南半球に続いては、ララミディア大陸の南、現在のニューメキシコ州に目を移します。ここで問題。ニューメキシコ州に棲息していたティラノ軍団は、次のうちどれでしょう?
1.ティラノサウルス
2.アルバートサウルス
3.リストロナクス
4.テラトフォネウス
5.ビスタヒエベルソル
正解は、5のビスタヒエベルソル。
ちなみにティラノサウルスはカナダのアルバータ州とサスカチュアン州、アメリカのモンタナ州で、アルバートサウルスはカナダのアルバータ州、リストロナクスとテラトフォネウスはユタ州にそれぞれ棲息していました。ちなみに、ビスタヒエベルソルは、白亜紀のカンパニアン期の恐竜です。
恐竜時代には、ユタ州とかニューメキシコ州といった州境はもちろん存在していませんから、両州から発見されたティラノ軍団は、ララミディア大陸の南部という同じ地域のものと考えましょう。
ララミディア南部のティラノ軍を古い時代順にならべてみると、次のようになります。
・リストロナクス(7990万年から8060万年前)
・テラトフォネウス(7700万年から7600万年前)
・ビスタヒエベルソル(7400万年から7100万年前)
こうして3種類の恐竜を時代別にならべてみたとき、どれも時代が重なっていないことがわかります。ララミディアの南部に存在したティラノ軍団は、すべて時代が違うのです。
ここでご紹介したいのが、ニューメキシコ州で見つかった新しいティラノ軍団メンバーです。時代は8000万年前から7900万年前。リストロナクスと同じ時代です(場所は300キロほど離れていますが)。
2018年に論文にまとめられたばかりのその新たな恐竜の名は、ディナモテラー・ディナステス。ディナモ(dynamo)はパワー、テラー(terror)は恐怖を意味する言葉です。そしてディナステス(dynastes)は「支配」なので、ディナモテラー・ディナステスとはつまり、“力を持った恐怖の支配者”ということになります。
あいにく、発見された標本はあまりいいものではなく、頭骨のごく一部(左右の頭頂骨のみ)と4つの胴椎骨、断片的な肋骨、さらに手の甲の骨一個(第2中手骨)、腰の骨一部(腸骨のほんの一部)、足の指の骨2個……といったところ。それでも、全長はおよそ9メートルと、大型のティラノ軍団メンバーであることに変わりはありません。
このディナモテラー・ディナステスは、晴れてティラノ軍団の一軍入りを果たしています。他のティラノ軍との関係性はよくわかっていませんが、リストロナクスのご近所さんとして一軍メンバーが増えたことは、世のティラノサウルスファンにとっても喜ばしいことでしょう。