二次作品でも大活躍の蒼の薔薇。私も大好きです。
特にポンコツっぽく描かれる事の多いリーダーさん。
弄り甲斐がありますよね。
私自身、彼女たちがどんな風に演じてくれるのか
とても楽しみなのです。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
息子に玩具、娘に土産を買った父親は上機嫌だった。
「おーい、帰ったぞー」
宿に戻るとエンリとンフィーレアが肌を合わせていた。
「な、な、な、な、ナニしとんじゃああああああ!」
「きゃあーーー!サトル様?!」
「こ、こ、こ、コレはですね、そのですね、あのですね、つまりですね」
ーーーーー
「成ってしまったものは仕方ない。ウチの娘に手を出したんだンフィーレア君、キチンと責任を取るんだろうね?」
「もちろんです、お義父さん。エンリさんをきっと幸せにします。」
「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはないっ!てか、このホームドラマ的流れどっから?」
「サトル様が最初にウチの娘って言ったんですよ?だから、僕もつい」
「ま、まあ2人の仲を知らなかった訳でもないし突然だったので驚いただけで怒ってるんじゃないぞ。しかし、ネムの事もある。どうするつもりだ?」
「その事でしたら私から良いですか?サトル様」
「うむ、聞こう」
前からカルネ村に住みたかったンフィーレアはひとり立ちを勧める祖母の意見も考慮し、2人で移住を決めた。
始めは掘立て小屋で薬の製造をして暮らすつもりだそうだ。
エ・ランテルに売りに来て必要な物は買って帰る。
ネムは婆さんに預ける、婆さんもネムが居れば寂しくは無いだろう。
「そうか、そこまで決めているなら頑張れ。もう何も言わん。ところでクレマンティーヌは何処行った?」
ーーーーー
「と言う訳でエンリはンフィーレア君と夫婦になったんですよ」
王都に向かう馬車に揺られながら鈴木はガゼフに顛末を話していた。
「そうですか、いや若いってのは素晴らしいですな!」
因みに行方不明のクレマンティーヌは気を利かせて部屋を出て階下のバーで呑んでいたと影の悪魔から報告があった。
「しかし戦士長、皆で見送りの時に万歳は流石に照れましたよ?」
「その戦士長はもう止めて下さい。私は王都に帰ったら陛下にお暇を願い出るつもりなのです。」
(ちょ!マジ?なんでよ?王国へのコネクションどーなるんだよ!)思わぬ状況変化に戸惑う鈴木。
「原因は貴方ですよ。汗臭い漢になれ、困っている人が居たら助けるのは当たり前。行く道が見えました。」
(そんなのノリでしょ?大体、仕事辞めてどーすんのよ?まさか!俺が原因だから責任取って雇えとか?あー、小金持ってんの知ってるからなー)
「万歳は仕方ないですよ。他の冒険者たちは特別手当に大喜びでしてね、皆新しい装備が買えるって。リイジー・バレアレも店は新築出来るし孫には可愛い嫁が来るわネムはおばあちゃん、おばあちゃんて甘えるわでサトル様、様だって言ってましたよ。」
(まー、餞別だって婆ちゃんには蛇口あげたんだよな。ンフィーレア居なくてなるから年寄りとちびっ子に水汲み大変だなっと思ってさ。蛇口は本当はエンリの土産だったから代わりに"ゴブリン将軍の角笛"2つやったんだよね、沢山あったし。まー簡単な労働力にはなるだろ、多分)
(それにしても、ガゼフってこんなお喋りキャラだった?)
「どうかされましたか?」
「ガゼフ殿は少し変わったな、と」
「そうです。私は変わったのです。全て貴方のお陰だ。貴方と出逢わなければ私はまだ迷いながら生きていただろう。」
「人には誰でも語り尽くせない心の奥があるものです。」
「、、、サトル殿、、、」
空は晴れ渡り心地良い風が頬を撫でていた。
ーーーーー
リ・エスティーゼ王国首都リ・エスティーゼ。
「なかなか賑やかじゃないか!早速街に繰り出そう!」
「父上!また珍しいマジックアイテムが有れば良いですね!」
「そうだな。この前の店にはスクロールが無かったよな。聞けば上質は羊皮紙が必要なのでスクロールは王都に集中してるらしい。あ、あのガタイのイイ人に聞いてみよう。」
「すいません。この辺に魔法スクロールを扱っている店はないですか?」
「ん?(あ!コイツら童貞だ)魔法スクロールの店?ああ、それなら3本目の・・・」
(強面だったけど親切な人だったな)
丁寧で分かりやすい道案内で鈴木たちはお目当ての店にたどり着いた。
(うわぁ。店内も店員も雰囲気あるなぁ。ハリポタ君とか居るんじゃないの?)
分厚いスクロールリスト帳の置いてある長いカウンターの後ろは天井まで届くスクロール棚、店員は皆ローブを纏い小さめな声で客と話している。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
眼鏡の良く似合う細身の女性店員が話し掛けてきた。
「スクロールを少し見せて貰えないか?」
「はい、こちらがスクロールのリストでございます。」
(ふむふむ、なになに、、、ほう、これは、、、まさか!、、、いやいや、、、なるほど、なるほど)
(字が読めん!)
「少し失礼する。」
鈴木はカウンターに背を向けパンドラズを手招きする。
「お前、こっちの字は読めるか?」
「そういえば、読んだり書いたりしてないですね。」
「そうなんだよ!オッサンに貰った身分証もそうだって言ってたから見ずに無限袋にしまっちゃったしな。リストの字、全然わからんぞ。」
「なにかアイテムはお持ちじゃないですか?そう、翻訳機の様な。」
「ねーよ、そんな都合の良いの、、、あ!あった!あった!確か何でも翻訳してくれる眼鏡みたいなの。」
「おお!その様なマジックアイテムが?じゃあそれ出してください。」
「ちょっと待ってくれ、、確かこの辺りにしまって、、、」
鈴木は腹あたりに無限袋を下げて中をゴソゴソと探し始めた。
「あった!あった!なんでも翻訳眼鏡ぇ〜!」
鈴木は猫型ロボットの様な声で眼鏡を取り出した。
「父上、その口調は?」
「ああ、気にするな"お約束"と言うやつだ。」
(ナニ?この人。今、手が消えたよね?)
店員は目を丸くして様子を見ていた。
眼鏡をかけるとリストの文字が日本語に翻訳される。
(ほう、初めて使ったが便利だな。なになに?空飛ぶ板?なんじゃ、それ?清浄の魔法?神官系か?治癒の魔法はわかる。水上歩行魔法?フライで良くない?)
「この空飛ぶ板とは?」
「はい、主に重い物を運ぶ時に使います。板が浮くのでその上に乗せて運ぶのです。鉱物発掘現場などで重宝がられます。あと数人であれば人も乗る事が出来ます。」
(魔法の絨毯みたいなもんかな?面白そうだな)
「よし。ではコレとコレと、あ、コレもくれ。」
鈴木は興味があるスクロールリストをいくつか指差した。
「あ、ありがとうございます!直ぐお包みしますね!」
店員は思わぬ上客にニコニコしながら答えた。
「父上、大人買いですね。」
「こーゆーアイテムは取り敢えず買っとく主義なんだよ。」
「ですよね。」
父子はご満悦で店を出て待ち合わせ場所のガゼフの家に向かった。
ーーーーー
「あれぇ〜?おっかしぃなぁ〜、この地図合ってるよな?」
「う〜ん、あの道を右に曲がって、、、次を左、、、間違ってないと思いますよ〜」
「だよな?でもなんか怪しい通りに出たぞ?」
「とても住宅街には見えませんね。迷ってしまいましたかね?」
そこは赤や黄色の街灯が灯った通りで両脇の建物には窓に格子が嵌り中からは妖しげな女が通る男に声をかけていた。
「ちょいと、遊んで行かない?お兄いさんたちぃ〜」
「サービスするわよぉ〜」
(これって?ひょっとして歓楽街?如何わしいお店?)
勿論、未体験の鈴木はその様な場所には行った事が無かったが話は先輩から聞いていた。
「息子よ!ココは駄目だ!早く行こう!」
教育上良くないと即断した鈴木はパンドラズ・アクターの手を引いて足速に通りから路地へ入った。
(なんだよエ・ランテルにはこんな所無かったのに、、、)
広い通りに出ようと路地を抜けようとすると、一軒の建物の裏口が開き中から男が重そうな袋を担いで出てきた。
「コイツはもう使い物にならねぇーな」
男は呟き、袋を無造作に道に投げ捨てた。
(何処にでも居るんだよ、公共マナーを守らない人って。ちゃんとゴミは分別して指定日に指定場所に出さないと。)
鈴木は道路にゴミを捨てる男に眉をひそめ、関わり合いになるのは御免とその脇を通り過ぎようとした。
その時、袋から"何か"が鈴木の足に絡まった。
(うわ!きったねーな!袋の口ぐらい縛れよな)
鈴木は見ようともせずに通り過ぎようとしたが。
「父上、手ですよ?」
「え!?」
鈴木はパンドラズ・アクターの声に驚き足元を見た。
「ヒェー!」
鈴木は情けない声をあげた。
(俺、今でこそ骸骨マンだけどオカルトは苦手なんだよ!これ貞子とか言う名前の人じゃないよね!?)
「なんだぁ?テメーら。怪我する前にサッサと消えな!」
不法投棄男が凄む。
「父上、どうします?」
「え?なに?お前なんで落ち着いてんのよ?ああ、コイツな。アンタ、何捨てたんだ?こんな所にモノ捨てちゃ駄目だろ!」
「何寝言言ってやがる!失せろつってんだよ!」
「あーもー面倒な人だなぁー。心臓掌握。ハイ、サヨナラ」
捨てた男は捨てれる可燃ゴミになった。
「父上、兎に角ここを離れましょう。人目については面倒が増えます。」
ーーーーー
「おい、お前ら何を担いでいる?」
(あーもー、面倒事強化月間?なんなの今度は?)
鈴木はゲッソリして振り返るとそこに子供が居た。
(仮面にマント?魔法少女?)
「あー、お嬢ちゃん、魔法少女ごっこかなぁ〜?もう遅いからおウチへお帰り。それとも迷子なのかなぁ〜?」
(こんな如何わしい場所に、、、。親はナニやってんだ?)
「貴様っ!誤魔化すなっ!私の目は節穴では無いぞっ!」
「おとうさん、おかあさんはどしたのかなぁ〜。おじさん達ちょーっと今は忙しいからまた今度ねぇ〜」
「逃げるつもりだなっ!そうはさせんぞ。貴様らと奴らの仲間なんだろっ!」
(やっぱ強化月間じゃん!なんだこの子は!)
「居たぞっ!おーい、イビルアイー!」
向こうから数名の人影が駆けてくる。
(助かった。家族が探してたのか。良かった。)
「よかったねぇ〜、おじょうちゃん。イビルアイって名前なのかなぁ〜、変わった名前だねぇ〜。ほら、おとうさんとおかあさんとおねえちゃんたちも来てくれたよぉ〜」
「いくぞ!疾風走破改っ!光速逃亡脚っ!」
鈴木たちはクレマンティーヌから聞いた武技を魔改造したものを使い文字通り光速で逃げて行った。
「あっ!待てっ!」
魔法少女は叫んだが、最早その姿は視界から消えていた。
「イビルアイ大丈夫!?」
「ああ、ラキュース。問題ない。」
「あいつら、、、」
「どうした?ガガーラン」
「いや暗くてよく見えなかったんだが、昼間に道を訊いてきた2人に背格好がよく似ていたんだ。」
「八本指の新手かしら?」
「わからん。しかしあの気配は只者ではなかった。」
「あの逃げ足、あれも超人的。」
「逃げられたのは癪だけど仕方ないわ。一度帰って相談しましょう。」
ーーーーー
「面倒臭い子供だったなぁ〜。あれは親の教育がなってない証拠だぞ!」
「しかし父上。あの者は恐らくはガゼフやクレマンティーヌより上と見ました。」
「本当か!まだ年端もゆかぬ子供だったぞ?」
「ナザリックにもシズやエントマの様な外見も者も居りました故、油断は禁物です。」
「そうか?いや、そうだな。すまん、私もこちらとのレベル差で少し気が緩んでいた様だ。今後は気をつけよう。」
「ところで、その者は如何しますので?」
「ああ、成り行きで担いで来てしまった。今度こそガゼフの家には着けるはずだから、そこで考える。」
鈴木たちは道ゆく人に尋ねながら漸くガゼフ邸に到着した。
「おお!サトル殿!帰りが遅いので心配しておりましたぞ!」
玄関を開けるなりガゼフは安堵の表情を浮かべ椅子から立ち上がった。
「すまぬ。実はこんな事があってな・・・」
ーーーーー
ガゼフは顔を歪め話を聞いていたが、口を開いた。
「折角お越し頂いた途端に王国の、いや、王都の恥部を晒してしまいましたな。誠に申し訳ない。」
「なにやら訳有り。しかし今はこの袋の娘が先決。」
袋の中には無惨にも痛めつけられた娘が入れられていたが
今は空き部屋のベッドに寝かされていた。
「幸い、治癒のスクロールを持っています。それを使いましょう。」
(既に虫の息だ。中央神殿の神官長でも恐らくは難しい状態。スクロール程度で治せるのか?)
ガゼフは無言で頷き見守った。
鈴木はスクロールを一巻取り出して「大治療」と唱えた。
すると見る見る傷は癒え顔色も良くなってきた。
(そんな、、折られていた歯や剥がされていた爪までも!)
ガゼフは目の前で起こった奇跡に驚愕した。
「さて、これで一先ずは大丈夫。後はぐっすり寝ればもっと良くなるはずです。アクター、娘の様子を見ていてくれ。私は少しガゼフと話をする。」
「畏まりました。」
鈴木たちが迷い込んだのは娼館通りで、男が出て来た店は犯罪組織が運営する店。そこには様々な理由で連れてこられた女が居て高額な料金の対価として普通の娼館では断れる様な猟奇的な行為をされる。組織は貴族とも繋がりがあり巧みに取締りを逃れている。噂では上客のリストに貴族の名前もあるらしい。
「なるほど。甘い蜜を吸い過ぎて肥え太ったブタ共が大手を振って王宮を闊歩していると。」
父の顔も知らない鈴木は女手一つで育てられたのだが、その母親も重労働が祟り過労でまだ幼い時に逝ってしまった。
以来、か弱い女性が酷い目に遭っていると普段の温厚な性格は一変して非常に攻撃的になるのだ。
鈴木の腹は決まった。
「狼は生きろ、ブタは死ね」
お疲れ様でした。
ツアレさんが出てきました。
原作でも意外と積極的な方法でセバスさんを堕としましたよね。
可愛い顔してあのコ割とやるもんだねと、そんな印象です。
勿論、まだ彼女には活躍してもらうつもりです。
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。