第05話:協力者を得た少年 出力(失敗編)
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少女「帽子がとばされちゃった(棒読み)」
少年「も、もちろん、僕が取ってくるよ!」
少年は駆け出した。
帽子まで30メートル!
(行ける、僕は行けるぞ!)
少年はそう信じて走り続けた。
帽子まで32.5メートル!
少年の走る目の前に、寝ている黒猫が!
しかし、少年は寝ている黒猫を危なげなく飛び越えた。
帽子まで35.0メートル!
帽子まで37.5メートル!
少年の走る目の前に、地面に転がる酔っぱらいが!
しかし、少年は地面に転がる酔っぱらいをなんとか飛び越えた。
帽子まで40.0メートル!
(駄目かも……いや、違う、自分を信じるんだ!)
少年は雑念を振り払って無心で足を動かし続けた。
帽子まで42.5メートル!
帽子まで45.0メートル!
少年の走る目の前に、腐った材木が!
しかし、少年は腐った材木を危なげなく飛び越えた。
帽子まで47.5メートル!
帽子まで50.0メートル!
帽子まで52.5メートル!
走っている少年にローブをかぶった老人が声をかけた。
老人「おお、なにを急いでいるんじゃ?」
少年「帽子を追いかけているんです!」
老人「ふむ、わしが風を逆に吹かせてやろう」
老人「むむ……」
少年「早く早く!」
老人「むむ……」
少年「早く早く!」
老人「ふぬ……ぬぐっ」
魔法に失敗した!
しかも、老人が呪文を唱えている間に15メートル飛んでしまった。
逆に15メートル離れてしまった!
少年「あ、ありがとう……」
少年は微妙な表情でまた走り出した!
帽子まで70.0メートル!
(もうダメだ。また罵られるに違いない。この世界に神はないのか!?)
少年はボロボロになりながら、神を呪い、天を呪い、世界のすべてを呪いながらも進み続けた。
帽子まで72.5メートル!
少年の走る目の前に、新聞紙の束が!
しかし、少年は新聞紙の束をトリプルアクセルで飛び越えた。審査員も大喝采だ。
帽子まで75.0メートル!
帽子まで77.5メートル!
少年の走る目の前に、地面に転がる酔っぱらいが!
しかし、少年は地面に転がる酔っぱらいを危なげなく飛び越えた。
帽子まで80.0メートル!
少年の走る目の前に、地面に転がる酔っぱらいが!
しかし、少年は地面に転がる酔っぱらいをなんとか飛び越えた。
帽子まで82.5メートル!
帽子まで85.0メートル!
帽子まで87.5メートル!
帽子まで90.0メートル!
帽子まで92.5メートル!
帽子まで95.0メートル!
帽子まで97.5メートル!
少年は諦めて足を止めた。
少年がうなだれて少女のもとに戻ると、またもや少女は冷ややかな目で少年を見た。
少女「酷すぎるわ。なんど失敗すれば気が済むの?」
少年は自らの非力さを呪った。
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老人が登場するのですが、魔法に失敗してしまいます。
少年の足を止めただけで何の役にもたっていません。
なんということでしょうか。