アルバイトが偽の署名を書き込む作業を行ったとされる会場=佐賀市の県青年会館

 「何かおかしいと思っていた」。愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)に向けた署名集めについて、実際に偽の署名を書き込むアルバイトをした佐賀市の30代女性が佐賀新聞の取材に応じ、当時の様子を語った。

 女性は昨年10月、東京都の人材派遣会社のサイトで「名簿の書き写し」「時給950円」といった内容の募集をたまたま見つけた。会場の県青年会館(佐賀市)には若者から高齢者まで約50~60人が集まっていた。偽の署名を書く作業とは知らされていなかった。

 館内の貸会議室では、試験会場のように長机が並べられ、名簿が入っている段ボール箱が積まれていた。携帯電話などの荷物はビニール袋に入れて後ろの棚に置き、休憩時間以外は触れることができなかった。「口外しません」という誓約書にも記入した。

 名簿のバイトでは、手書きのデータをパソコンに打ち込むのが一般的だが、今回はその逆だった。名前や住所が書かれた名簿を手渡され「了承をいただいているので、おかしなことはない」と言われた。手書きする用紙には、高須クリニックの高須克弥院長と河村たかし名古屋市長の写真が掲載されていた。

 1枚につき10人分の欄があり、午前9時ごろから夕方まで作業。女性は3、4日間だけ働いた。全体の作業は当初1週間ほどの予定だったが延長され、2週間ほどになったという。

 偽の署名を書いていたことについて女性は「仕事の割にバイト代が高いと感じていた。巻き込まれたというか、知らなかったとはいえ、こんな大ごとだとは思わなかった」と困惑した様子で話した。

 人材派遣会社の担当者は取材に対し「現在、事実関係を確認している」とコメントした。(取材班)