新型コロナの感染が拡大する以前の2019年には約229万人と国・地域別で、堂々の第4位だった。中国が第1位(約959万人)で、韓国(約558万人)、台湾(約489万人)が続くのだが、香港の人口はわずか750万人ほどしかない。同じ東アジア圏で距離的にも文化的にも近いとはいえ、人口で見れば、韓国(約5200万人)や台湾(約2300万人)よりもずっと少ない。香港からは年間で、3~4人に1人が訪日していたという計算になる。
日本では、中国パワーに圧倒されて、香港でここまで日本人気が高いことは案外知られていないと思うが、確かに、香港の町を歩いていると、日本食やサブカルチャーなど、日本文化の人気は高い。
香港の飲食サイト「openrice」を見ても、日本食レストランは2500軒以上もあり、地元の広東料理店を除くと、ダントツの多さだ。気軽なラーメン店やおにぎり専門店、居酒屋、高級懐石料理まで、一口に日本食といってもさまざまなジャンルがあり、中には「卵料理専門店」まである。
中国料理にはない
見た目の美しさ
それは『Tamago-En』(たまご園)という店で、香港内に5店舗を数える。沖縄県産の卵を使用しており、メニューには「卵かけご飯」(39香港ドル=約526円)や親子丼(78香港ドル=約1050円)などがある。
もっとも、「卵かけご飯」は日本とまったく同じではない。白身をメレンゲにしたオシャレな料理で、日本人がイメージするモノとは少し異なるが、地元の若い女性客などの間では「インスタ映えする」「日本に行った気分を味わえる」と評判になっているという。前述の女性も同店に行ったことがあり「中国料理にはない、見た目の美しさもあって、味もおいしかった」と話していた。
とはいえ、やはり火を通して食べる通常の中華料理とは違う。“生食”に対する抵抗はないのだろうか?
もう一人、「以前はよく日本に夫婦で遊びにきていた」という40代の香港人女性に聞いてみたところ、「香港では日本料理店が多いので、サーモンなどの刺身が大好きという人も多いのですが、さすがにドロッとする生卵は……と思っていました。でも、数年前、日本ですき焼きを食べたときに、初めて生卵の美味しさを知り、それからはすっかり抵抗がなくなりました」という。
この夫婦は日本各地の温泉旅館にも行ったことがあり、「温泉旅館の朝食には、生卵がついてきますよね。朝食のお膳で、初めて卵がついてきたのを見たときには、ゆで卵だと思って割ろうとしてしまったのですが、生だったのでびっくりしました。最初のうちは食べられなかったのですが、すき焼きで生卵に慣れてからは、旅館の朝食でも食べられるようになりました。納豆も同じく、日本の旅館の朝食で初めて食べて、以来ハマり、今ではスーパーでよく買っています」と話す。