原作でキャラが強かったのか良かったのか、愛されてますよねクレマンティーヌさん。
二次作品では様々な性格を与えられ生き生きしています。
私のクレマンティーヌさんは、どんな女性になるんでしょうね。
でわ、ごゆっくり。
深夜にも関わらず大通りは"英雄たち"を一目見ようとする人々で賑わっていた。
「サトル殿!さぁ沿道の人たちに手を振ってやって下さい!」
「ぇぇ、、、マジっすか?」
(恥ずいよー、皆んな見てるじゃん!)
「父上!ガゼフ殿の仰る通りです。手を振って!」
「ブルータス、お前もか!」
「ブルータスって誰です?私はパンドラズ・アクター、父上のたった1人の息子ですっ!」
「わかった、わかった!手を振ればいいんだな?こう見えて私はとても照れ屋なのだよ。」
「「知ってます」」
パンドラズ・アクターとガゼフは見事なコンビネーションプレーをやってみせた。
「父上、冗談はさておき。先程のクレマンティーヌと言う人間ですがお側に置いてよろしいので?」
「ああ、十分に脅しておいたからな。心配要らん。アレは中々の情報をもっていて、役に立つ。」
「まあ、あの程度の人間が父上に害を及ぼすとは考えられませんが、念のため。」
「お前の心遣い感謝するぞ。でな、これは今回の活躍の褒美だ。インテリジェンス・アイテムだ。意思を持ち喋る。前の水晶に次いで2つ目だ。コレクションに加えると良い。」
「父上!ありがとうございます!いつも気に掛けて頂き恐縮です。」
「水臭い事を言うな。前世を互いに知る2人しか居ない仲間じゃないか。そして同時に私の創った息子でもある。そうだろ?」
「うぐっ、えぐっ!ぢぢゔえっ!」
「あーもー、泣くな!男前が台無しだ!ほれ、ハンカチだ!涙を拭け!」
「見ろよ。"赤い彗星"さんが泣いているぞ。」
「あぁきっと、俺たちには簡単そうに見えたが実際はキツい戦闘だったのだろうよ。親父さんの顔を見てホッとしたんだろうさ。だって明るい所で見たらまだ少年っぽいじゃねーか。」
「サトル殿、今夜はこのまま宿へ入って身体を休めて下さい。エンリさんやネムちゃん、それと店が壊されたリイジー・バレアレ氏も同じ宿で待っています。あと、クレマンティーヌさんでしたか?彼女はどうします?隣に部屋を取りますか?」
「ええ、お願いします。但し、彼女もまた攫われた恐怖から抜け出してはおりませんので独りにするのは心配です。今夜はエンリや息子と皆同じ部屋で過ごしますよ。なぁ?クレマンティーヌ、その方がいいよなぁ?」
「ハイ、オッシャルトオリデス」
「なるほど、まだ顔色も悪い。余程恐ろしい目に会ったのだな。しかしもう安心だぞ。この御仁の側に居ればな!」
「ドーモ、アリガトゴザマス」
クレマンティーヌは絶望しか無い己の人生を呪っていた。
才能豊かな兄と比べられ蔑まれた幼少期
出涸らしちゃんと学校で虐められた少女期
過酷な任務で身も心もズタボロになったこれまで。
法国から至宝を盗み脱国してやっと自由になれると思った矢先にこれだ。
きっとこれからこの超人たちに毎夜弄ばれ飽きられ殺されて捨てられる。服に着いた糸屑の様に、ポイっと。
「ウチは世界一不幸な女や。」
ポツリと呟くその姿は何故か下駄を履いた少女の様だった。
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伝令がガゼフの元に来て告げた。
「隊長!都市長と組合長がサトル様に是非お会いして御礼を言いたいと申しております。」
「う〜む、気持ちは分かるがサトル殿たちはお疲れだ。明日にでも私から連絡するの返事をしておけ。」
「はっ!」
「勝手に断りましたが、お節介でしたかな?」
(ラッキー!いくらなんでもイベ続きでゲッソリだよ!それに都市長?組合長?誰それ?市長さんとエライさんだろ?そんな人に突然会えってどんな罰ゲームだよ、、、。俺、平のリーマンだぜ?)
「いやいや、寧ろ助かりましたよ。今夜はゆっくり休ませてもらって、そうですね、明日の昼にでもガゼフ殿に一度連絡を入れます。」
「そうですか、それは良かった。ほら、着きましたよ。今夜の宿"黄金の輝き亭"です。」
(なんちゅー名前だよ、、、ゴールデンフラッシュホテルだろ?ラブホじゃねーんだから、、、。でもタダだしな。英雄とか言われて手ぇ振ってても無一文だし。このホテル無かったら公園で野宿だし。ホームレスヒーローだし。)
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(ほう、名前は兎も角、豪華じゃん!俺こんな部屋に泊まった事無いよ。家具とかも備え付け?タオルみたいな備品?持って帰っちゃダメだよね。)
「まあまあ、ですね。父上。勿論、ナザリックの部屋に比べたら犬小屋ですが。」
(ナザリック?コイツらの国か?ダメ、ダメ、ワタシは空気、ワタシは空気)
「サトル様っ!」
勢いよくドアが開いてエンリが鈴木の胸に飛び込んで来た。
「コラっ!エンリ!」慌てるパンドラズ・アクター
「ア!すみません。あんまり嬉しくてつい、、、」
「良い良い、ンフィーレア君が心配だったもんな?会えたか?」
「ハイっ!ちょっとですけど会えました!でも嬉しかったのはそれだけじゃありません。サトル様やアクター様が無事にお帰りになられて、それで。凄いアンデットが沢山墓地に出てるって兵士の人たちが言ってて、それでお二人がやっつけに行ってるって。だから心配で。」
(あ?なんだ、この村娘は?それにチビっ子?どーゆー関係?おっと、ダメ、ダメ!アタシは空気、空気。)
「私たちも明日は見舞いに行こう。今夜はお前たちもここで寝なさい。それと、言い忘れたが、そこに居るのはクレマンティーヌ。縁あって保護している。」
(ほ、保護ぉー?いつから脅しかけられて奴隷にされんのを保護って呼ぶよーになったんだあー?)
「クレマンティーヌ、こっちはエンリとネム。カルネ村って所で襲われてたのを助けてな、一緒に旅している。」
(カルネ村?たしか、、、陽光のニグンが襲撃しに行ったはず、、、と言うことは、、、死んだな。合掌。)
「初めましてクレマンティーヌさん。エンリ・エモットです。よろしくお願いします。」
「ネム・エモットです。お姉ちゃんよろしくね。」
「ほら、クレマンティーヌも挨拶して」
「ハ、ハ、ハイッ!スミマセン、ク、クレマンティーヌトモーシマス。エンリサマ、ネムサマ、ヨ、ヨロシクオネガイイタシマス。デス。」
「様?」
「ゴホン!ク、クレマンティーヌはな丁寧な、そう丁寧な言葉遣いをするんだよ。気にするな。」
(助けられたのと脅されたんじゃ天地じゃねーかよっ!そりゃ卑屈にもなるってーの!)
「さあ、今夜はもう遅い。そろそろ寝よう。」
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エンリたちが寝静まったあと鈴木とパンドラズ・アクターは伝言を使って話をしていた。
『明日、市長とかと面会だってよ。お前、俺に化けて代わりしてくれよ。』
『父上、何を弱気な!第一、私が化けて私の代わりはどうするのです?父上は変身出来ないでしょう?幻影は無理が出ますよ?全身ですし、声もありますからね。ガゼフも同席でしょう?直ぐバレます。』
『はぁー、俺なんか自慢じゃないけど長の付く人にあったのは校長先生と課長ぐらいなんだぜ?ウチ係長空席だったし。』
『その校長とか課長は知らないですが。とにかく!ドンって構えて下さい。出来るだけフォローしますから。頼みますよ!』
『お前頼もしいなぁー、なんなのその自信。わかった。魔王ロールしか知らねーけど、明日はその応用でやってみるわ。』
『それと私たちが面会に行っている間、クレマンティーヌどうします?万が一、ニグン絡みで正体がバレる恐れがあるので連れては行けませんよ。』
『それは大丈夫。墓地から影の悪魔付けてんだ。本人には言ってねーけどさ。』
『さすが父上。その辺は抜かりありませんね。』
『まーな、対処系はバッチリがポリシーだからな。』
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「ありがとうございました!サトル様、アクター様。」
すっかり元気になったンフィーレアは深々と頭を下げた。
「良かったな。その様子だともう大丈夫みたいだな。エンリが大層心配してたんだぞ?」
「え!?エンリが!?」
「そうさ。ンフィーレアが死んじゃったら私もう生きていけない!って。そりゃあもう。」
「エンリ、それほど僕の事を、、、」
「もう!サトル様!私、そんな事言ってません!確かに心配はしたけど、、、」慌てるエンリ。
(お!いい雰囲気!やっぱな!2人はデキてる。)
「ははっ!まあ元気になったなら良いじゃないか。何も覚えて無いんだろ?」
「はい、、、突然襲われた、までは記憶にあるのですが。相手の顔とか墓地であった事は何も覚えがなくて、、、」
(よしよし。念のため記憶を消してとこうかと思ったけど酷い有り様だったし多分覚えてないんじゃないかと思ったんだよな。それに記憶操作はスゲーMP消費するんだよな。)
「じゃあ、私たちはこれから都市長に会いに行ってくる。エンリとネムはここで待っていなさい。」
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(チャンス!皆んな出掛けた!クレマンティーヌちゃん逃走スタートっ!)
その時クレマンティーヌの影ゆらりと歪みそこから悪魔が現れた。
「ピィー!出たぁーっ!」
「バカ者!我は死霊ではないわ!悪魔じゃ。」
「あ、あ、悪魔!?」
「そうじゃ。御方の命に拠りヌシを見張っておったのじゃ。御方が留守にした途端に逃走を計るとは。流石、至高なる御方は全てお見通しであった。」
「ベツニ、ニゲヨーナンテ・・・」
「黙らっしゃいっ!喝っ!」
「ヒッ!スミマセン!」
「わかれば宜しい。その素直さに免じて今回だけ見逃してやる。我は悪魔だが鬼ではないのでな。」
「・・・(鬼ってなんだ?)」
「念のため言っておくがな。もしまた逃げようとすれば、、、」
「コロサレル」
「卓球!2度目は無いと心せいっ!
「イエッサー!」
クレマンティーヌの受難はまだ始まったばかり。
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都市長私邸応接室
「サトル殿、こちらがエ・ランテル都市長のパナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイア殿、そして冒険者組合長のプルトン・アインザック殿と魔術師組合長のテオ・ラシケル殿だ。」
「ガゼフ殿、ご丁寧なご紹介恐縮です。パナソレイ殿、本日はお招き頂きありがとうございます。初めまして私はサトル・スズキ。そしてこちらは息子の」
「パンドラズ・アクターと申します。お初にお目にかかります、若輩者ですが本日はよろしくお願いします。」
(もっと猛々しいと予想していたが)
3人の"長"は同じ事を感じていた。
「先ずはお礼を言わせて欲しい。サトル殿、御子息殿、此度は我がエ・ランテルをアンデットより守ってもらい本当にありがとう。市民を代表してお礼申し上げる。」
腹回りが完全霜降り化しているパナソレイは鈴木たちに頭を下げた。
(来る時の馬車でガゼフが市長は貴族出だが市民想いの人格者だって言ってたけど、本当だな)
鈴木はもっと偉そうで上から物を言われるかと思っていたので拍子抜けしたが、パナソレイをかなり気に入った。
鈴木は営業職だった。得意先で嫌な目にあった事も1度や2度ではない。
「頭を上げて下さい。困った人が居たら助けるのは当たり前ですから。」
プルトン・アインザックは見定めていた。
組合の冒険者から話は聞いてある。彗星の様に空を舞い、目にも止まらぬ速さで剣を振るい、見た事もない魔法を使う。
全てが規格外だ。
そんなお伽話の主人公は一体どの様な人物なのか。
それがどうだ?その物腰は柔らかく信念は聖者の様だ。
テオ・ラシケルは見定めていた。
そんな魔法を使う者は帝国主席宮廷魔術師ぐらいしか知らないしまた聞いた事もない。どの様な老人かと思えば30ぐらいじゃないか!更に息子の方はまだ少年の面影を残している。ありえない、これは何かウラがある。
「「それでは、サトル殿」」
2人同時に同じ事を言おうとした。
「先ずは座ってお話をしましょう。」
パナソレイがそれを補足した。
お疲れ様でした。
エ・ランテルの3人のおじさん達。
登山道にある茶店みたいで好きです。
今回は前も後ろも短くします。
じゃあ、また。
ありがとうございました。