「大阪都構想」の決定的なダメっぷり…大阪の「元副知事」が実態を証言する

二重行政は「幻想」である
松本 創 プロフィール

先述したWTC買収と府庁移転問題の当時、小西氏はまさにその条例案を事務方として担当していた。「維新と都構想」の原点に、行政側の当事者として立ち会っていたわけだ。だが、大阪市の廃止にだけは、どうしても賛成できなかったと言い、舞台裏をこう明かす。

「副知事として迎えた前回2015年の住民投票では可決を覚悟し、投開票の翌日付で辞表を提出していました。大阪市の廃止・解体には携わりたくなかったので。ところが、結果は僅差で否決。知事だった松井氏に慰留され、その年秋の一期目の任期満了まではという約束で職にとどまったんです」

 

そうして府庁を退いてから、この11月で5年。昨年4月には、大阪市廃止へと突き進む維新政治を止めるために府知事選に出馬したが、市長から鞍替えした吉村氏に敗れた。

今の大阪は、その目にどう映っているか──。

「都構想が始まってからの10年間は、大阪にとって『失われた10年』だったと思います。優秀な職員たちを大勢関わらせ、大阪の成長をこの問題に賭けてしまった。行政機構を変えれば成長するという幻想にです。大阪をもっと足元から強めるような施策に力を入れ、職員を投入するべきだった。それが最大の問題だと思っています」

府庁から大阪の変遷を見つめてきた「地方行政のプロ中のプロ」の声は、市民に届くだろうか。

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