【本日ワクチン接種スタート】「GoToは国民の意識を狂わせた」 最前線の医師の予想外だった小池百合子の“発言”
文春オンライン / 2021年2月17日 11時0分
大曲医師 ©︎文藝春秋
連日1000人越えの感染者数を出し、危機に瀕していた東京。この1年、東京都新型コロナ対策アドバイザーとして、最前線で奔走してきた大曲貴夫医師が取材に応じた。「何が失敗だったのか」「小池都知事に対する評価」「感染収束の見通し」など、数々の問題を徹底的に語った緊急インタビューを、『 週刊文春 新型コロナ完璧サバイバルガイド 』より、一部抜粋して紹介する。(全2回中の1回目。 後編 を読む)
2019年12月、中国・武漢で発見された新型コロナウイルス。あれから一年以上が経過したが、世界はいまだ感染収束の兆しが見えず混乱状態にある。
今年1月16日、東京都の最前線でコロナ患者の治療にあたってきた国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター長の大曲貴夫医師にインタビューを行った。小池百合子都知事をはじめとする東京都の行政とも連携し、対応にあたってきた激動の一年を振り返ってもらった。
抑え込もうとすると、いろいろな問題が噴出
私自身、当初は2009年の新型インフルエンザと同じくらいに蔓延する可能性を予想していました。ただ、昨年3月の時点では「ある程度の感染拡大は抑え込める」「何とか行けるのでは」という感触もありました。実際、今のところ台湾やニュージーランドなどでは抑え込めています。
ところが、そう甘くはなかった。実際に抑え込もうとすると、いろいろな問題が噴出し、これまで作り上げてきた制度や仕組みが、うまく働かないということがたくさんありました。非常に悔しい想いです。
私はこれまでずっと感染症対策をしてきて、パンデミックが発生した際の対応について、個人的にも思考訓練をしてきました。
具体的なイメージとしては2015年のMERSのアウトブレイクです。当時、韓国では186人の患者が出て、都市機能が麻痺してしまった。東京でも同じことが起きる可能性がありました。予定通り東京オリンピックが開催され、海外からMERSの感染者が来日すれば、一気に数百人単位の患者さんが出てしまう。それを抑え込まなければいけない。それには、どういった対策が必要なのか、いろんな人にも相談してきましたが、正直言うと、みんなあまり本気で取り合ってくれませんでした。私が何か変なことを言っている、と(笑)。
3月23日、小池都知事が「このままだとロックダウンの可能性」と発言
この一年間の東京都のコロナ対策を振り返った時に、何が成功で、何が失敗だったのか。
忘れもしない昨年3月23日のことですが、記者会見で小池都知事が「このままだとロックダウンの可能性もある」と強いメッセージを繰り出されました。あの発言は私も予想していませんでした。ロックダウンという具体的な言葉を使うことで、国民の皆さんが、ニュース映像で観ていたニューヨークやイタリアの様子を頭の中に思い浮かべ、「これはとんでもない事態だ」と思うようになった。
あの会見は、時短営業の要請が出る前に行われました。私の認識では、会見が報道されてから感染者数が減っているのですが、実際に空気が変わったのが分かりましたよね。街から人が消えていった。これは様々なデータの解析結果でもはっきりしています。「ロックダウン」という表現を使うことには様々な批判の声もありましたが、あの会見が間違いなく、日本を第一波から救ったと思っています。
「3密」というキーワード
ちなみに小池都知事が「3密」というキーワードを発信したのも、その2日後の会見でした。それで言うと、感染リスクのある密集、密閉、密接を避ける必要性を非常にシンプルな「3密」の概念に落とし込んだ厚労省クラスター対策班の功績も、とても大きかったと思います。
この一年の都の対応策について、私は専門家として関わってきていますので、評価する立場ではありません。都の職員の方々は非常に優秀で、モニタリング会議での我々専門家による問題提起に対しても、皆さん死ぬ気で考えていることが伝わってきます。私自身は、今思えばあのタイミングではこういう対策を行うこともできたのでは……と考えることは多々あります。そこはこれまでの対策をよく反省して次につなげるべきと考えています。
GoToで国民の意識が狂った
ところが夏以降になると、GoToキャンペーンも始まり、せっかく抑えられていた人の流れが、簡単に戻ってしまった。
日本は夏から秋にかけて「感染症対策」と「経済」を両立させることにチャレンジしました。尾身茂先生が「急所」とおっしゃる「会食」などの場を避けながら、感染対策の意識を高めて社会活動を戻していこうと。ガイドラインを決めたり、危険度のステージを設けたりもしました。ただ、一番強く思ったことは、感染を防ぐ最前線は個人の行動であって、そこを変えるのは決して簡単ではないということです。
GoToそのもので感染者が増えたかどうか、まだ確固たるデータはありません。ただ、私なりに考えたり、知り合いの行動経済学の専門家の方々のお話を聞いたりして知ったのは、GoToは国民の意識を狂わせただろう、ということです。
GoToトラベルにしてもイートにしても、使わないと損をしちゃう。それでタガが外れてしまい、いつの間にか「もう大丈夫なんだ、元に戻っていいんだ」という意識になってしまったのです。みんなで食事をしたりお酒を飲んだりする楽しさ、旅行に行く楽しさを思い出してしまうと依存症のようなもので、もう我慢できない。個人の行動を変える、意識を変えることこそが重要な感染症対策なのに、その意識をおかしな方向に向けてしまった。今後の対策を考えるうえで、これは重たい教訓として真剣に捉えるべきだと思います。
ランダム化比較試験が必要
大曲医師が臨床現場で多くの患者さんの治療にあたってきた中で、何かわかったことはあるのか。
昨年2~4月の治療は、全くの手探り状態でした。本当に辛い時期で二度と経験したくないくらいです。私は以前MERSの研究班にいたので、その時の知見に基づいて、当初はコロナ感染者に効果が“想定できる”治療をしていました。場当たり的でも、まずは目の前の死に瀕した患者さんを治さないといけなかった。でも、本来はランダム化比較試験など、正当な手続きを経てコロナの標準治療を見出さなければいけないはずで、そこには非常に葛藤がありました。
おおまがり・のりお/1997年、佐賀医科大学医学部卒。2010年に静岡がんセンター感染症内科部長。12年より国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター長。日本感染症学会専門医・指導医。感染症の臨床一般、危機管理を専門とし、この1年は東京都の新型コロナ対策アドバイザーとして、最前線で対応にあたってきた。
じんぼ・なおき/1970年生まれ。中央大卒。2004年より「週刊文春」記者。14年頃から主に医療・健康に関する記事を取材執筆。メイン執筆者となった文春ムック「認知症 全部わかる!」が発売中。20年10月をもって独立。
【本日接種スタート】「ワクチン不信は社会が救われない」 東京都新型コロナ対策アドバイザーの医師が語る感染症対策の“不備” へ続く
(神保 順紀/週刊文春出版部 週刊文春 新型コロナ完璧サバイバルガイド)
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