物理物理学・力学理科

教科書では教えてくれない「圧力」と「力」の違い。理科教員を目指すライターが解説

よぉ、桜木健二だ。今回は、「圧力」について解説しよう。日常生活で圧力が関係していることといえば、「電車に乗っていてトンネルに入った時耳がツーンと痛くなる」、「海やプールで深く潜ると水圧で押さえつけられて耳が痛くなる」といった現象だ。
直接観察できず、よくわからない力のように思えるが、決してそんなことはない。

理科の教員免許を持つブロガーR175と一緒に、身の回りの現象に絡めて分かりやすく解説しよう。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

R175

ライター/R175

理科教員を目指すブロガー。前職で、真空チャンバーや高温熱処理設備を扱っていた。その経験を活かし、理科で習う内容と実際の現象を結びつけて分かりやすく解説する。

1.圧力とは

image by iStockphoto

圧力は字の通りある面を「圧(お)す」ための「力」です。

身近な例では、「気圧」や「水圧」などがイメージされるでしょう。トンネルに入ると気圧が低く耳に違和感を感じ、プールや海で深く潜ると水圧が高くなり耳がお押されるように感じる。これらは気体や液体による圧力の影響で起こっています。

圧力は面積当たりにどのくらい力がかかっているかを表す指標で、

底面積が1m^2で重さが1Nの箱を置いたとき、地面にかかる「力」は1N、「圧力」は1Paです。という例がよく出てきます。

しかしこの例だと、「圧力」と「力」を直感的には区別しづらい人もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、そんな「圧力」と「力」の違いを明確に印象付けていきたいと思います。

no-img2″>
 <figcaption class=桜木建二

圧力は何かを圧す(おす)力のことで、面積当たりでどれくらい圧(お)されているかを表す。

何かが何かをおしているのが「圧力」なら、「力」とはどう違うんだろうか?その違いを見てみよう。

2.「圧力」と「力」の違い

圧力と力の区別を明確にするため、ここでは「圧力と力の共通点」と「圧力と力の違うところ」を見ていきましょう。

2-1.「圧力」と「力」は同時に発生?~圧力と力の共通点~

2-1.「圧力」と「力」は同時に発生?~圧力と力の共通点~

image by Study-Z編集部

「圧力」と「力」どこが違うのか?それを考えるにあたりまず、例題を考えてみましょう。

例題:底面積1m^2で重さが100N(約10.2kg)の板が置かれています。次の説明のうち正しいものはどちらでしょうか。

(ア)床には100Nの力がかかっている。

(イ)床には100Paの圧力がかかっている。

正解は、どちらも〇です。(ア)に関して、板の重さの100Nで床が圧されているので間違いなく100Nの力がかかっているので〇。(イ)に関して、力がかかっている面積が1m^2。ここに100Nの力がかかっているので、圧力に直すと100Pa。(イ)も〇です。

ここで言いたいことは

「力」と「圧力」は同時にかかっている

ということ。圧力がかかるのと力がかかるのは同じ現象なのです。

そういう意味で圧力≒力とイメージしても問題ありません。「何かが何かをおしている」という現象は同じで、おしている程度の表し方が違うだけです。

image by Study-Z編集部

例えば、容器内の気圧は100Paといった場合、実は同時に容器内にはもかかっています。なぜなら、容器内の気体が容器の内面をまんべんなく押していて、(気圧100Pa x 容器内面の面積)分の力がかかるから。

また、「100Nの力がかかっています」と出てきた場合も同じです。実は、100Nの力と同時に圧力がかかっています。(かかってる力100N)÷(力がかかっている面積)分の圧力がかかっています。

力がかかっている面積が小さすぎて、何m^2かよくわからない時もあるかもしれません。しかし、面積ゼロは現実上ではあり得ないです。力がかかっている面には何かしらの面積を持つもの。その面積で割り算すれば圧力が求まります。

2-2.「圧力」と「力」の違うところ

2-2.「圧力」と「力」の違うところ

image by Study-Z編集部

前述の通り、圧力も力も「何かが何かをおしている」という意味で起こっていることは同じで、その違いは表し方。表し方違うので当然単位も違います。では、圧力と力の表し方はどこが違うのか?例題で考えてみましょう。

例題:縦1m x 横2m × 高さ1mで、重さ400kg(底面はフラットとする)のブロックが平らな床に置かれているとき、床にかかる力と圧力はいくらでしょうか?

何がどうであれ、400kgの重さ分の「力」がかかります。つまり

400kg x 9.8[m/s2]=3920N

圧力は力が働いている面の面積で割って

3920N/2[m2]で1960[N/m2]=1960Pa。

ここで述べたいのは、力:3920[N]、圧力:1960[Pa(N/m2)]の解釈の違い。前者の3920[N]は床「力の合計」です。力と出てきたら、力がかかってる面の面積にかかわらず、その面全体で合計したものになります。

一方、1960(N/m2)は力の合計ではなく、かかってる面の平均。その面全体で平均するとどれくらい押されているか?の指標です。

まとめると、「力」は合計「圧力」は平均(以下エリア平均と呼ぶ)。400kgのブロックが床に力をかけていることは変わりませんが、その時の床がどんな風に押されているかの表し方が違いますね。力は押されている部分の合計で表し、圧力は押されている部分の平均です。

ここで出てきた自作用語「力の合計」「力の平均」の考え方は次項で見ていきましょう。

2-3.「力の合計」と「力の平均」の考え方

2-3.「力の合計」と「力の平均」の考え方

image by Study-Z編集部

まず、「力の合計」という概念を説明します。ある物体が置かれている床にはその重さの分の力がかかりますよね。

重さの分の力(例えば100N)はど真ん中一点に集中

次のページを読む
1 2
Share:
R175