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初めまして、三丁目の太郎です。皆さん、友好の印に取りあえず死ね 作者:たかげるげ
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4 徹底的に潰せ



 山が丘三丁目町内会にある公園は、一つ。三丁目公園、坂の途中にある小さな公園です。ブランコと砂場と簡単なボール遊びができる程度の広場があります。公園の途中に10段ほどの階段があり、下は遊具、上は広場となっています。


 今日は半年に一度の公園掃除の日です。朝早くから班の皆さんが集まって掃除をしています。砂場から怨念のこもった声が聞こえてきました。

「徹底的に潰せ! 一網打尽にするぞ」

太郎さんが砂場のネットに絡みついている、猫の糞の掃除をしていました。砂場を使い終わったら、備え付けのネットをかけます。猫の糞防止対策で、行政が公園に備え付けました。ネットの上に糞をされるので、効果があるのかは疑問なところです。私は軍手と掃除用のトングを持って、太郎さんを手伝いました。

「ここに毒を撒いて、糞をさせないようにするのはどうでしょうか」

太郎さんが私に話しかけました。

「それでは子どもたちが遊べないでしょう」

「ああ、そうか。蓋もネットではなく、密閉されるようなものの方が掃除が楽そうですか」

「そうですね。いいですね。行政に言ってみます」

太郎さんは怖そうに見えて、街のことをよく考えている方のようです。

 糞を取り終えると、公園の前にある道路の側溝を掃除している方が目に止まりました。いつも掃除に熱心な宮本さん、もういい年なのに一人では危ないです。そういう自分も今年70歳になるのですが、高齢化が進んでいる地域でして、70歳ですと町内会では若手の方になります。

「あ、そこの若い方!、そうその黒い服の」

と宮本さんが、太郎さんを指します。

「我を召喚するとは、この側溝の汚れ、徹底的に潰す」

太郎さんは精力的に側溝の汚れを潰しました。

「いやあ、若い人が来てくれて助かるよ」

と宮本さんも助かった様子。しかし太郎さんは、

「若い、我はもう4億5000万才。故郷では年上の方です。故郷では4億歳も生きれれば良い方です」

真面目にそう答えた。意表を突かれた私も宮本さんも目が点になりました。

「え? 太郎さんって地球外からいらしたの?」

私はそう聞くのが、精一杯でした。

「我は地球から遠く離れた星から、参りました。勇者とやらのワープ魔法に飛ばされて、気がついたら地球にいた。幸い故郷とそっくりな環境で、言葉などは不自由せずに助かりました」

「ばかこくでねーよ」

宮本さんはそう言って、太郎さんの背中を叩いた。

徹底的に潰された側溝が輝いています。



次回最終回!

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