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2021.02.24 07:00  週刊ポスト

国広富之 緒形拳さんと林隆三さんに見た「生き様を背負った芝居」

「実際に目の前で俳優さんが芝居をしているのを見ていて、一生懸命に観察しました。

 当時はいろんな役者さんが江戸からいらしていて──京都では東京から来た俳優さんを『江戸の役者』っていうんです。そういう江戸の役者さんを見て、『芝居ってこうやってやるんだ』と勉強しましたね。

 たとえば緒形拳さんと林隆三さん。昼休みにお二人でキャッチボールをして遊んでいるんです。緒形さんが『隆三、ここで俺がこういう芝居をするから、お前、この辺で受けてくれるか』と言うと林さんが『じゃ、俺はこんな感じでやります』って、打ち合わせしていました。それで監督が来たら芝居を見せる。

 半年や一年レギュラーをやっていると、俳優って役のキャラクターになり切るんですよね。なり切った人間が動くと、その人の生き様を背負った芝居になります。そんな二人がセリフをやりとりすれば、時には監督の指導より的確になるわけです。

 僕も後に『トミーとマツ』をやった時がそうでした。松崎しげるさんと僕の二人の息が合ったら、僕たちのやることが全て正解になっちゃう。

 そうやって俳優の面白さを知るうちに、大学を卒業する頃には俳優の道に進もうと。大部屋の先輩に相談したら『それは江戸に行かなあかん。俺らみたいに関西弁しゃべっていたら役できへん。まず江戸弁しゃべれんとな』と。そういうアドバイスもあって、東京に出ることにしました。親には反対されましたが、二、三年東京で──という形で納得してもらいました」

【プロフィール】
春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。

撮影/五十嵐美弥

※週刊ポスト2021年2月26日・3月5日号

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