新型コロナウイルスの影響で、生活が苦しくなった世帯が最大20万円を無利子で借りられる「緊急小口資金」の申し込みが佐賀県内でも急増し、1月までの約10カ月間で3500件を超えている。事務を取りまとめている県社会福祉協議会(社協)によると、申請者は多業種にわたり、2件だけだった19年度と比べると大幅に増加、厳しい生活を強いられている人が増えているとみている。
緊急小口資金は連帯保証人が不要で、市町の社協に申請し、1週間から10日程度で受け取れる。県社協によると、新型コロナの影響で減収した人にも特例措置で対象を広げた20年3月25日~21年1月末までの申請件数は3578件、融資決定総額は18億3759万円に上る。低所得者向けの貸し付け制度の申請は例年、緊急小口資金を含め県全体で十数件~数十件程度といい、昨年3月以降の状況は著しい増加になっている。
市町別で申請件数が最多だったのは佐賀市の1110件で、次いで唐津市が490件、鳥栖市が445件。月別では全国に緊急事態宣言が出された20年5月が916件で最も多かった。7月以降も数百~100件程度で推移している。
県社協まちづくり課の枝吉浩誉(ひろたか)副課長は「飲食店や宿泊施設の経営者、従業員に加え、食材の納入業者や運転代行、タクシーなど関連の仕事に携わる人の申請が多い」と話す。住宅の新築・改修工事の受注が減少した建築業者や、各種行事の中止や延期で注文が減ったクリーニング店からの申請も目立ち「経営体力が弱い個人事業主を中心に影響は多業種に及んでいる」とみる。
これとは別に、生活困窮者の自立に向けて資金を貸し付ける「生活支援費」の申請件数は1759件で、総額で12億3137万円に上る。緊急小口資金と同様、コロナ対応の特例で貸し付け対象を拡大したため単純比較はできないが「過去に例を見ない申請状況。失業した状態で貸し付けを利用しているケースも多い」(枝吉副課長)という。
2人以上の世帯なら月最大20万円を原則3カ月、無利子で借りられる制度で、3カ月を超える延長申請も589件に上った。厚生労働省は影響の長期化を踏まえ、貸付期間を最大9カ月に延長し、上限額を180万円に引き上げる方針を決めている。(谷口大輔)