これまでは、ソウル中央地裁の判決を受け日本が国際司法裁判所(ICJ)への提訴を検討していたが、韓国はICJへの訴えに応じなければならない「義務的管轄権」を受託していないため、ICJへの付託には一切の考えを示してこなかった。
韓国としてみれば、仮に敗訴すれば、歴史問題の当事者から強い批判を受け、政治的に大打撃になるであろう。
慰安婦問題などを巡る状況は文在寅政権の手を離れ、文在寅氏は動きが取れなくなっている。文在寅氏は、歴史問題について「日本は謙虚になれ」「日本は歴史問題を政治利用している」と言ってきたが、「文政権は歴史問題で押しつぶされた」という状況になりつつあるように思われる。
このように元慰安婦の問題、元徴用工の問題で窮地に陥ってきた文政権の現状について分析してみよう。
そもそも慰安婦問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みである。請求権協定では「完全かつ最終的に解決された」と規定している。
韓国側は、交渉の過程で慰安婦問題は議論されなかったというが、何を取り上げるかは請求する側が考えることである。日本は、元慰安婦の人々が、社会から相手にされず悲惨な生活を送ってきたという事情を勘案、人道的に対応してきた。
元慰安婦には「アジア女性基金」から償い金が支払われ、総理の謝罪の手紙も渡されたが、当時の挺対協の妨害で韓国人の元慰安婦にはいきわたらなかった。そのため、2015年に改めて日韓政府間で合意に至り、一人当たり1億円が韓国政府の設立した財団に日本政府が基金を提供し、一人当たり1億ウォンが支給された。この合意は「最終的かつ不可逆的」なものである。当時存命であった46人中36人がこの合意を認めた。
しかし、朴槿恵政権を継いだ文在寅氏は、国民情緒としてこの合意は認められないと拒否した。この合意を反故にしたことで、日本側は文政権との関係に見切りをつけ、日韓関係は膠着状態に陥り、韓国からいかなる提案があっても受け付けない状態となった。