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伊藤一刀斎

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伊藤一刀斎景久【いとういっとうさいかげひさ】

生没年:不詳

出生地:不詳(伊豆説・伊東説・筑紫説・四国説有)

流派:一刀流

略歴:

幼名は前原弥五郎。出生地ははっきりしませんが、14歳の頃、兵法で身をたてようと板切れにしがみついて伊豆大島から伊豆半島の三島に流れ着いたというエピソードが有名です。

そのまま、その地の神社の床下に住み着いた弥五郎。このころにはすでに身長6尺(181cm)。人並み外れた体躯と腕力を持った弥五郎をまわりの人々は「鬼夜叉」と呼んで恐れました。

●デビュー戦

三島に住み着いてすぐ、弥五郎は現地で剣術を教えていた富田一放という兵法者と戦うことになりした。一放は名人と言われた中条流・富田越後の弟子とされていますが、時代的にはつじつまが合いません。ただ腕のほうはなかなかのものだったようで自ら一放流という流派を起こし、たくさんの門弟をかかえる強者でした。

しかし弥五郎は全く問題にせず圧勝。その腕前に感心した神社の神官は神社に伝わる宝刀を弥五郎に授けました。まだ14歳のころです。

●瓶割り刀

戦いに敗れた一放の弟子たちは治まらず、ある夜大勢で弥五郎のねぐらを襲います。弥五郎は先の戦いで得た宝刀で応戦。あっという間に7人を斬り伏せ、恐れをなして逃げ出した敵の一人が大きな瓶の後ろに隠れたところを瓶ごと真っ二つに切り捨ててしまいました。以来、この刀は「瓶割りの刀」と呼ばれ、一刀流の伝承者に代々伝えられていくことになります。

●鐘捲自斎のもとで修業

三島を去った弥五郎は江戸に出て、中条流の達人と言われた鐘捲自斎のもとに弟子入りします。数年の修業を経た弥五郎は師匠の自斎に向かい、剣法の妙技を会得したと告げます。

自斎は弟子の慢心を嗜めようと、自ら木刀を持って立ち合いますが、三度勝負して三度とも負けてしまいます。

弥五郎の「人は足がかゆいのに頭を掻くことはない。眠っていても足を掻く。師がわたしを打とうとすれば、それがわたしの心に映る。ただそれに応じただけです」という言葉に自斎は「そちの技はわたしのおよぶところではない」と中条流極意の「五点」を授けました。

のちに一刀流を興す際、この「五点」を極意として尊んだといいます。

●払捨刀の極意

その後、諸国をめぐり腕をみがいた弥五郎は一刀斎と名乗り一刀流を創始します。

その間、さまざまな武勇伝が伝えられていますが、有名なエピソードのひとつに「払捨刀」の話があります。

ある夜、なじみの女と酒を飲んでいた一刀斎。女の酌でしたたか飲んで、すっかり酔いつぶれてしまいました。その寝込みを十数人の男達が襲います。かねてから一刀斎に恨みを持っていたものの、まともに戦っては勝ち目が無いので寝込みを襲ったわけです。

しかも女も男達に買収されており、一刀斎が寝てる間に刀を持ち去ってしまってました。何とか目を覚ました一刀斎はとっさに刀をかいくぐり、酒肴の膳を投げつけ、ひるんだ相手の一人の刀を奪い、暗闇の中を斬りまくり辛くも危機を脱しました。

一刀斎はこの時の太刀筋を「払捨刀(ほっしゃとう)」と名付け、後に一刀流の極意としました。「払捨」払い捨てる、つまり無心になってわが身を捨て戦うという意味ですが、女にうつつを抜かして危機をまねいた自らの妄想邪念を払い捨てる意味もあると言われます。

●無想剣開眼

戦えば負けなしの強さを見せた一刀斎は真剣勝負を23回、57人の敵を斃したといいます。しかし本人はそれでも納得できず、剣術の妙を得ようと鶴岡八幡宮に参籠し、修業にあけくれます。その最後の夜、身近に迫る怪しい気配がありました。一刀斎は自然に剣を抜き、無心にその気配に斬りつけました。夢想の内に人と剣が一体となったその動きこそ一刀斎の求める剣であり、無想剣に開眼した瞬間でした。

●晩年

若いころ、織田信長が禄を持って一刀斎を迎えようとしたのを断ったという説もありますが、晩年、徳川家康に対しても、弟子の小野忠明を推薦し、自ら仕官することはありませんでした。

◆剣技と人物◆

このころの武芸者のほとんどが大名家への仕官する手段として剣名を挙げようとしていましたが、一刀斎は徳川家への仕官すら断り、ただひたすら自らの剣術を極めようとしていたようです。そのため確かな資料は少なく伝説的なエピソードが多くなってしまっています。
そんな一刀斎なので払捨刀のエピソードなんかも彼程の達人が女に油断したり酒に酔い潰れたりするわけが無いという意見もあります。




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