骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

王林が好きです。(笑)

中々登場出来ないキャラが居ます。
今朝も書いてる話の続きを考えているのに
勝手に割り込んで来ようとして困っています。

もつちょっと待っててね。

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その12 林檎1個で医者要らず。

「・・・釣れませんね」

 

「そだな」

 

何の役割もこなしていない役割分担指示者たちは

少し遠出して湖に釣りに来ていた。

近くに山脈も見え景色も良かったのだ。

 

「君たちかれこれ2時間くらい見てるけど、それで本当に釣れると思ってんの?」

 

突然の声に2人は慌てて振り返るが誰も居ない。

 

「気のせいか?」

 

「そうだよ!木の精だよ!よく分かったね!」

 

「ゲッ!?」

 

其処には肌が木の幹の色艶をしており、頭部に新緑のような髪が生えている生き物が立っていた。

 

「妖精、ですね?」

パンドラズ・アクターは問うた。

 

「正解っ!ピニスン・ポール・ペルリアって言うんだ!でも長いからピニスンでいいよ!特別だよ!」

 

(なんだこれ?メルヘン全開だな!中々可愛いぞ)

「それでそのピニスンが何の用だい?」

鈴木は努めて優しく話しかける。

 

「君たちが餌も付けずに竿を垂れてるから不思議だなっと見てたんだよ!」

 

それは2人共承知していた。

地中からミミズを採って釣り針に付けられる程器用な指先を持ち合わせていなかったのが、その理由だ。

 

「ははっ!それは悪い事したな。我々の目的は魚じゃない。こうやって遠くの山々を見て自然を楽しんでるんだ。」

 

「へ〜、そんなの見て楽しいの?」

 

「ああ、楽しいぞ。流れる雲、揺れる水面、一時として同じ表情を見せない。こんな素晴らしい事があるものか。」

 

「ところで君たちはどっから来たのさ。」

 

「ああ、少し離れた村だ。カルネ村って言う。」

 

「カルネ村・・・知らないなあ。けどさ、もし連れて行ってくれたらゼッタイ役に立つよ!」

 

(こんなファンタジーが役に立つワケねーよな。けど女子って精霊とか好きだからな、ひょっとしてカワイイーとか言って喜ぶかも知れんな)

「しかし、何故連れてって欲しいだ?森の方が暮らし易いと思うが?」

 

「そりゃそーなんだけどさ。なんか近頃物騒でさ。此処に居ると色々ヤバいんだよねー。」

 

するとパンドラズ・アクターが近寄り小声で

「父上、何か訳ありそうですが、取り立てて害は無さそうですし連れ帰りましょう。ひょっとしたらこの者は新しい実験に使えるかも知れません。」

 

「ヨシ!じゃあ一緒に来い!」

 

鈴木は村へ転移門を開き、ピニスンに入る様に促した。

ピニスンは、怖い、怖いと嫌がったがシブシブ門を潜った。

 

ーーーーー

 

「と言う訳で拾ってきたピニスンだ。」

 

「へぇー、思ったより沢山の人間が居るねー。ワタシはピニスン、宜しくね!」

 

「木が喋った」「毎日水やりするのかな?」などと中々姦しい。

 

「で、ピニスン。約束通り連れて来たぞ。一体どう役に立ってくれるのだ?」

 

「ああ、その事ね。あのね、ワタシは美味しい林檎を作れるのさ。ワタシの作った林檎を食べるともう他の林檎は食べられなくなるんだよ!」

パンドラズ・アクターは、ああやっぱりと言う顔をしていた。

 

「なんだアクター、知っていたのか?」

「確証は無かったのですが妖精種は特性に応じた恩恵を与えます。木の精なのでひょっとしたら果物が作られるかな?と。」

 

(わぁファンタジーだぁ)

鈴木は夢見る骨の乙女になった。

 

ピニスンの加入で急遽果樹園計画が持ち上がり、例の如く鈴木の出番となった。

女たちは甲斐甲斐しく世話をしピニスンは大いに満足した。

「ところで森から出る決心をした理由をまだ聞いて無かったな」

「うん。それがね随分前に封印されてた魔樹の竜王ってのが最近動き出したみたいなんだよ。これがとんでもない奴でさ。養分吸い取って周りの木や草をみーんな枯らしちゃうんだ。それでね森は今大騒ぎさ。」

(竜王?ドラゴンか?パンドラズ・アクターのフラグはこの事か?)

「それでその竜王ってのは森のどの辺に居るんだ?」

「う〜ん、詳しい場所は分からないんだけど東の方角だって小鳥たちが言ってた。」

(こいつ!そんな物と話せるのか?!どんだけファンタジーなんだ?)

「息子よ、これは一度調査の必要があるな」

「では皆を集めて相談しましょう。」

 

ーーーーー

 

その後、鈴木とパンドラズ・アクターが眷属を召喚し調査を開始したが目ぼしい成果を上げる事なく数日が過ぎた。

 

「どうやら何処かに潜んでいるようだな。わざわざ寝た子を起こすのもどうかと思う。ここは静観するか?」

調査結果を受けて会議が招集されていた。

「父上、もしもの事を考え防衛面を再考するべきかと。」

「そうだな。相手がドラゴンとなればガゼフやクレマンティーヌでは歯が立つまい。7位レベルで天使どもを呼んでおくか。それとデスナイトをもう20程作っておこう。指揮権はガゼフに与えよう、村の警備責任者だからな。」

 

「あのう、、、イイですか?」

話を聞いていたクレマンティーヌが手を挙げる。

「なんだ?」

「ハイ、薬草採取の時の護衛なんだすけど、その竜王とかに出会したらアタシじゃ守り切れないな、と」

確かにそうだ。かと言って村の収入源を止める訳には行かない。

「よし。クレマンティーヌには何か見繕ってやる。只、もしもの時は戦おうとしてはいかん。安全を第一に考え逃げるのだぞ?召喚モンスターは時間稼ぎの盾とするのだ。」

「承知しました。」

 

「じゃあ、今日の会議はこれまで。散会。」

 

クレマンティーヌは嬉しかった。

いざと言う時にはお前が盾になれと言われると思っていたのだ。今まではズッとそうだった。自分は捨てられても良い駒。任務達成の為に常に命を賭けるのは当たり前だった。

「なんか嬉しいな」ボソリと呟いた。

 

ーーーーー

 

魔樹の竜王は放置と決まって村は再び平和な日々を送っていた。

 

「父上、暇ですねぇ」

 

「だ・か・らぁ〜、フラグ立てんなってゆうとろうが!」

 

明日、ンフィーレア夫妻が婆さんとネムの様子見に里帰りするのだ。勿論、仕上がったポーションも持って行き売る。

 

「久しぶりのエ・ランテルだからな。彼女らの服やら何やら買出しもせんといかんのだ。あちこち破れたのを直して着てるだろ?あれでは可哀想だ。」

「でも彼女たちはそれで良いと言ってましたよ?」

「気を遣っておるのだ。年頃の娘が。我が庇護の下でアレではいかん。」

「おお!それは気が付きませんでした。ヤクザの親分が構成員に揃いのジャージ着せる様なものですね。」

「違うわ!まぁそれで明日はお出掛けなのに、お前がまたフラグ立てるから・・・」

 

翌朝、新婚夫妻と鈴木、都市長に挨拶がしたいと言うガゼフの4人でエ・ランテルへ向かった。

 

街の近くに門を開き、検問も難無くパスして街中に入る。

ガゼフは挨拶に行くと別行動し、3人はバレアレ製薬店へ。

しかし、行くと店は閉まっていた。

ンフィーレアが合鍵で中に入るとネムが居た。

「どうしたの?ネム。おばあちゃんは?」

エンリが尋ねる。

「あ!お姉ちゃん!それにお兄ちゃんとサトル様も!」

「おばあちゃーん!」

ンフィーレアは奥に向かって呼び掛ける。

「お兄ちゃん、あのね、お婆ちゃん具合悪いの」

ネムがショボンとして言う。

(風邪でも引いたか?だったらポーションが売る程あるだろうに。)鈴木は首を傾げる。

 

ネムの話はこうだ。

ンフィーレアたちがカルネ村へ発ってから、婆さんは張り切っていたのだが張り切り過ぎて家の階段を踏み外し落ちて足を骨折してしまった。ポーションをかけたのだが中々良くは成らず、それどころか段々と弱り始めた。ネムは健気に家事をこなしたが婆さんは食も細り元気は無くなるばかり。

どうして良いか分からないネムもすっかり元気を無くしてしまい。2人でズッと篭り切りだったのだ。

 

鈴木は思い当たる節があった。

気丈に見えて実は寂しかったのだ。いや、気丈な年寄り程一旦身体を壊すと一気に気弱になる。

「で?婆さんは2階か?」

鈴木は皆を制して1人で2階に上がった。

 

「婆さん、老け込むにはまだ早いぞ!実はカクカクシカジカでな、人手が居るのだ。どうだ?カルネ村へ来てくれんか?」

 

嘘である。

この手の年寄りは面倒みてやると言うと必ず断る。ワシャ大丈夫だ、と。だが、仕事があるから手伝ってくれと言うとこれも必ず受ける。要は、自分の存在価値の話だ、頼りにして欲しいのだ。ネムが家事をこなしてしまったのがかえってその存在価値を疑わせてしまったのだ。

 

「この老いぼれをまだこき使うか?」

 

ニッコリ笑って言う

「ああ、死ぬまで働かせてやる。」

 

婆さんは嬉しそうに何度も頷いた。

 

ーーーーー

 

「大変だ!サトル!」

ガゼフが店に飛び込んで来た。

 

(ハイ、イベント発生)

「落ち着け。詳しくはなしてみろ。」

鈴木はほぼ予想通りの展開に落ち着いて言う。

 

ガゼフが都市長から聞いた話はこうだった。

現国王ランポッサ3世は高齢だ。頼りにならない2人の息子、領民を無視して自己の利益向上だけを考える貴族たち、領土を狙う隣国。心労が重なりとうとう倒れてしまった。無論、対外的な事もあるので内密にはしてあったが帝国のスパイに嗅ぎ付けられた。帝国の動きは早く早速宣戦布告をして来た。一気に王国を併呑する好機と見たのだ。

これは今までの王国の勢力を削ぐ戦争ではない。

因縁にケリを付ける戦いになる。

 

「そうなればエ・ランテルは前線基地になる、カルネ村も影響が出る恐れが十分に考えられる。俺はこれから王都へ行き"元"戦士長のコネでもう少し詳しい情報を集めてくる。」

 

鈴木は話が終わってからも暫く考えていたが、やがて決心した様に口を開いた。

「俺は村へ帰って皆にこの事を伝える。エンリ、直ぐに引越しの用意をしろ。入れ替わりにアクターを寄越すから荷物は奴の無限袋に入れて貰え、準備が終わったら伝言を飛ばせ、迎えに来る。行動開始だ!」

 

ーーーーー

 

村へ帰るとパンドラズ・アクターに皆を集める様に指示を出す。同時に2人でアンデットを作成した。

 

「早速だが、エ・ランテルで良くない話を聞いて来た。詳しい事は今ガゼフが調べているが、今からする話を皆よく聞いて欲しい。」

 

ーーーーー

 

鈴木はカルネ村に非常事態宣言を出した。

モンスター対策に防護壁は作っていたが今度の相手は知恵ある人間。しっかりとした補強だ。

次にシェルター作成。アパート地下に食料を備蓄し避難部屋を作る、数日は持ち堪えられる予定だ。

最後に防衛軍の構築。これはアンデットに任せる。指揮官はクレマンティーヌだ。避難誘導責任者はツアレ。

無論、総括は村長エンリである。

「以上だ。何か質問はあるか?」

 

ツアレが手を挙げる。

「ピニスンさんは?」

もっともな質問だ。土が無ければ生きていけない。

 

「ピニスンは森に隠す。木を隠すなら森、だからな。」

 

今度はクレマンティーヌだ。

「あのぉ〜、サトル様は一緒に居てはくれないので?」

クレマンティーヌは知っている。鈴木さえ居てくれたら敵はワンパンで殲滅出来る。

 

「私は単身、帝国へ和平交渉に行くつもりだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

リイジー・バレアレさんはもう婆さんで良いと思ってます。
なんとなくその方が親しみがわくのです。
お気づきの通り村は女の園になりつつあります。
でもハーレムは作る気がないです。
だって迫られる鈴木さん、慣れてないのに可哀想でしょ?(笑)

婆ちゃんには"年長者さん"になってもらいます。
きっと良き年寄りになってくれると信じてます。

じゃあ、また。よろしくお願いします。
ありがとうございました。

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