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辺境ぐらしの魔王、転生して最強の魔術師になる 〜愛されながら成り上がる元魔王は、人間を知りたい〜 作者:千月さかき

第2章

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第48話「報酬の約束と、失われた『王騎』のありか」

 それから、俺はアイリス、オデットと合流した。

 今度は3人で、『魔術ギルド』の上級魔術師を保護して、簡単な治療(ちりょう)をほどこした。


 俺は、意識が回復した上級魔術師から身分証を借りて村に戻り、C級魔術師のデメテル先生に状況を伝えた。

 その後は、デメテル先生を連れて、ふたたび『黒い森(シュヴァルツヴァルト)』へ。

 先生立ち会いのもと、ドロテア=ザミュエルスを拘束したのだった。




「ドロテア捜索隊(そうさくたい)の本隊に連絡をしました。彼らが到着するまで、我々はここで待機です」


『黒い森』の奥で、デメテル先生は言った。

 俺とアイリス、オデットの目の前で、傾いた『霊王騎』が停まっている。


 ドロテアは縛って、目隠しをして、さるぐつわを噛ませた上で、馬車に放り込んである。

 回復した上級魔術師たちが、奴を見張っているはずだ。



 結局、俺とアイリスとオデットが相談した結果──


「『黒い森(シュヴァルツヴァルト)』の近くを通りかかったら、上級魔術師が倒れていた。気になって森の奥を見たら、ドロテア=ザミュエルスと、腕の取れた巨大なヨロイがあった」


 ──で、話を押し通すことにした。



 あの後、ドロテアとは顔を合わせたけど、あいつは俺が自分を倒した相手だとは気づかなかった。


『黒い森』は文字通り暗い。

 その上、奴と戦ったときの俺は顔を隠していた。

 アイリス、オデットと一緒に奴を拘束(こうそく)したときは、目立たないように後ろにいた。

 声も出さないようにしていたから、気づかなかったんだと思う。


 あとは奴が、『魔術ギルド』にどんな証言をするかだ。

 いざという時のことも考えて、対策だけはしておこう。




「こんな巨大な『古代器物』は、見たことがありません……」


 巨大ヨロイ『霊王(ロード=オブ=)(ファントム)』を見ながら、デメテル先生は目を丸くしていた。


「『王騎(ロード)』というものがあったことは、歴史書の一節に書かれていました。が、実際に見るのは初めてです。こんなものが『八王戦争』で使われようとしていたのですね」

「私たちがここに来たとき、ドロテアを倒した者はすでに立ち去っていました」


 アイリスは横目で俺の方を見てから、先生に告げた。


「何者なのでしょうか……? 先生に心当たりは?」

「わかりません」

「わたくしも信じられませんわ。『古代器物』のヨロイの腕を切り落とすなんて……」


 だからオデットも、こっち見んな。


「それだけの武器と腕前を持っていたということでしょうね。ほんとに、貴重なものを見させていただきましたわ」

「ドロテア=ザミュエルスを捕らえた者は爵位(しゃくい)を……ということになっていましたけど、この場合はどうなるのですか、先生?」

「気になりますか? アイリス殿下」

「王家の者としては、その方に報酬を与えるべきだと思います。ですが、探そうにも、手がかりはドロテアの証言だけとなれば……」

「その者を探して爵位を、というのは、難しいでしょうね」


 デメテル先生は、首を横に振った。


「ですが、今回のことはあなた方の功績(こうせき)でもあります。あなた方がここに来なければ、上級魔術師の皆さまが倒されていたことは、誰も気づかなかったことでしょう。危険をかえりみずにドロテアを拘束し、現場保存をしたのもあなた方です。それなりの報酬(ほうしゅう)はいただけると思いますよ」


 まぁ、このあたりが落としどころだろう。

 俺が表に出ると、聖剣の無断使用が問題になりそうだからな……。

 ちなみに聖剣はコウモリ軍団に頼んで、集団で宿の方に運んでもらってある。


 本当は、聖剣を召喚(しょうかん)するつもりなんかなかった。

 巨大ヨロイ『霊王(ロード=オブ=)(ファントム)』の存在が予想外すぎたんだ。

 これがなければ聖剣を召喚することもなく、普通にドロテアをボコって終わりだったんだけどな。


「……こんなのが8体もあるのか」


 片腕と背中の補助腕をなくした『霊王騎』は、残った腕を地面にめりこませて、停まっている。

 さっきハッキングして調べたら、こいつには自己再生能力まであるらしい。

 落ちた腕も、くっつけて置いておけば、元通りになるはずだ。


 おそろしいな。『古代魔術文明』。

 古代の世界ではこんなものがゾロゾロ歩いてたのかよ……。


 ライルとレミリアが『古代器物』を封印した理由もわかる。

 こんなやばいオモチャを『聖域教会』が使ってたら、世界が滅びかねない。


 すごいな。ライル、レミリア。

 どうやったかは知らないけど──お前たちの消息がわかったら、ほめてやるよ。


 万が一生きていたら、直接。

 死んでいたら、その墓に。


 さすが『ディーン=ノスフェラトゥ』の教え子だ。

 お前たちは俺の自慢の子どもたちだ。誇りに思うよ。

 できたら、その頭をなでてやりたいよ。昔みたいに。


「……問題は、あいつらが持ち逃げした機体がどこにあるか……だが」


 前世の俺と同じ名前を持つ『王騎』、『ロード=オブ=ノスフェラトゥ』。

 ドロテアの話によると、ライルとレミリアはそれを『聖域教会』から奪って、逃げた。

 やつらの事だから、転生した俺とアリス用にとっといた、ってことだろうな。

 それはたぶん、封印されてない状態で、この世界のどこかにある。


 ……どこにあるかは、だいたい予想はつくけどさ。

 うちの子のやることだもんな。

 俺はあいつらの親代わりで、先生でもあったんだから。


「……ユウキさま?」

「……奴から、少しだけ情報を聞きました。あとで話します。殿下」

「……はい」


 俺とアイリスは小声で言葉を交わした。

 オデットはなにもかもわかったような顔で、こっちを見てる。

 彼女にもあとで事情を話しておこう。


「──カイン殿下がいらっしゃいました!」


 不意に、デメテル先生が叫んだ。

『黒い森』の入り口から、いくつもの灯りが近づいてくる。


 やがてそれは十数人の魔術師の姿になる。

 ドロテアの捜索(そうさく)をしていた、上級魔術師の本隊だ。

 先頭にいるのは、金髪の若い男性。

 アイリスとオデットが「カイン (兄さま) (殿下)……」とつぶやくのが聞こえた。


 あれがB級魔術師にしてアイリスの兄、カイン=リースティアか。


「ごくろうだったね。おかげで犠牲者を出さずに済んだ。あなたたちの治療(ちりょう)と、現場保存のおかげです。デメテルどの」

「いえ、アイリス殿下たちの勇気ある行動がなければ、自分は事態に気づくことさえありませんでした。どうぞ、妹君をほめて差し上げてください。カイン殿下」

「その通りだ。よくやってくれたね。アイリス、オデット姫、それと……君は?」


 カイン王子の目が、俺の方を見た。


「グロッサリア男爵家(だんしゃくけ)庶子(しょし)、ユウキ=グロッサリアと申します。殿下」


 今は『魔術ギルド』の同士としての扱いだから、ひざまづく必要はない。

 だから俺は王子の目を見返して、答えた。


「君がアイリスの護衛騎士(ごえいきし)か。いい仕事をしてくれているようだね」

「ユウキさまにはいつも助けられています」

「わたくしの誇れる友人でもあります。殿下」

「助かったよ。今回、ドロテア=ザミュエルスに倒された魔術師たちは、抜け駆けをしたようでね。自分が村で聞き込みをしている間に、勝手な行動を取ったんだ。知らないところで情報を得て、こちらに内緒で、手柄を立てようとね」


 そう言ってカイン王子は肩をすくめた。


「まったく困った連中だ。それに比べて、君たちは手柄に飛びつくこともなく、こちらに正確な情報を伝えてくれた。ドロテアを倒した者が他にいるなどと、言わなければわからないだろうに。評価に値するよ」

「その判断をしたのは彼らです。自分は、報告を受けただけですので」


 デメテル先生が俺たちの方を指し示した。


「評価するのであれば、アイリス殿下とオデット姫、それに、護衛騎士のユウキを」

「もちろんさ。第2王子カインの名にかけて、報酬を約束しよう。君たちがいなければ、ドロテアの発見も遅れていた。奴の仲間が先に来て、このヨロイを持ち去っていた可能性もある。そういう意味では、君たちは『古代器物』を手に入れたとも言えるわけだ」


 カイン王子が、アイリスとオデット、それから、俺を見た。


「なにを望む?」

「私は特に。ユウキさまに報酬をあげてください」

「わたくしも。今回はユウキに譲りますわ」


 アイリスとオデットは、笑いをこらえるような顔で俺を見てる。

 ふたりのことだから、そう言うと思ったけどな。

 まぁ、遠慮することもないか。


「今回は3人の功績です。俺ひとりが報酬をいただくわけには参りません」

「わかった。ならば3人に均等に報酬を与えよう。ただ、アイリスとオデット姫が君に──と言うのだ。なにか希望を聞いてやりたいものだが」

「でしたら、地図を見る権利をください」


 俺は言った。


「現代の地図と、可能な限り古い地図を」

「地図を? それは構わないが、何故だ?」

「この巨大ヨロイ『王騎(ロード)』を見たら、八王戦争当時のことを調べたくなったのです。この機体があの戦争で使われていたら、おそらく、歴史が変わっていたでしょう。その大惨事が起こらなかった幸せをかみしめながら、当時の地図を見てみたいのですよ。俺は」


 もちろん嘘だ。


 現在の地図と、『八王戦争』の時代に近い地図を見比べれば、フィーラ村があった場所がわかる。ここからどれくらい離れているか、移動にどれくらい時間がかかるかも、計算できるはずだ。


 ドロテア=ザミュエルスの言葉が正しければ、ライルとレミリアは『王騎(ロード)』をどこかに隠している。

 機体の名前は『ロード=オブ=ノスフェラトゥ』。

 この名前は、俺に対するメッセージだ。



 だから俺には『ロード=オブ=ノスフェラトゥ』の隠し場所がわかる。

『王騎』の失われた機体があるのは、俺が住んでいたあの古城だ。



 あいつらのことだから、その機体の名前が、転生した俺かアリスの耳に入ることも計算していたはずだ。

 だから、わざわざ目立つ名前をつけたんだろう。

『聖域教会』にとって『忌まわしい名前』を。



 ──『ロード=オブ=ノスフェラトゥ』はフィーラ村の古城に()る。



 それが、ライルとレミリアにとっての常識だからな。


「わかった。護衛騎士ユウキ=グロッサリアの願い、受け入れよう」


 カイン王子は俺を見て、しっかりとうなずいた。


「この程度であれば、国王陛下の裁可をあおぐまでもない。B級魔術師カインとして、ユウキ=グロッサリアに『魔術ギルド』の書庫を開放する。調べ物があるのだろう? アイリスと、オデット姫の手伝いも許可する。以上だ」

「ありがとうございます。殿下」


 俺とアイリス、オデットはカイン王子に頭を下げた。

 それから、デメテル先生とともに、森の出口に向かって歩き出す。


 俺たちの仕事はここまでだ。

 あとはカイン王子たち、上級魔術師に任せよう。




いつもお読みいただき、ありがとうございます。


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