慰安婦の親は仕事の内容を知っていたか?

 いい仕事を紹介すると言い、朝鮮人斡旋業者が女性を連れていって売り飛ばすことがあった(就業詐欺)。この時女性は慰安婦として働くという事実を知らないまま、慰安所に連れていかれたのだ。この場合は契約の必要がなく、多額の前借金も支払われなかったであろう。しかし、これには危険が伴う。まず、朝鮮において就職詐欺を含む誘拐は、戦前から警察の取り締まり対象だった。

 次に、女性が現地に着いてからも問題になりうる。慰安所を管理している部隊は、慰安婦になる本人がどんな仕事をするか知っているかを確認した。したがって、誘拐して慰安婦を連れていくケースは、親による事実上の人身売買よりは少なかったはずである。

 後者の場合、募集業者が慰安所経営者の代わりに親に払うお金は、親にとっては娘を売った対価であるが、募集業者や慰安所経営者にとっては前借金になる。李栄薫元ソウル大学教授の『反日種族主義』によると、募集業者と親の間のこのような取り引きは、人身売買という違法と、戸籍制度下における正当な権利行使と職業斡旋という合法との境界線にあった。戦前からすでに人身売買が横行していて、時には社会的問題にもなったが、その容疑で調査を受けた人の大半が無罪に処される状況だった。

 当時の状況を考えると、募集業者と取り引きする親は、娘がどこへ行って何をするかを知っていたと見るべきである。前借金を受け取るという明示的な契約ではなかったとしても、両親がそれを知っていたとしたら、これはラムザイヤー教授の言う契約にほかならない。

 米国の批判者たちはこのような事実を知らない。ラムザイヤー教授は「慰安婦として大金を稼いだ人物」として論文の中で紹介している元慰安婦の文玉珠(ムン・オクジュ)氏が「業者よりも自分を売った親の方が憎い」と言ったのも、このような状況から理解することができる。

元慰安婦の李容洙氏(写真:AP/アフロ)

 業者との間できちんとした契約が行われた代表的なケースは、戦前から朝鮮や外地で売春業を営んできた女性であろう。これは韓国と日本の研究者が疎かにしている内容だが、最も蓋然性が高いといえる。

 1940年頃の朝鮮半島には、総督府が把握している売春婦だけで1万人もいた。また、アジア太平洋戦争の戦場とほぼ重なっていた中国、満州など、朝鮮人が進出していた地域の朝鮮人売春婦は8000人に達した。これらは政府機関が把握した数字にすぎない。売春婦を転職させて軍慰安婦にする際に必要なのは、現在の雇用と比較した場合、「高リスク、高収入」であることを知らせることであろう。