東方裏@ふたば
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画像ファイル名:1613812726518.png-(450995 B)
450995 B無題Nameとしあき21/02/20(土)18:18:46No.14023586そうだねx1 18:50頃消えます
文芸スレ
怪文書SS雑談総合スレ
削除された記事が1件あります.見る
1無題Nameとしあき 21/02/20(土)20:21:25No.14023894そうだねx1
メリーが描く「肖像」

先日メリーの部屋を訪問した時だった。
メリーは何やら女性の肖像を緻密に描いてた。

「蓮子…。
以前夢を見た話したよね。
赤いお屋敷、夜の竹林、人里離れた神社…。」
私は声に出さないで背後から頷いた。
2無題Nameとしあき 21/02/20(土)20:21:44No.14023895そうだねx1
「昨日また夢の中に行ってきたみたいなの。」
「今ね。そこで会った女の人を描いてるの。」
「何を話したのか、そもそも話したこと自体もどうかも分からない。」
「何となく寂しそうな顔をした紫色のドレスを着た女性だった。」
「でも。私に似ていたのはハッキリと覚えている。」
「だけど私とは違う。」

メリーは何か夢の中で「出会った」女性の手がかりを掴む為に肖像を描いているのだと話した。

A4の原稿用紙に0.3 mmのシャープペンシルで細々と下書きをし、ペン入れに入ったのは宵の口になってからだった。
漬けペンと墨汁で時間を掛けてペン入れした。
黙々と続く作業により夕飯を食べる機会すら逸した。
3無題Nameとしあき 21/02/20(土)20:22:00No.14023896そうだねx1
私はその間、ただ横で何も語らず眺め続けていた。
本当に幸せな時間。
贅沢な時間の使い方の一つに鉄道旅行で道中休みもせず、本も読まず、仕事もせず。
ただ車窓から流れ行く景色を眺め、体を軽やかな振動に身を任せる贅沢な時間。

そんな「何もしない贅沢」の中でも最高峰の贅沢。
親友が黙々と作品を完成させる様をただ眺めてるだけの時間。
メリーの指が漬けペンを操り、原稿用紙に命を加えていく。
そんな動作を何時間と横で眺める時間。
二人だけの時間を過ごすことの多い私達でもこれは別格だ。
命を吹き込む様を何時間と見ているのだ。
4無題Nameとしあき 21/02/20(土)20:22:23No.14023899そうだねx1
漸くペン入れが終了したのは日付が変わる直前だった。
私は「お疲れさま」と言い、墨汁が乾くまでの間ビールを空けた。

原稿用紙に描き出された女性の肖像は私にとってはメリーそのものであった。
メリーは「私に似た女性」と言っていたが。
表情は寂しそうにも超然適にも泰然的にも受け止められた。


深夜というより早朝に近くなって来た頃、ビール瓶と缶が床に転がり酔いが良いように回っていた。
十分に乾いた原稿用紙に消しゴムを慎重に撫でて下書きの線を消した。

下書きが消えて漬けペンと墨汁のみで線が強調され、ありありと現れた女性の顔は先程よりも妖艶に見えた。
メリーは数分間自分の作品をしげしげと舐め回す様に見た後「蓮子これいる?」と聞いてきた。
一生懸命に描いたのだから、と説得しても
「結局、新しい知見を得る事が出来なかったし、手元にあると夢にまた出てきそうで気味悪いから処分する。」とのことだった。
6無題Nameとしあき 21/02/20(土)20:23:51No.14023906そうだねx1
メリーの家で眠り、二日酔いの頭痛に悩まされながらも飛び跳ねるような嬉しさで帰路についたのはもう太陽が真上を過ぎた頃だった。
例の原稿用紙が折り曲がらないようにバインダーに入れ、帰宅後途中の文房具店で額縁を購入した。

帰宅後原稿用紙を取り出した。
私は、メリーが描いたメリーに似た女性の絵を直接撫でた。傷つかないように緩やかに。
墨汁で描いた線は撫でると凹凸が指先に感じられた。
メリーが1日かけて描いた重みが伝わってくる。
メリーが伝わってくる。
7無題Nameとしあき 21/02/20(土)20:24:06No.14023910そうだねx1
汚損しないように額縁に入れて机の上に飾った。
ええ、メリーが描いたメリーに似た人の絵を。
それを私は何度も何時間も眺めた。
そして時に額縁を手に寄せ、それを抱きしめた。

メリーが描いたメリーに似た女性の肖像。
これを私は朝・夕・そして気の向いた時に額縁越しに抱きしめ、時には額縁のガラス越しに口づけをするのだ。
8無題Nameとしあき 21/02/20(土)20:26:23No.14023919そうだねx3
以上です

この二人は未来世紀に生きて極めてアナログな生活をしてると思い絵を描くのもデジタルでは無い設定にしました。
生理あき

胡乱あき様毎週楽しみに見ております
ご返信出来ず申し訳ございません

そういえば1年2ヶ月位前に幻想少女に無理やり食べさせるSS書いたとしあきさんはまだここに居るのでしょうか?
9無題Nameとしあき 21/02/20(土)23:03:16No.14024497そうだねx1
 空色の瓶からコップにサイダーを注ぐ。
 炭酸がシュワシュワとはじけて爽やかな匂いが鼻を通り抜けた。
「それが『コズミックサイダー』?」
「そうそう。やっと買えたんだよ」
 春の暖かさに微睡ながらサイダーを呷る。
「『宇宙の真理がわかります』だなんて胡散臭いわね……」
「大丈夫だよ。大丈夫」
 メリーは瓶のラベルを見ながら呆れたような顔でこちらを見た。
「どう? 真理とやらはわかった?」
「うーん。なんとも」
 このサイダーはオカルトマニア達の間で流行っている逸品だ。ただの「地サイダー」なのだが、宣伝文句の「宇宙の真理がわかります」にオカルトマニア達が目をつけた。
 メリーは瓶を揺らして半分くらい残ったサイダーをチャポチャポといわせている。
「私も飲んでみようかしら。ただの地サイダーなんでしょ?」
「そう。真理を分かった気分にはなれるよ」
10無題Nameとしあき 21/02/20(土)23:04:32No.14024500そうだねx1
 シュワシュワと心地よい音をたてて、メリーのマグカップにサイダーが注がれた。
「うん。美味しいわね」
「でしょ?」
 空になった瓶を眺めているとラベルに小さく注意書きがあった。

 このサイダーは一人用です。

 サイダーに一人用も二人用もないだろう。宣伝文句の「宇宙の真理がわかります」を補強するためのものなんだろうか。
「メリー、このサイダーは一人用なんだってさ」
「一人用? 一本全部飲んでやっと宇宙の真理がわかるってことかしら?」
 急に風が窓から入ってきた。
 暖かさとともに春の匂いが部屋に満ちていく。
「もう、春だね」
「そうね。蓮子は進級できそう?」
「出来るよ。メリーはどうなの?」
11無題Nameとしあき 21/02/20(土)23:05:01No.14024502そうだねx1
「単位なんてとっくのとうに足りてるわ」
「そっか、それならよかった。来年度も安心して活動できる」
「ねえ、これから散歩にでも行きましょう。今日は暖かいみたいだし」
「うん。行こう」
 サイダーの瓶を水道で洗って水気を拭き、オカルトコレクションの棚に置いた。
「よし、出掛けようか。どこにいく?」
「うーん。適当に歩きましょう。その方が面白い物が見つかりそうだもの」

 あのサイダーを一本全部飲んでいたら。
 もしも本当にそういう効能があったとしたら。
 そんな事を考えながら歩いているけれど。
 今ここにあるような。目の前の風景。聞こえて来る音。
 そして隣にいるメリー。
 きっとそういうものこそが宇宙の真理で。
 簡単に手放してはいけないものなんだろう。
12無題Nameとしあき 21/02/20(土)23:07:33No.14024505そうだねx1
胡乱あきでした

>この二人は未来世紀に生きて極めてアナログな生活をしてると思い絵を描くのもデジタルでは無い設定にしました。
面白かったです

>胡乱あき様毎週楽しみに見ております
ありがとね
>ご返信出来ず申し訳ございません
いえいえお気になさらず
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