【先生ができること(9)】学校現場に期待すること①

弁護士 太田 啓子
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本連載の第2回で、私が子どもの時に学校で性差別に関して違和感を抱いた経験を幾つか書きました。30年の時を経て、社会全体の変化にも歩調を合わせて、おそらく学校現場のジェンダー平等意識もかなりアップデートされてきたのではないかと思います。

いわゆる「隠れたカリキュラム」に属するのでしょうが、私の息子が通う神奈川県の公立小学校では、性別にかかわらず生徒を「さん」付けで呼ぶのが普通ですし、名簿は男女混合です。教材のイラストを見ても、ジェンダー平等に配慮していることを感じます。

そのような前進を前提にしつつ、今後さらに期待したいことが幾つかあります。

「女らしさ」「男らしさ」の押し付けには注意していても、性的少数者への配慮はどうでしょうか。ある先生(とても良い先生なのですが)が、場を盛り上げる冗談のつもりで、もじもじする様子の男子生徒に対し「あれ?○○君はもしかして『こっち系』の人?」と、手のひらを斜めにして口元に当てるしぐさをしたのを授業参観で目撃し、「ああ、アップデートしてほしい」と思ったことがありました。

また、ジェンダー平等問題に地域差があることは珍しくありません。これは普遍的な課題ですので、「うちの地域はそういう古い所だから」と諦めず、積極的に解消に取り組むよう教育現場に期待したいところです。

例えば男女混合名簿は、今はかなり普及しているようですが、近年でも地域差が結構あったようです。東京都では2004年の時点で「小学校81・6%、中学校42・9%、全日制高校83.9%」が混合名簿を使っていました(東京都生活文化局05年年次報告)。これに対し、直近の統計を公表している岩手県の例を見ると、小学校では18年度が39.0%、19年度が70.2%、20年度が87.4%でした(「令和2年度 男女混合名簿の使用状況について」岩手県教委学校調整課)。

また、宮崎県でも他県と比べると男女混合名簿の使用は遅く、18年9月4日付毎日新聞記事によると、17年度の混合名簿実施校は公立小235校中27校(11.4%)、公立中126校中9校(7.1%)にとどまっていました。その後、保護者が署名運動をして学校に働き掛けたこともあり、18年度は小学校146校(62.1%)、中学校51校(40.4%)に増えたそうです。


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