TBS「天国と地獄」独り勝ちに抱く違和感の正体
入れ替わりは大人向けのドラマと言えるのか
今冬に放送されているドラマでは、「独り勝ち」と言っていいでしょう。視聴率、録画視聴率、見逃し配信数などの各データで断トツのトップであり、ネット記事の数も、ツイッターのコメント数も独走状態の「天国と地獄~サイコな2人~」(TBS系)。ネット上には「面白くて引き込まれる」「綾瀬はるかと高橋一生の演技が凄い」などと称賛の声が挙がっています。
しかし、気がかりなのは、ネットメディアの礼賛記事が乱発されていること。「勝ち馬に乗れ」とばかりに礼賛記事を量産し、そこにファンたちが集まることで、「面白くない」「見るのをやめた」と思う人が声を挙げづらいムードが生まれているのです。
もちろん楽しんで見ている人が多い作品であることは間違いないのですが、私の知る限り、業界関係者やドラマフリークの中には、「『天国と地獄』は推せない」という人が少なくありません。実際にこの2週間あまりで会話を交わした人々から、「悪くはないけど引っかかるところがある」「何でここまで人気があるのかわからない」「TBSの日曜劇場はこれでいいのか?」という声を聞きました。彼らは世間の空気を読んで声を挙げていないだけで、違和感を抱いているのです。
一見、順風満帆に見える「天国と地獄」に、どんな問題点が潜んでいるのでしょうか。
入れ替わりは子ども向けの物語だった
確かに、綾瀬はるかさん、高橋一生さん、北村一輝さん、柄本佑さんなど、人気と実績の十分なキャスティングは、65年の歴史を持つドラマ枠・日曜劇場らしく、原作のないオリジナルに挑む姿勢も素晴らしいものがあります。
ただ、せっかくオリジナルに挑んでも、それが主人公の入れ替わりが前提の物語であることに引っかかってしまう人がいるのも事実。主人公の望月彩子(綾瀬はるか)と日高陽斗(高橋一生)は、階段から落ちたときに入れ替わってしまいましたが、これを見て1982年に公開された大林宣彦監督の映画『転校生』を思い出した人は多いでしょう。
さらに、その原作となった『おれがあいつであいつがおれで』は山中恒さんの児童文学でした。その後も、1985年に石野陽子さん主演の「転校生!おれがあいつであいつがおれで」(フジテレビ系)、1992年に観月ありささん主演の「放課後」(フジテレビ系)、2002年に吉澤ひとみさん主演の「おれがあいつであいつがおれで」(TBS系)が放送されましたが、いずれもティーンのアイドルを起用した同世代向けのドラマでした。