この時代もそうなんですが案外昔って豊かな食生活送ってた気がするんですよね。天然の物を手間暇かけて調理して食べてる、という意味です。
時代劇が好きでして。
江戸時代なんか近海物の魚を七輪で焼いて無農薬米を竈門炊きしたご飯で食べる。
美味かっただろーなーと思います。
なんの話だ?(笑)
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「本当に良かったわね、ンフィー。久しぶりに訪ねたら、おばあちゃんは血を流して倒れてるし、ンフィーは連れ去られたって言うし、どうしようかと思っちゃった、、、」
「ありがとうエンリ。君の方こそ大変だったね、その、おじさんやおばさんも、、、なんて言ったら良いのか、僕」
「心配しないで、もう大丈夫!ネムも居るし悲しんでばかりじゃいられないわ。
「強いな、、、エンリは、、、その、、、あの、、、」
「ん?どぉーしたの?変だよ?」
「こ、これからどうするんだい?カルネ村は無くなっちゃったし、ね、ネムちゃんも事もあるし!」
(はぁ〜、しっかりしろ!ンフィーレア!ナニやってんだ!)
「うん、その事なんだけどね。サトル様は一緒に旅をしないかって仰ってくれてるの。私もね、それもイイかなぁって思ったんだけど、今度みたいな事があると、、、その、、、足手纏いになるのかなって、何にも役に立たないなって。」
(え!?旅に!?もう会えなくなる!?駄目だ!駄目だ!それは駄目だ!)
「駄目だっ!」
「ンフィー?」
(声出しちゃった!うわぁあ、どーしよ!どーしよ!)
2人の間に沈黙が流れる。ネムはなんとなく居づらくなって部屋を出た。
(愛は直球勝負!小細工なしど真ん中ストレートっ!)
「エンリっ!結婚してくれっ!」
(言っちゃった!言っちゃったよ!)
「ンフィー、、、。」
エンリは突然の告白に戸惑った。だが同時に嬉しかった。
カルネ村に薬草採取に来た時それとなく好意を伝えたつもりだったが、顔を背けて薬草の話ばかり、きっと自分みたいな
田舎娘には興味はないのだと思っていたのだ。
「ンフィー、、、そのね、、、あのね、、、わたしね、、、」
「ど、ど、ど、どーかな?!」
(嫌われた?ど真ん中過ぎ?やっぱ初球は臭いトコつくのが定石?)
「不束者ですが、お嫁さんに貰って下さい♡」
潤んだ瞳で見つめるエンリにンフィーレアの感情は頂点に達する。
「エンリィー!♡」「ンフィー!♡」
死と隣り合わせになった少女と少年は大人の階段を登り始めた。
ーーーーー
その頃、大人だらけの応接室。
「ところで、サトル殿と御子息は剣技も相当な達人だが魔法もまた素晴らしい腕前と聞きましてな。」
パナソレイはメイドにお茶の用意を言いつけ話を続ける。
「実は冒険者組合長と魔術師組合長が是非その辺の事を詳しく聞かせてもらえないかと。」
(先ずはこちらの力量を測りに来たか。)
「私たち父子の居た国は修羅の国でしてな。闘いを繰り返し15までの男子生存率は15%なのです。ですから剣の腕を上げるのは生残りの必須条件なのです。魔法もしかり、剣だけでは強敵には立ち向かえません。自然に魔法技術向上も必要になるわけです。」(と言うアニメが昔あった。魔法は知らんけどね。)
一同は恐るべき話に固唾を呑んで聞き入る。
市長など顔面蒼白だ。
「なんと、、凄まじい話ですな。15%とは、、、、。」
皆がはパンドラズ・アクターを一斉に見た。
あの年齢まで生き残るには一体どれ程の地獄を見てきたのか?墓地での超人的な活躍も納得のゆく話だった。
丁度そこへメイドがお茶を運んで来る。
『俺は茶が飲めん。不自然になるのでお前頼む。』
パンドラズ・アクターは目で了解を合図し、カップ&ソーサーで香りを堪能しやがてゆっくりと口を付けた。
「御子息は武人ながら所作もなかなかですな。」
2番手はプルトン・アインザックだ。
「武を極める過程でやはり精神は重要。その一環として祖国には茶道と呼ばれるものがあるのですよ。」
「なにからなにまで初めて聞く話ばかり。やはり世界は広いですな。時に魔法はどれぐらいまで使われるので?ガゼフ殿の話では法国相手に時間停止とかなんとか使われたとか。それは一体何位になるのですか?ここでは3位まで使えると天才。隣国の帝国主席魔術師でも6位までです。それでも逸脱者と呼ばれ恐れられているのです。」
テオ・ラシケルの話には鈴木が驚いた。実力差があるのは分かっていたが、魔法に関しての情報は持ち合わせて居なかったのだ。
(なに?3位で天才?逸脱者とかで6位だと?道理でニグンが神だ神だと騒いでた訳だ。それじゃあ、、、)
「あれはマジックアイテムの力です。私が使えるのは、そうですね4位ぐらいでしょうか?階位と言う概念が無かったのでよくわからないのですが、先ほども言いました通り生きる為でしたのでね。それなりには使えますよ。」
「マジックアイテム!?」ランテルが食いつく。
「おい!」アインザックが諌める。
「はい、マジックアイテムです。あれはもう使ってしまったので有りませんが、そう、息子が1つ持って居ますよ?」
パンドラズ・アクターは何処からか黒い玉を取り出した。
「こ、こ、これは!触っても?」ランテルが手を伸ばそうとすると
「危ないっ!」鈴木は大きな声を出した。
4人は慌てて身を反らす。
「ふう。危ない所でした。その玉は人に取り憑いて邪悪な者に変えるのです。私たちはフォースの暗黒面と呼んでいますがね。」
「ふぉーすのあんこくめん、、、」
「なんと邪悪そうな響きだ、、、」
「ランテル!お前、いくらマジックアイテムに目が無いからって少し軽率だぞっ!」
「す、すまん」
「はは。驚かしてしまったようですね。私たちは先程もお話しした茶道など精神の鍛錬をしているので支配される事はありません。しかしこの玉は非常に危険です。」
鈴木はパンドラズ・アクターに玉を仕舞う様言ったが
ランテルがどうしても鑑定させて欲しいとせがむので
手に持たない事を条件に鑑定させた。
「おいっ!こいつぁあスゲーぞ!こんなマジックアイテムは見た事ない。」
「ランテル君、少し落ち着きたまえ。さてこれからが本題なのだが。単刀直入に言おう。サトル・スズキ殿、ここエ・ランテルを拠点にする気はないかね?」
「拠点、ですか?」
「そう拠点だ。聞けば冒険の旅に出るそうじゃないか。だったらアインザック君の組合で冒険者登録をするのはどうかな?冒険者プレートは身分証にもなるから便利だと思うが。」
(都市長め、サトル殿父子を取り込みにきたな。ここの組合にはアダマンタイト冒険者は居ない、この2人ならアダマンタイト昇進も容易いだろう。街の安全も約束され都市としてもハクが付く。)
鈴木は考えているフリをしてパンドラズ・アクターと伝言を繋げる。
『父上、現在他国と交戦中の国家と深い関わりを持つのは良くありません。ここはお断りするべきかと。』
「パナソレイ都市長、お申し出はありがたいのですが、やはり私たち父子は旅がしたい。自由な冒険がしたいのです。折角ですがお断りします。」
(やはりな。サトル殿父子のスケールは小さい世界では収まり切らん。王都へお連れして陛下に謁見を申し出ようと考えていたが、止めておこう。この御仁に政治の泥を付けてはいかん。)
「そうですか残念ですが街の恩人のご希望とあらばこれ以上の無理は言いますまい。それでは街の人々全ての感謝の気持ち、これだけはお受け取り頂きますぞ。」
パナソレイが合図をすると執事がワゴンを押して入室して来た。
ワゴンには重そうな袋と書類が乗っていた。
2人の組合長と戦士長も笑顔で頷いている。
「これは?」
「はい、この街に住んでいただけるなら邸を用意して相談役の地位に就いてもらおうと相談していたのですが、叶わぬ場合もあると戦士長からありましてな。失礼ながら金貨でご用意させて頂きました。これは冒険者に支払う謝礼とは違います。街の感想の気持ち。どうぞお納め下さい。それと此方の書面は私の署名を入れた身分証みたいなもの。王国内であればこれを検問所でお見せ下さい、問題なく通れるはずです。」
(えー、住む所と仕事も世話してくれる予定だったのー!
それ先に言ってよー!こんなデッカい家?俺なんか一間のアパート暮らしだったんだぜ?それに相談役?それって昼頃会社言って新聞よんでお茶飲むだけの簡単なお仕事じゃん!えー!マジー!冒険なんてやってても転移門開けば直ぐ帰って来れんだよな。糞っ!ガゼフなに余計な事吹き込んでんだよ!)
ガゼフを睨むと片目を瞑って親指を立てている。
(全て分かっていたぞサトル殿。その鋭い視線が物語る貴方の高い志が、な。)
「そ、そーですか、戦士長がそんな事を。そこまで仰られて受け取らないのも不粋。ありがたく頂戴しましょう。但し、私からも提案があります。このお金を4等分して、今回手伝ってくれた冒険者たち、店舗が壊されたバレアレさん、そして街の復興、残ったのは私たちが貰います。」
(冒険者はこれから口コミでジャンジャン俺らの英雄譚広める宣伝広告費みたいなもんだ。バレアレさんとこはこれからエンリたちが世話になるかも知れないから先行投資。復興資金は、まー、利益還元ってとこ?)
社会人鈴木悟は打算的だった。恵まれない境遇で社会を渡って来たのだ、多少の計算は仕方がない。
4人は心酔した。
この御仁は人として格が違う。
「参りましたよ、サトル殿。すっかり魅了されてしまった。わかりました。ここでお金を分けましょう。」
パナソレイはテーブルの上に袋を開けた。
中からは大量の白金貨が出てきた。
エンリから銅・銀・金・白金と種類があるのは聞いては居たが具体的な価値は分からない。せいぜい金貨100枚ぐらいかなっと分からないものの試算していた鈴木は大量の白金貨に驚いたがもう後に引けない。
(ちょっと勿体無かったかなぁ。でも今更だよね。後で街でパンドラズ・アクターにマジックアイテム買ってやるぐらいは残るだろ、多分。)
優しい父親は息子の喜ぶ顔を思い微笑んだ。
(素晴らしいなサトル殿!皆の幸せを思い笑っている。己の欲なぞ微塵も考えていない。)
ガゼフは熱いものが込み上げてくるのを必死で抑えた。
「では、長々とお話しを聞かせていただきありがとうございました。これからのご活躍をお祈りしておりますぞ。」
ーーーーー
「さすが父上、私の出る幕など無かったではないですか。」
「そー見えたか?冷や汗ものだったんだぞ?」
都市長宅で別れ2人は市に来ていた。
「さぁ!金も手に入ったし、ランテルに聞いたマジックアイテムの店で買い物三昧だ。」
「どんな物があるんでしょう、ワクワクして来ました!」
「いらっしゃ、おおこれは!英雄殿と御子息!
これはこれはようこそいらっしゃいました!」
愛想良さげな店主は予期せぬ来客に喜びを隠せない。
「うむ。ランテル殿に聞いてな。いくつか見せて貰いたい。」
「ランテル様に?彼の方のご紹介なら下手な物はお出し出来ませんね。宜しゅうございます、暫くお待ち下さい。」
そう言って店主は店の奥に引っ込んだ。
「とっておき、ってヤツですかね?父上」
「だろうな、あのランテルってオッサンも相当マニアっぽかったからな」
「お待たせしました。」
店主は店の机の上にいくつか品を並べ始めた。
「では端からご紹介いたします。右から、ジャグチ・センプーキ・レイゾーコ・カイチューデントー、でございます。」
(なにこれ?ホムセン?電ノコとかもあんの?)
「ん、んん。ご店主。これらは一体どう使うのかな?」
「はい、1日にカメ3杯分の水が出せる、暑い日に風が起こせる、食べ物を冷やして腐りにくくする、魔術師でなくても暗闇で灯りを灯せる、でございます。」
(え!?まんま?蛇口と扇風機と冷蔵庫と懐中電灯?全部魔法で?コンセントは?)
鈴木はカルチャーショックを受ける。
「大きな声では言えませんが、これらは帝国からの密輸品でしてね。特別なお客様のみにご紹介させて貰ってますです。」
(出たよ、特別なお客様。夜中の通販番組かよ!)
「ほう、特別ルートからの特別品か、、、さぞ高価なのだろうな?」
「そうですね。運搬にも金がかかっております。この中で一番お値段が張りますのは、、、そのレイゾーコでして金貨10枚になります。」
「え!?」思わず鈴木は声を出した。
「それでも貴族様からのご注文に入荷が追いつかないのですよ?」
(いやいやいや、高いからじゃなくて今貰った白金貨の数だよ!軽く100は超えてたぞ?冷蔵庫がプレミア付いて10万くらいとして1000金貨で1白金だから、、、、ええーーー!1億?じゃあなにあの袋に4億入ってたの!?)
鈴木は軽く目眩を起こした。3億もばら撒いてしまった。
(なにが宣伝広告費だ!かけすぎだろ!あーもー、やっぱ経営者にはなれないよ、、、トホホ)
「全部くれ」
「へ?」
「その4つ全部買う。」
そう言って鈴木は白金貨を1枚渡した。
「あ、そーだ。店主、さっきの話だと在庫は無いんだよな?」
「いえ、レイゾーコとセンプーキは大物なので在庫までは持てませんが他の物ならあります。」
「そうか!では蛇口をもう1つ頼む。」
(エンリに土産だ。女子の1日の仕事の始まりは井戸からの水汲みだって言ってたからな。)
「毎度ありがとうございまーすっ!」
お疲れ様でした。
本文にも出てきたお金の話ですが、
今の通貨にした時にどーしよーか困りました。
だって鈴木さんが既に私たちからすると未来人ですから。
それで、捏造ってしてあるからいいや!と1金貨1万円としちゃいました。
3国に面した城塞都市エ・ランテルなら結構財政も豊かである、と思ったのも理由です。都市をアンデットに無茶苦茶にされるなら4億で済むのはお得かなって。
じゃあまた。よろしくお願いしますね。
ありがとうございました。