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才能ゼロの落ちこぼれC級魔術師がたった一週間でA級魔術師を凌ぐ攻撃魔術を操れるようになり、宮廷お抱え魔術師として月収8000エリスを得られるようになった禁断の魔術制御方法

作者:唯乃なない


「はぁ……なんだよこれ」


 俺はそう呟きながら裏通りを歩いていた。

 裏通り特有の澱んだ空気が鼻につく。

 そんな空気を振り払いながら、ゴミを避けながら通りを歩いていく。


「っつーか、なんだよ。ただの雑魚退治だろ? それなのにB級以上必須とか、どうなってんだよ、この世の中」


 俺はしがない魔術師だ。

 魔術師と言っても、貴族や騎士団から引っ張りだこのA級でもなければ、金持ちの商人から護衛を頼まれたりするB級ですらない。

 魔術師の中の底辺の底辺、C級だ。

 それでも、いままでは仕事があった。

 低レベルな魔術を使う雑魚なモンスターを討伐するってやつだ。

 相手の魔術を無効化するには絶対に魔術師が必要で、そんなときに安くて便利なC級魔術師が呼ばれるってわけだ。

 安い上で危険で本当にくそみたいな仕事だが、それでも仕事はあるにはあった。

 ところが、どういうわけか最近は雑魚退治でもB級以上とかいうトチ狂った案件が増えてきた。


「ちくしょう! どうせ、どっかのC級魔術師がトチって被害を出したんだろうけどよ。なんで俺まであぶれなきゃならねぇんだよ。C級ったって、みんな一緒じゃねぇのに、くそっ……A級、いやせめてB級ならこんな思いしなくてよかったのに」


 毎日のように言っている悪態をついた。

 ストレスのせいか、最近一人言が多い。


 ふと、進行方向に深くフードをかぶった人物がいるのに気がついた。

 みるからに怪しい。


「なんだってんだよ……」


 小さくつぶやいて、フードの人物から距離を取りながらすれ違う。


「おおっと、あなた魔術師ですね?」


 フードの男が声をかけてきた。

 俺の格好や肩についているC級魔術師の紋章を見れば、俺が魔術師であることは簡単にわかる。


「だ、だからなんだよ」


 もしかしたら仕事の依頼かもしれないという思いが一瞬脳裏をかすめた。

 しかし、こんなところで依頼してくる仕事がまともなはずがない。

 君子危うきに近寄らずだ。


「いえ、見たところC級……」


「だ、だからなんだよ!? 大きなお世話だ!?」


「いえ、私がお手伝いできるのではないかと思いましてね。どうです? 『チャンス、欲しくありませんか?』」


「は、はぁ!? なんのこと……」


「もし興味がありましたら読んでみてください」


 フードの男は懐から封筒を取り出した。


「な、なんだよ?」


「もしあなたがA級魔術師になりたいという気持ちがあれば、読んでみてください」


「は!? そりゃなりたいけど何をバカなことを……」


 俺が困惑しながら封筒を掴むと、フードの男はそのままさっさと歩いていってしまった。


「お、おい!」


 受け取った封筒を開くと、文字がぎっちり書かれた紙が入っていた。

 しかし、日が落ちてきたこの時間では文字を読むことは辛い。


 封筒を掴んで家に戻り、ランプの明かりのもとでその文章を読んでみた。


 その内容は驚くべき内容だった。


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 もしあなたがこの手紙について他言しないと誓ってくれるなら、

 あなたの知り合いの魔術師が泣いて悔しがり、ついにはあなたを神のようにあがめるしかなくなり、

 街中で、いえ国中から注目される名実ともにトップクラスの魔術師になれる秘密の方法を公開するのですが……


 魔術師のあなた、今の魔術力に満足していますか?


「満足してなくても、魔術力なんて生まれつきだからしかたない」


 と思っていませんか。

 実はそれは長い間信じられてきた迷信にすぎません。


 私が発見した「ある方法」により魔術力を数十倍に高めることができるのです。

 それもわずか1週間で。

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 それを読んだ俺はハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けた。


「ま、まじかよ!? そんなことが!?」


 手紙を持つ手が小刻みに震えている。


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 そんな馬鹿な、と思う方はこのままこの手紙を破り捨ててください。

 信じられない方を相手にする気はありません。


 そんなこともできるのかもしれない、と可能性を信じてくれる方のみにお伝えしたいと思います。


 あなたにお伝えしたい内容はこれです。

『才能ゼロの落ちこぼれC級魔術師がたった一週間でA級魔術師を凌ぐ攻撃魔術を操れるようになり、宮廷お抱え魔術師として月収8000エリスを得られるようになった禁断の魔術制御方法』

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「嘘だろ!? C級からA級!?」


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 おそらくこれを読んでいるあなたはこの事実を疑っているでしょう。

 しかし、これはまぎれもない事実なのです。


 ちょっと想像してみて下さい。

 もしあなたがA級魔術師になったらあなたの生活はどうなりますか?


 掲示板に貼られた安くて自尊心を得られない仕事にありつけるかどうか、そんなことを毎日心配する日々に満足していますか?

 A級魔術師となったあなたは宮廷や騎士団と契約し、毎月座っていても数千エリスの収入が得られるようになるのです。


 今の住まいに満足していますか?

 A級魔術師となったあなたは王都の一等地の豪邸に住むことができます。それも家賃は騎士団や宮廷が持つのです! あなたはびた一文払う必要はありません!


 今着ているその服に満足していますか?

 A級魔術師となったあなたは特注のフォルダンティ製のつややかな生地のローブを着て町中を歩くことが普通になります。

 他の魔術師や行き交う人々がどのような感嘆の声を上げるでしょうか!


 今のあなたは尊敬されていますか?

 A級魔術師となったあなたはだれからも尊敬されます。

 今まで馬鹿にしていた友人もあなたのことを認めざるを得なくなります。


 もちろん金銭的にはこれ以上ないほど恵まれることになります。


 こういったことに全く興味が無いというのであれば、この手紙を破り捨ててください。


 しかし、興味がある、というのであれば、私はあなたに「真の魔術の秘密」を教える用意があります。


 ですが、誰にでも教えるわけではありません。


□子供の頃は最強の魔術師に憧れていたが、大人になって自分に魔術の才能がないことがわかり絶望している

□自分を馬鹿にした奴らを見返したい

□他の魔術師とは桁外れの実力を持つ魔術師になりたい


 そんな強い思いを持つ方以外はお断りしています。

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「思いだけなら負けない。大丈夫だ、俺は対象者だ」


 俺は震える手で手紙を持ちながら、コップに注いだ水を一気に喉に流し込んだ。


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・特別な訓練は必要としません


・特別に高い知力も必要としません


・年齢も性別も一切関係ありません


・一日わずか30分の練習で効果があります。


 信じられないかもしれませんが、本当です。


 さて、ではこの手法はいくらで教えればいいでしょうか。

 無料で教えられれば一番いいのでしょうが、これは私が自分の財産のすべてと25年の月日をかけて発見した方法です。

 いくらあなたのためといえども、ある程度のお金を頂かないとお教えするわけには行きません。


 私がこの方法を教えたある魔術師は月収8000エリスを得ています。

 だからハッキリ言って、この方法には最低でも3万エリスは払っていただく価値があると思います。

 しかし、私も底辺で苦しんできた人間ですので、今も苦しんでいるあなたを助けたいと思っています。

 振り返ってみれば、あの底辺時代は1エリスどころか1シングルも惜しい生活で、例えこんな夢のような方法があったとしてもそんな大金は払うことができなかったでしょう。

 だから思い切って値引きをすることしました。


 本当に思い切って、たったの3000エリスにします!


 10分の一の価格です。

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 その金額を見て俺の心臓は止まりそうになった。


「いや無理だって! 3000エリスとか……いや、ほしいけどさ、でも3000なんて……」


 俺は頭をかきむしった。

 俺はこの手法を喉から手が出るほど欲しい。

 でも、借金したって3000エリスなんてかき集めることはできない。


「くそっ! やっぱり金が無いと駄目なのか……」


 激しく落胆しながらも俺は読み進めた。


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 この価格であればあっという間に稼いで一月以内にもとを取ることができるでしょう。

 しかし、A級魔術師となった後も街の防衛のために尽力しているエミさんのように、強力な魔導力を手にしても大金を稼がないという選択をする方もいらっしゃいます。

 私はそういった方こそ応援したいと思います。

 エミさんの月収を聞いた所、月に30エリスとのことです。

 これだけの魔導力を手にして30エリスなんてあまりにもったいないと思いますが、そういった方にこそこの力を届けなければ行けません。

 ですから、その1.5倍として、45エリスで販売します。

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 俺はおもわずテーブルを叩いた。


「45!? 安!!」


 それくらいなら知り合いから金を借りれば集めることができる。


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 ですが、この方法は広く知れ渡ってしまっては困ります。

 なので、先着30名の方にのみお教えします。

 あなたがこの広告を見ている頃、もう売り切れているかもしれません。


 興味のある方はエナデール亭203号室まで。

 (23日まで逗留しております)


<体験者の声>


・C級魔術師 ハミナル(仮名)さん

 まさかこんな方法があったなんて!

 これまで地元のある名の通った師匠について3年間みっちり修行していた私が馬鹿みたいじゃないですか!

 この方法を知って実際に訓練してみると、たった3日で師匠を凌いでしまいましたw

 一週間なんて嘘です。

 3日でとんでもない領域にまでいけてしまいますよ!


・A級魔術師 ジューウィットさん

 最初に聞いたときは絶対に嘘だと思いました。

 だって話を持ってきたフランさんはとても胡散臭く見えましたからね。

(その後、とてもいい人だとわかりました。フランさんは異邦人ですから、どうしても我々からすると失礼ながら胡散臭く見えてしまうんです)

 ですから半信半疑で試してみたのですが……


 驚きました。

 私の中の魔術に対する観念が一瞬でぶち壊されました。

 と同時になんでこんな簡単なことに気が付かなかったのかと悔しくも感じました。

 こんなことで魔導力が10倍以上になるなんて、これまでの何百年もの魔術師達の努力は何だったのでしょうか。

 我々は魔術のことを知りすぎているあまりにある『罠』に嵌っていたんですね。

 魔術のことを知らない外の世界の視点を知っているフランさんだからこそ発見できた方法です。

 私も魔術師として40年のキャリアがありますが、私が知る限りこんな方法はこの世にありませんでした。


・A級魔術師 スターネクスさん

 正直に告白します。

 私はこの方法を教えてもらった時、思わず「この方法を公開しないで!」と叫んでしまいました。

 それぐらい強力な方法です。

 この方法が広がってしまったら魔術の常識はひっくり返ってしまい、これまでの魔術師は全てお払い箱です。

 私は魔術師としてある貴族に雇われている身ですから、こんな方法が世の中に広がってしまったら私のお給料が危なくなってしまいます。

 今回販売数が絞られているのは私がお願いしたからです。

 こんな本がこの世にある事自体が恐ろしいです。



・B級魔術師 エミさん

 私はある小さな街にすむ底辺魔術師でした。

 やる仕事といったら魔術とは何の関係もない日雇い仕事ばかり。

 たまに魔術師として野獣退治にでかけても、周りのメンバーの足手まといで自己嫌悪するばかりでした。

 そんなときこの方法を教えていただき、あっという間に主戦力となることができました。

 私は他の方と違って貴族に仕えたり出世するつもりはなく、今でも気のしれた仲間たちと街を守るために奮闘しています。

 足手まといだった私がみんなを守れる立場になれたことが一番のご褒美です。

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「おい、すげぇ……すげぇな、これ」


 もう指先だけではなく、足までもわなわなと震えていた。

 一刻も早く45エリスをかき集めなければ。


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■追伸(プレゼントのお知らせ)

 魔術を研究する中で偶然発見してしまった「意中のあの娘を3秒で落とせる誘惑魔術の解説書」も無料でプレゼントします。

 あまりに強力なので、どんな貧乏・不細工・才能ゼロでも極上の美女・美少女ばかりのハーレムを簡単に築けてしまいますが、決して悪用しないと誓って下さい。

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「ま、まじで!? そんな魔術まであるのか!? っていうか、こっちだけでも欲しいかも!!」


 俺は手紙をたたむと金策するために家を飛び出した。



 10日後、俺は激怒しながらエナデール亭に向かって走っていた。


 あの後なんとか45エリスをかき集めてエナデール亭の203号室に行った。

 すると例のフードをかぶった怪しい男がいて、45エリスと引き換えに俺に薄い本を渡した。

 俺はその本に書いてあるように、朝日を浴びながら手を合わせて呼吸をしたり、紙に書かれている呪文を唱えたりした。

 しかし、一週間経っても全くなんの変化もない。


「ちくしょう!! あんなめちゃくちゃ教えやがって! 詐欺野郎め! 半殺しにしてやる!!」


 エナデール亭に着いて、蹴破るようにして203号室に押し入ると、そこにはフードの男は居なかった。

 代わりにがっしりした体格の男が不機嫌そうに椅子に座っていた。


「お、おい! フードの男はどうした!? とっちめてやる!!」


 怒鳴ると、がっしりした体格の男は不機嫌そうな顔で答えた。


「あいつはもう居ないですよ。昨日ここから逃げ出したらしい」


「くそっ! 逃げられた! あの詐欺師め!!」


 男は訝しげに俺の顔を見た。


「もしかしてあなたはフリンから例のものを買ったのですか?」


「ん!? あんた、フリンの仲間か!! か、金返せ!!」


 男に掴みかかるが、難なくあしらわれた。


「落ち着いて下さい。私はあいつの仲間じゃないですよ。いえ、元々仲間だったんですがね。もう仲間じゃありませんよ。本当に見下げたやつだ。私に無断で勝手にあれを売るなんて……」


 男はブツブツと聞き取れない声でなにか悪態をついた。


「なんでもいい! とにかく俺の金を返せよ! ふざけたものを売りつけやがって!」


「落ち着いて下さい。残念ながら金は全部あいつが持っていってしまったんですよ。本当に信じられない男だ。勝手にあれを売っておいて金を持って逃げるとは、本当にまったく……」


「か、金が……ない……く、くそぉ!!」


 俺は悔しさのあまり床に倒れ込んだ。


「なにか悔やまれているようですが、あなたはフリンから例のものを買ったのでしょう。いいじゃないですか。やりきれないのは私の方ですよ。あの秘伝の方法を勝手に二束三文でばらまかれたのですからね!!」


「はぁ!? なにがいいんだよ! 一週間やったがなんの効果もなしだ! 詐欺だろう!」


「詐欺!?」


 男の表情が変わった。


「詐欺とは……。あなた、失礼ながらフリンから買ったものをお持ちですか?」


「あぁ、持ってるよ! 返そうと思って持ってきたんだ!」


 叩きつけるように男の手のひらに本を叩きつけると、男は本を開いてページを数枚捲った。


「これは……これはいけないな。フリンのやつ、大事な所が抜けているじゃないか。これじゃ効果が出るわけがない」


「なんだって?」


 男の顔を見る。男の顔は真剣だ。


「恥を忍んで経緯を話しますとね。これは私とフリンで編み出した方法なのですよ。私は誰にも教える気がなかったのですが、フリンのやつが勝手に教えだしたんですよ。知り合い程度なら大目に見ていましたが、まさか見ず知らずの者にまで教えるとは思わなかった。もっとも、大事な所が抜けているのでこれじゃ役に立ちませんがね」


「な、なんだって、じゃあ本当なのか!? あのわけのわからない行動に意味があるのか?」


「ええ、もちろんです。あなたはこれを読んだのでしょう」


 そういって、男は例の手紙を出した。


「あ、あぁ」


「ここに書いてある体験談だとか能書きは全部本当のことです。だからこそ私はこんなものを人に教えるべきじゃないと言ったんだが、あいつは言うことを聞かないから」


「なっ……!! 本当ならそのやりかたを教えてくれ! 俺は45エリスも払ってなんにもなってないんだぞ!?」


「申し訳ありませんが、私は教える気はないんですよ」


「ふ、ふざけるな、なら金返せよ!」


 怒鳴ると男は不機嫌そうに首を振った。


「勘違いしないでほしいですね。私も被害者ですよ。勝手にこの知恵を広げられた挙句に1シングルたりとも得てないんですからね」


「く、くっそーー!!」


「とはいえ、あなたも気の毒だ。私も信念を曲げましょう。あなたにだけお教えしますよ」


 男はため息を付きながらそう言った。


「え……ま、まじか? 教えてくれるのか? は、はやく教えてくれ!」


「待って下さい。この方法を知ったらあなたの人生は一変しますよ? 収入も地位も付き合う友達もなにもかも変わりますよ。その覚悟はあるんですか?」


「も、もちろんだっ!」


「結構です。しかし私も、あなたと同じ被害者だ。ただで教えるにはあまりにも……」


「ちくしょう……金取るのかよ」


「どうか冷静になって下さいよ。あなたから金を取ったのはフリンだ。私じゃない。私はあなたから1シングルも貰ってない。そもそも教える気がないのに気の毒だから教えようというんです。嫌なら帰っていただいて結構です」


「い、いやいや、わ、悪かった。頼む、教えてくれ! い、いくらだ!?」


「まぁ、そうですね……最低でも100エリスはいただかないと。いくらなんでも」


「100!? お、おい、俺にそんな金が……頼むよ!」


「しかしこれでも破格ですよ。そもそも私はあなたに教える義理なんてないんですからね」


「わ、わかってるよ! でも100エリスなんてすぐに用意できるわけ……」


「わかりました。私も鬼じゃありません。フリンに払った45エリスを引いて55エリスとしましょう」


「お、おお! でも、もうちょっと……」


「残念ですが、ここまでです。無理なら、今回のことは悪い夢だったと思って忘れて下さい」


「い、いや、ここまで来て忘れられるかよ!? だって、本当に魔導力が10倍になるんだろ!?」


「ええ。人によってはもっといきますがね」


「そ、そんな方法あるなら俺だって……た、たのむ、もうちょっと負けてもらえないか?」


「残念ですが、無理です。この話はなかったことに」


「待て、待ってくれ! わ、分かった、い、一週間待ってくれ! なんとか用意するから」


「……わかりました。くれぐれも他言しないようにお願いしますね」


「わかった!」


 こうして俺はこの後半年に渡って計18回、合計1200エリスを詐欺られることになった。





 皆さん、美味しい話に聞こえる詐欺話には気をつけましょう。


 情報商材的なセールスレターを異世界でやったらどうなるかな、ってことでやってみました。

 たぶんこのセールスレターを書いたフードの男はこっちの世界からの転生者だと思います。


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