「大阪都構想」の決定的なダメっぷり…大阪の「元副知事」が実態を証言する

二重行政は「幻想」である
松本 創 プロフィール

箱もの建設に関しては、橋下府政改革の過程で「建設事業評価」制度が導入された。事業費1億円以上の建築物や道路について、事業が適正かどうか、学識経験者らの審議会が判断する第三者評価の仕組みである。

「当初は、継続中の建設事業を続けてもよいか再検討することから始まったんですが、今では事前・事後の評価も受けるようになった。この間ずっと行革を進める中で、無駄を生じさせないシステムが、すでにビルトインされているんです。維新は、そういう過去の成果を一切見ずに府民・市民の不安、いや不満を煽り立てている」

臨海部の南港に建つWTCビルをめぐっては2009年、当時の橋下府知事が市から買収し、府庁を現在の大阪城の眼前から全面移転する構想をぶち上げた。橋下氏は「将来は関西州の州都に」と意気込んだが、反発する府議会との攻防の末、「ビルは買い取るが、移転はしない」という玉虫色の決着となった。

府知事時代の橋下氏〔PHOTO〕Gettyimages
 

橋下氏の移転案に賛同し、議会の判断に不満を抱いて自民党会派を飛び出した若手グループの筆頭が松井氏だった。その年の暮れ、橋下氏との会合で「もうこの際、大阪都構想をやろう。ワン大阪や」と松井氏が持ち掛けたのが発端となり、翌年の大阪維新の会結成につながってゆく。

それから10年が経ち、松井市長は「今は二重行政はない。吉村知事と僕が同じ方向を向いているから」と、たびたび語っている。ならば、なぜわざわざ政令指定都市廃止などという巨大なリスクを犯そうとするのか、小西氏はまったく理解できないと言う。

「二重行政解消の効果額は、大阪市が委託した嘉悦大学のレポートでも、10年間でわずか39億~67億円。これに対し、特別区への移行コストは15年間で1300億円とされています(自民党の試算)。ありもしない二重行政の解消を唱え、市を廃止・解体するのは、それこそ壮大な無駄でしょう」

関連記事