骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

今回はタイトル通りです。
作者基準では相当な残酷描写が出て来ます。
飛ばして貰っても構いません。

以上をご了承いただける方は。

どうぞ、ごゆっくり。


その10 残酷な風景。※閲覧注意※

「父上、、、」

只ならぬ空気に降りて来たパンドラズ・アクターはこれまで一度たりとも見た事がない怒れる父に驚く。こんな姿は見た事がない。

「サトル殿、、、」

ガゼフは気合を入れて居ないと失神しかねない程の"圧"を感じていた。戦場でもこれ程の殺気は無かった。

 

「今から私は八本指を殲滅する。これは決定事項だ。何者にも邪魔はさせん。だが、これは俺自身の怒り。共に来いとは言わん。特にガゼフは今だ王室との繋がりもある立場だからな。」

 

「あのぉ〜、ガゼフさんのお宅はこちらですかぁ〜?」

 

ーーーー

 

悪魔に張り付かれているクレマンティーヌは逃亡もままならず遅れて王都にやって来た。見えない鎖で繋がれている様なものだ。

「あのぉ〜非常に気不味い空気なんですけどぉ。何かあったッスか?」

ガゼフから説明を受けたクレマンティーヌは何故か眼をギラつかせた。

「じゃあ、アタシ行きますよ。殺りまくってイイんですよね?」

保護と言う名の拉致以来、彼女のフラストレーションは頂点だった。

 

「クレマンティーヌ、暴れたいのか?今回に限って構わないが俺と一緒なら覚悟はしておけよ?お前は生きて地獄を見る事になる。」

 

「ヒッ」

(この人、アタシが言ってる地獄とは多分レベル違う)

 

「待って欲しい。私もお供しよう。」

ガゼフは言い切った。その目には覚悟が見えた。

「是非も無い、父上。私も。」

 

「では決まったな。・・・出陣だ。」

 

ーーーーー

 

娘はガゼフ邸の老夫婦に任せ、4人は娼館の前に来て居た。

 

強固な鉄の扉を鈴木が蹴り上げる。

凄まじい破壊音と共に扉は粉々に飛び散った。

「な、な、なんだ!お前ら!」

 

「毎度同じ台詞だな。俺たちはここをぶっ潰しに来た。」

「ここを何処だと思ってやがる!死にたくなかったらとっと帰ぇーんな!」

「それも聞き飽きた台詞だな。教えてやろう、ここは今から地獄になるんだよ。」

「やっちまえっ!」

「氷刃乱舞!」指先から放たれた氷の刃が男たちに襲い掛かる!

ある者は四肢を切断され、ある者は首と胴が離れた。

(ゲッ!エゲツなー!一瞬で血の海?)

クレマンティーヌは血飛沫を撒き散らかして倒れる男たちを見て改めてこれから起こる惨劇を予見した。

「ま、マジックキャスター!」

「間違っているが今はどうでもいい。後は任せたぞ、息子よ。」

鈴木は振り返らず奥に進む。

そこには目付きの鋭い痩せこけた蒼白い顔の男が1人立って居た。

「表が騒がしいと思ったらお客さんかい。」

「上客だぞ?たっぷり持てなしてくれよ?」

「言うじゃないか。だが、このサキュロント様の技を見ても同じ事が言えるかな?」

言い終わらない内にサキュロントの身体が分列した。

「なんだこの店は手品を見せるのか?ツマラン。集団標的麻痺。」

「うおっ!か、身体が痺れ、、、!」

「お前如きが何体に分かれ様と問題はない。どうせ幻術か何かだろう?さて、手品の褒美にお前には特別に仕事をやろう。ここから逃げて仲間を呼んで来い。なるべく大勢だ。あと、土産も付けてやる。時間差発動内部爆裂。さあ、行け!」

「畜生!後で吠え面かかせてやる!覚えてやがれっ!」

鈴木は床に隠し階段を見つけゆっくり降りて行く。

階下はいくつかの部屋に分かれており、あちこちから女の悲鳴がする。

鈴木は顔を顰めその中の一つの戸を開けた。

中ではデップリと太った男が女に馬乗りになってその顔面を殴っていた。女の腕はダラリと垂れ下がり意識はない様だった。

鈴木は後ろから近づき男の頭を鷲掴みにしそのダラシない身体を高く持ち上げた。

「ひぁあああー!」何が起こったか分からない男は妙な悲鳴をあげる。

「随分とお楽しみだったじゃないか?それだけ楽しんだんなら、もうこの世に未練は無いよな?」

そう言うと男の耳から指を差し込んだ。

「酸の矢。」

「うぎゃああああああああああ!」

「心配するな酸は加減してあるから脳をゆっくり溶かしてやる。」

「たるへぇつぇふだぁい」

溶けかかった脳が言語障害を起こす。

「その腹だ。さぞ美味い物ばかり食ってきたんだろうなぁ。」

そう言うと手刀で頭頂部を切り飛ばし溶けた脳を手で掬って口にねじ込んだ。

「どうだ?滅多にお目にかからない珍味だろ?」

鈴木は男を放り投げて次の部屋へ向かう。

己の腸で首を吊られる者、四肢を切り取られ達磨にされる者、部屋からは絶叫が響いた。

 

「父上、上は片付きました。」

「う!」「げ!」

降りて来た3人は3様の声を発した。

 

「1人泳がした。直ぐに応援が来るだろう。それまでにこの女たちを避難させてやってくれ。殆どが意識は無いのだが、中には薬物で朦朧としている者も居る。今夜の出来事はこれまでの生活同様に悪夢の続きだと思うだろうさ。ガゼフの家に転移門を開く。クレマンティーヌ、ガゼフを手伝って女たちを運べ。アクターは上で俺と連中を迎え撃つ。ここへはネズミ1匹降ろさん。」

 

ーーーーー

 

王都某所、八本指本部。

麻薬部門長ヒルマ・シュグネイスは蒼の薔薇による麻薬畑襲撃で苛立っていた。王国第三王女ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフの奴隷売買禁止令で斜陽になったアンペティフ・コッコドール率いる奴隷部門の二の舞になるからだ。

 

「ゼロ、貴方がしっかりしてないから私の大切な畑が燃やされちゃうのよ!」

「おいおい、俺たち六腕はお前さんの専属じゃないんだぜ?

他にも色々とあるんだよ。八つ当たりは迷惑だ!」

「そーよねぇー。仲間割れしてる場合じゃないわ。アタシんトコもそーだけど、あのブス王女と薔薇の連中をなんとかしないとアタシたち潰されちゃうわよ!」

 

「た、大変です!サキュロントさんが!」

見張り番が飛び込んできた。

 

「サキュロント?今夜はコッコドールんトコの警備だったハズだが?」ゼロは首を傾げた。

 

「通しなさい。」ヒルマが指示を与える。

 

ただでさえ悪い顔色を一層悪くしたサキュロントが入ってくる。

 

「どうした?!そんなに汗までかいてよ!ナンかあったのか?」

 

「襲われた。アッと言う間に皆殺しにされちまった。アイツはバケモンだ。直ぐズラかろうぜ!」

 

「始めからちゃんと話せ!さっぱり分からんぞ!」

 

サキュロントは顛末を伝えた。

そして全てを喋り終わったその時。

 

「ボンッ!」

 

サキュロントの頭は破裂した。

まるで水風船が破裂した様に。

 

「な、な、な、な、な、なんなのよ!?」

コッコドールは全身にかかったサキュロントの血や脳味噌を拭いもせず叫んだ。

 

「おい!残りの六腕に召集かけろ!コッコドールの店へ急行しろってな!」ゼロは部下にそう言い残し飛び出して行った。

 

「今のは魔法?いや、違うわね、、、まるで話終わるタイミングを計った様に爆発したわ。そんな魔法聞いたことない。」

「ちょっとぉヒルマ〜、アタシの店が襲われたのよ〜?何とかしてよ〜」

「五月蝿いわねー男のクセに。ゼロも行ったんだから相手がバケモンだろうがナンだろうが始末してくれるよ。」

(これは何かヤバい事が起きてる。このバカは適当に誤魔化して暫く身を隠した方が良さそうね。)

ヒルマは側近に目で合図して以前から用意していた逃亡計画のゴーサインを出した。

 

ーーーーー

 

ゼロは走りながら考えていた。

サキュロントの死に様は魔法に因るものなのか、それとも未知の拳法なのか。自分も武技は使うが時間差をつけて発動する武技など聞いた事もない。

動物的な勘なのか、ゼロは冷や汗が止まらなかった。

(最強を自負する俺が未だ見ぬ敵に臆するだと?ありえん。だがこの汗はどう説明する?俺の中の本能が危険を教えている。それも超級だ。油断は出来ん!)

 

ーーーーー

 

「アタシが1番乗りね」

褐色の肌を薄衣で隠した細身の女が呟く。

腰部のベルトに6本の三日月の形をした刀が吊り上げられている。

「ほう1番乗りは女か」

周囲の血の匂いで目の前の男が敵である事を察知した女は

薄笑いを浮かべながら言った。

「お兄さん、サキュロントって男を知らない?顔色の悪い痩せた男なんだけどさ」

「ああ、あの手品師か。知っているとも。だがお前がここに来たと言う事はヤツはもうこの世には居ないぞ?」

「そうかい、そうかい。じゃあお前も後を追いな!このエンストレームの死の舞からは逃れられないよ!」

「手品の後は曲芸か?その腰の刀でも投げるのか?」

「はっ!減らず口はこの、、、」

「時間停止。神経操作。視神経麻痺。停止解除。」

「踊る三日月刀を避けてからにしなっ!」

女はしなやかに踊る様に刀を投げた。

次の瞬間。

「え?」

全身に刀が突き立ったエンストレームは目を見開きその場に倒れた。

「少し視神経を触った。感覚がおかしくなっている事に気付かなかったか?この様な飛び道具使いは感覚が命だからその感覚を少しでも弄るとな。この通りさ。」

そう言うと足下に転がるエンストレームを蹴飛ばした。

 

ーーーーー

 

「お主も少しは魔法を使うようだの。」

黒のローブを深く被った男は不愉快そうに言った。

「チッ、死者の大魔法使いか。天然物とはレアだが、どうやらあと2人お客が居るようだ。息子よ、コイツを"丁重に"もてなしてやれ。そしてお前たちは私が直々にもてなしてやる。」

鈴木は死者の大魔法使いの後ろの影に向かって言った。

「ほう、我らの気配を感じたか。」

暗闇からゆらりと人影が2つの現れた。

「我が名はペシュリアン。空間斬なぞと呼ばれている。」

無骨な鎧に身を包んだ男はそう名乗った。

「俺はマルムヴィストって言うんだ、ヨロシクな」

派手な刺繍が付いた上着を着た優男は砕けた口調で言った。

「これはこれはご丁寧に。私は配達人。お前たちに"死"を届けに来た。」

「「ふざけやがって!行くぞ!」」

「だから、時間対策だって。時間停止。肉体拘束。浮遊。魅了。停止解除。」

2人の身体はふわりと浮かび上がった。

「「な、なにを?!」」

「お前たちはもう勝手に動く事は出来ん。そして私の言う通りの行動をする。」

「なにをバカな事を!そんな事出来るわ・・・」

「黙れ。ほら、喋れなくなったろ?」

「ムギギ、、ギギ、、」

「さて始めよう。先ずはお互いの足首を切り落とせ。」

自慢の武器が互いの足首を切り落とした。

「・・・!」

「どうだ?無抵抗に切られた気持ちは?痛いか?

次だ。膝から下を切り落とせ。」

2人は悲鳴も上げる事が出来ず激痛に耐える。

「下から順番に切り落として行く。どちらが先に楽になるかな?なぁ?どっちだと思う?」

鈴木はさも愉快そうに笑いながら命令を続けた。

そしてヘソまで来た時、2人同時に事切れた。

「なんだ、心臓まで持たないんだな」

そう呟いて内臓を垂らして浮かんでいる男たちを詰まらなさそうに眺めていた。

 

ーーーーー

 

「我は六腕の1人・不死王デイバー・ノック。抵抗するな今楽に死なせてやる。」

不死王と聞いた途端にパンドラズ・アクターは不快感を露わにした。

「不死王とはまた過ぎた二つ名ですね。この世でその名を名乗れるのはたったお一人。楽しませて貰おうと思っていましたが気が変わりました。貴方には直ぐに死んで頂きます。」

パンドラズ・アクターは今直ぐにこの不快な物体を消し去るべく蹂躙を開始した。

 

ーーーーー

 

「遅かったか!」

ゼロが着いた時には既に仲間の息は無く、亡骸も原型を留めていなかった。

「どうやらお前が最後の客か。お友だちは先に旅立ったぞ?

まぁいい。直ぐに追いつけるさ。」

いつもならこんな挑発は軽く受けてやるのだが、今のゼロにはそれは出来なかった。

何故か喉は渇き切り言葉が出てこない。頭は今直ぐ反転して全力で逃げろと言っている。だが、体が動かない。

「ほう見事なタトゥーじゃないか。その肉体がご自慢か?ならばその体を溶かしてやろう。肉体硬直。酸の霧。」

ゼロは足を揃え両腕を水平に横に上げた。

鈴木の指から黒い霧が出てゼロの首から下を覆う。

「今からお前の体を溶かしていく。痛みと恐怖を感じる様に頭は残してやったから安心しろ。」

霧はゼロの皮膚から徐々に溶かし始めた。

「うぎゃあああああああああああ」

「これくらいでそんな声を上げるとは見掛け倒しな男だな。

あまりガッカリさせないでくれよ?」

無駄な贅肉が無い体は筋肉が露わになり、やがてその筋肉も溶け神経が剥き出しになる。

「ヨシ。ここで一旦ストップだ。これから全身の神経を直につついて遊んでやる。発狂するなよ?つまらなくなるからな。」

ゼロは白眼を剥いているが内臓や脳が無事なので

鈴木の狙い通り痛みも恐怖も感じていた。

(何故だ!?何故ここまでする!?これはもう殺しが目的じゃない!早くこの地獄を終わらせてくれ!」

ゼロは己の強靭な肉体と鍛え上げた精神を呪った。

もっと人並みであればとうの昔に死ねたし、もっと弱い精神ならとっくに崩壊出来ていた。

 

ゼロは今夜という"時"を呪った。

 

ーーーーー

 

「これはマズいですね。」

デイバーノックを難無く仕留めたパンドラズ・アクターは、ゼロを責める鈴木を見て思わず呟いた。

(なんとなくそんな気がしては居たのですが、父上は堕ちてしまっている。なんとか引き戻さなければ。)

パンドラズ・アクターはその明晰な頭脳をフル回転させ作戦を実行する。

 

「モモンガ様!御方の忠実なる僕このパンドラズ・アクター、ご命令を完遂いたしました!

Wenn es meines Gottes Wille(我が神の望みとあらば)」

 

とたんに鈴木の体が緑に数度輝いた。

 

「あれ?今なんか古傷をジクジクイジられたような痛みが。確か、、、めっちゃ怒って、、、それで殴り込みに行って、、、あー、後は覚えてない。」

 

(成功ですね。)

「父上。お疲れ様でした。全て完了です。騒ぎが大きくなる前にガゼフの所へ戻りましょう。転移門を開いて下さい。」

パンドラズ・アクターはやや早口で鈴木を急かした。

 

「お?ああ、そうだな。大騒ぎになる前に退散しよう。転移門。」

トリップ状態から戻って直後にパンドラズ・アクターに急かされた鈴木は周りを見る余裕は無かった。

 

血塗れの肉片は月夜に照らされキラキラとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

最初で最後の残酷回です。
もう、ありません。

じゃあ、要らなかったんでは?

いえいえ、こんなのも含めてオーバーロードが好きなのです。
だから書き始めたのです。

諄くなると自己嫌悪になっちゃうんで言い訳はここまで。

それでも
また、よろしくお願いします。
ありがとうございました。

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