国宝! 日本刀の最高傑作「大包平」の歴史エピソードとは?
       

 今回は大包平という刀の各種エピソードや、大包平の価値などについてご紹介していきましょう。この名太刀・大包平の元々の持ち主は岡山県の白亜の城、宮本武蔵が関係する妖怪退治と「お化けの刀」の伝承も残されている「姫路城」に関連のある、歴史上の人物です。

【その他の画像はコチラ→http://tocana.jp/2017/07/post_14018.html】


■倹約家の財布の紐を緩ませた?

 大包平を代々伝えていたのは、江戸時代に播磨国(現在の兵庫県西部)、備前岡山藩を長らく治めた大名家「池田氏」でした。そして池田氏歴代当主の中でも学問に通じた名君と伝えられており、藩の財政政策を主に経費節約で通した倹約家としても知られる「池田光政(いけだ・みつまさ)」と大包平に関しては、とある逸話が残されています。

 その内容は『お金の無駄遣いをしないことで知られる池田光政であったが、その実は大の愛刀家でもあり、ある日売りに出されていた大包平を見て一目惚れ。だが大包平があまりにも高価であったため、池田家に仕官していた陽明学者、熊沢蕃山に「このように高い刀など買うぐらいなら、お家のために優れた家臣を募り迎えるべきだ」と諌められたが、光政は「これだけは譲れない、どうにか許して欲しい」と熊沢に懇願、何とか大包平を手に入れた』というものです。

 ただし、大包平は光政の祖父・輝政(てるまさ)の時代から池田家にあり、輝政の愛刀であった、と伝えられているため、この逸話は事実ではありません。おそらく「公私共に大の倹約家であった光政をして、大枚を叩かせるほどの素晴らしい刀」ということを示すために作られたものでしょう。

 ちなみに輝政は、「大包平は一国に替え難い名刀」と愛刀を高く評価していたものの、息子の利隆(としたか)に対しては「大包平は確かによい刀だが、真に頼るべきは刀ではなく家臣である」と言い聞かせていたそうです。


■破格の買取価格、現在の価値に換算すると?

 昭和42年のこと、大包平は池田家から文部省(現在の文部科学省)によって買い上げられ、国の所有物となり、以降は東京都の東京国立博物館に収蔵されています。この時に国が支払った金額は何と6500万円。いくら平安末期の逸品とはいえ、1本の太刀の対価としては破格の額面と言えるものです。

 昭和42年当時の6500万円を「消費者物価指数」によって現在の貨幣価値に換算すると、参考数値ではありますが、約2億7千万円という金額になります。ただし、あくまでも国家と名家での取引によって出た金額です。これがもし個人間の取引であったのならば、間違いなくこれ以上のとんでもない値段が付いたことでしょう。

 ちなみに、昭和42年のサラリーマン年収は531,800円、月給は約45,000円であったようです。こちらで考えると「大包平には当時一般年収の約122年分の値段が付いた」とも言えるのですが、その後のサラリーマン年収はとてつもない右肩上がりを見せているため、あまり参考にはならないでしょう。


■名刀大包平が「天下五剣」に数えられなかった理由

 ロストテクノロジー的な作刀技術が込められている、日本一の名刀として名高い、国宝中の国宝と呼ばれているなど、非常に優秀かつ人気の高い大包平ですが、なぜか名刀5振りを選んだという「天下五剣」には数えられていません。

 この理由は簡単なもので、先述した通り天下五剣は「明治時代以降に刀剣関係者の間で定められた、"刀の出来栄えだけではなく、由緒や逸話も含めた上で選ばれた"名刀5振り」であるためです。


 天下五剣に選ばれた刀は、いずれも「妖怪や鬼を退治した」「歴史に名を残す偉大な著名人の愛刀」「魔を払った」などの、不思議な逸話や高名な人物のエピソードが数多く残されているものです。またそれらを作刀した刀工も、名刀匠として非常に高名な人物ばかりとなっています。

 それに対して大包平は、日本一の名刀と称される美しさと性能ながらも「鬼を斬った」などインパクトのある伝承や活躍を持たず、さらに輝政が手に入れる前の経歴や入手経路、実のところそもそもいつごろから池田家にあったのかさえ不明なのです。また刀にまつわる逸話と言えば「どケチな倹約家の光政をして、財布の紐を緩ませたほどの名刀」という先述のエピソードや、史実としては「池田家の年中行事に使われていた」程度しかありません。

 要するに「刀としては非常に素晴らしいが、由緒や逸話が非常に弱い」というのが、天下五剣に数えられなかった理由なのです。日本刀研究家の佐藤寒山は「天下五剣5振りは間違いなく天下の大名刀であるが、おそらくその選定基準として、名刀であることに加えて由緒や伝来も持つ刀が数え上げられたのだろう」と、天下五剣に関してのコメントを残しています。

 西の横綱、日本一の大名刀、国宝中の国宝、日本刀の最高傑作と呼ばれながらも、名刀五選に名を連ねることはできなかった、ある意味では不遇の刀と言える大包平。「天下五剣」というカテゴリに入っている名刀よりも、何となく親しみを感じてしまうような気がしますね。
(文=たけしな竜美)

※画像は、Wikipediaより

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    岡山県の白亜の城…??

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