第3波と立ち向かってきた日々を振り返る看護師長の女性=姫路医療センター © Copyright(C) 2021 神戸新聞社 All Rights Reserved. 第3波と立ち向かってきた日々を振り返る看護師長の女性=姫路医療センター

 新型コロナウイルスの感染が広がった昨春以降、150人を超える入院患者を受け入れてきた姫路医療センター(兵庫県姫路市本町)で、コロナ専用病棟を統括する看護師長の女性(48)が神戸新聞社の取材に応じた。同病棟は満床状態が続き、スタッフの疲弊が深刻だという。兵庫、大阪、京都の3府県は今週にも緊急事態宣言の解除要請に向けて協議する方針だが、女性は「病棟は今も第3波のまっただ中。宣言解除で事態が悪化しないか」と懸念を示す。(小林良多)

 -コロナ病棟の現状は。

 1月中旬に10床から12床に増やした後もベッドの空きはほとんどありません。当初は中等症までの患者を受け入れる予定でしたが、重症者に対応できる医療機関が限られるため、結果的に当院でも症状の重い患者が4人に1人を占めました。70代以上の割合が高く、昨年12月は8割、1月は6割に上りました。

 -スタッフの確保など対応は追いついたのか。

 患者の受け入れは昨年4月から。5、6月はゼロ。7月から再び増え、8月に専用病棟を設けました。担当の看護師16人はほかの病棟や外来患者との接触がないよう専任にしています。

 院内でスタッフを募ると応募者は定員を超えました。コロナは一種の災害。当院には災害派遣医療チーム(DMAT)があり、困った人を助けたいと考える人材が多いと思います。差別や偏見の心配がある中、志願してくれた職員を頼もしく感じます。直接関わる職員だけでなく、病院全体の支えがありがたいです。

 -夏以降は亡くなる患者も増えた。

 コロナは急変が怖いです。昨日歩けていた患者が、今日はベッドから起き上がれないことも珍しくありません。動ける間はガラス越しに家族と面会してもらうよう努めています。

 ある男性は亡くなる数日前、ガラス越しに奥さんと手を重ね、最後の会話を交わしました。本当は家族だけで過ごさせてあげたい。でも衰弱が激しく、看護師が男性の耳元に電話を近づけて話してもらいました。

 奥さんがようやく絞り出した一言は「ありがとう」。男性は失っていた表情がよみがえり、幸せそうな笑みを浮かべました。家族の力ですね。私たちは泣きながら見守りました。

 -入院が長期化する傾向にある。

 昨年12月以降、運び込まれる患者の症状は重くなってきました。発症から10日たてば感染力は極めて低くなるとされますが、重症化すると退院の判断は慎重になります。また、高齢者は体力の回復に時間がかかります。転院先を探すのも難しく、ベッドの回転率が下がる要因になっています。中には認知症の患者もいて、介護ケアが看護師の重い負担になっています。

 -コロナ病棟での勤務に不安はないか。

 私たちはプロ。コロナの正体を知れば手は打てます。院内感染防止などに役立つ「感染管理認定看護師」の資格も取っていました。これまでの経験を生かす出番が来たと思いました。まず大切なのはスタッフを守ること。まだ1人も感染者は出ていません。そしてコロナ患者に対する看護の質を高めたい。「コロナだから十分な看護はできない」とは言いたくないんです。

 -地域へのメッセージは。

 緊急事態宣言の生活への影響は大きく、解除の議論は仕方ないです。ただ「もう何をしても大丈夫」という誤ったメッセージになると、すぐに感染の波は来ます。私の願いはこの病棟が一日でも早く役目を終えることです。再流行につながる行動はもうしばらく控えてほしいと感じています。

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