先月末、「第21回参議院通常選挙」が行われました。結果は、皆様御存知の通り、「与党・自民党が惨敗、野党・民主党が大躍進」となりました。選挙結果を受けての各政党の新たな議席配分については、既にニュースでも大きく報じられておりますが、一応以下に「国会新勢力図」を貼付しておきます。
神道政治連盟(神政連)の重点推薦候補として神社界が一丸となって推していた自民党・前職の有村治子さんは、比例代表最後となる14番目の順位でギリギリ滑り込みで当選を果たしたものの、結果的には民主党が大幅に議席を増やす事となったため、神社関係者の多くは、有村さんが当選したとはいえ今回の参院選の結果に対しては素直に喜ぶ事ができず複雑な気持ちを抱いている方が多いのではと思います(私の知る限り、民主党を支持している神職というのは皆無ですから)。
有村さんは、神政連の国会議員懇談会副会長を務め、今年は、5月の神社本庁評議員会や、6月の神政連の中央委員会にも出席するなどして広く神職に支援を呼びかけ、実際、全国の神職や神社関係団体から積極的な支援を受けてはおりましたが、しかし有村さんにとって今回の参院選は、年金問題や閣僚の失言など自民党への逆風が吹く厳しい情勢の中での選挙戦となったため、かなり苦戦を強いられる事になりました。それでも、その厳しい選挙戦の中、最終的には20万票余りを獲得して2期目の当選を果たした訳ですから、それはやはり凄い事だと思います。
ところで、神社関係者の中には、自民党以上に保守的な「維新政党・新風」を支持しているという方も少なくはありませんが、新風は今回の選挙でも、議席確保には至りませんでした。ちなみに、今回北海道選挙区から出馬した新風北海道本部代表の千代信人氏は、北海道神宮の崇敬団体さざれ石会の会員でもあり、一昨年6月16日付の記事「北海道神宮例祭」に貼付した写真で「北海道神宮」と記された紺色の幟(のぼり)を奉持しているのは、実はその千代氏です(先祓い所役を務めた私の後ろに隠れてしまい顔は写っておりませんが)。
なお、これは神社関係者の間では広く知られている事なのですが、「国民新党」の綿貫民輔代表(自民党幹事長や衆議院議長などを歴任)と、「維新政党・新風」の魚谷哲央代表は、共に、神社本庁統括下の神社に奉職する現職の神職であり、綿貫代表は平成16年5月、神社本庁から「長老」の敬称も受けています(長老という敬称については、平成18年3月17日付の記事「神職の身分」の、「長老について」という項目を御参照下さい)。国民新党は“自民党以上に自民党”的な性格を持っているため(結党の経緯からも分かるように党員の多くはかつて郵政民営化に反対した自民党員達です)、同党を支持している神社関係者も少なくはないと思われます。
ところで、他の宗教団体が推していた候補はどうなったのでしょうか。例えば、神政連は有村さん1人を推薦しているだけでしたが、全日本仏教会(全日仏)では、加盟団体から推薦要請のあった20人もの候補を会として推薦していました。ちなみに全日仏とは、全国の主要な伝統仏教教団58宗派と、各地域毎の仏教系団体により構成されている、日本の伝統仏教界における唯一の連合体組織(全国の寺院の9割以上が加盟している団体)です。
その全日仏が推薦した候補20人の所属政党別内訳は、自民党が10人(当選5人)、民主党が8人(当選7人)、国民新党が2人(当選1人)で、20人の推薦候補のうち13人が当選を果たしましたが、ここにも自民党惨敗の影響が見られ、全日仏推薦候補のうち自民党候補は半分しか当選しなかったのに対し、民主党候補は8人中7人もが当選を果たしています。ちなみに、この20人を推薦団体別に分けると、浄土宗が6人(当選2人)、浄土真宗本願寺派が5人(全員当選)、曹洞宗が5人(当選4人)、真言宗豊山派が2人(当選1人)、大阪府仏教会が2人(当選1人)となっています。
この20人の候補のうち、僧籍を持つ現職の僧侶は、浄土真宗本願寺派の藤谷光信氏(民主党・比例代表・新人)と、同派の谷川秀善氏(自民党・大阪選挙区・前職)、そして浄土宗の小泉顕雄氏(自民党・比例代表・前職)の3人で、結果は、小泉氏が落選し、藤谷氏は79,656票、谷川氏は732,175票をそれぞれ獲得して当選しました。
しかし浄土真宗本願寺派では、藤谷氏については、当選を果たしたとはいえ宗門の「特別推薦」を受けて宗門挙げての支援を得ながら獲得票数が8万票に留まった事についてはかなりショックを受けているようで、この8万票という数字について同派の不二川総長は、「厳しい数字。この結果を真摯に受け止め今後に活かしたい」と話しており、「藤谷光信と国政を語る会」の武野会長(前総長)も、「自民党に遠慮して動けなかった人達もいるようだが、今回は政党ではなくて我々僧侶の代表を国政の場に送る事が目的。約8万票という数字は、寺院が日頃から門徒や地域の人達とどのような関係にあるのかを問い直さざるを得ない数字だ」と厳しく受け止めています(藤谷氏の後援会の会員総数が18万人である事を考えると、会員の半数以上が藤谷氏に投票しなかった事になります)。
また、落選した小泉氏については、小泉氏の後援会全国総連合会会長を務める浄土宗の水谷教育資団理事長は、「小泉氏の6年間の取り組みや後援会組織の広がりから見て、20万票程度は確保できるととの楽観や気の緩みがあった。取り組みが上滑りだったようだ」と総括しながらも「捲土重来に期待したい」と述べ、小泉氏が国政選挙への再挑戦する事を期待しているようでした。ちなみに、小泉氏の今回の獲得票は約7万1千票でした。
なお、新日本宗教団体連合会(新宗連)の推薦候補は3人(自民党1人、民主党2人)おりましたが、3人とも当選を果たしました。
新宗連とは、新宗教教団の連合会で、阿吽阿教団、医王山立宗、一尊教団、円応教、大神教、救世真教、解脱会、現證宗日蓮主義仏立講、護国不動尊本宮、思親会、修養団捧誠会、松緑神道大和山、出雲神道八雲教神人会教団、真生会、真理実行の家、神霊の家、聖中道会、世界心道教、善隣教、大和教団、玉光神社、大慧會教団、大法輪台意光妙教会、澄禅律院、天恩教、天心教、天真教、天壌教、七曜会、パーフェクトリバティー教団、日月神一条、日之教、平和観音妙庵、法公会、妙道会教団、三輪神道宏充教、立正佼成会、良辨教本部教会、霊波之光教会、和光道教団などの教団が加盟しています。
(田頭)