骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。
書き出してから分かったんですが、大変なんですね!
アレも書きたい、コレも書きたい、でもそれじゃ上手く繋がらない。
ま、単にスキル不足なんですけどね!

じゃあ、どうぞごゆっくり。


その3 汗臭い漢。

姉妹はすっかり疲れて熟睡していた。

 

妹は昼間の恐怖でうなされていたのでパンドラズ・アクターが抱き抱えている。満更でも無さそうである。

姉は鈴木に寄り掛かる様に寝ている。こちらも満更でも無さそうである。

当然、お守りの2人は不眠なので互いに何を話すでもなく、夜空を見上げていた。

 

「見てみろ、この星空!スゴイな!話した様に俺の居た世界じゃ星どころか太陽すら霞んでいたんだよ。有毒ガスでな。感動だよ、、、」

 

「良う御座いました。父上の喜びは私の喜び。これから2人で"自然"とやらも大いに楽しみましょう。」

 

「そうだな、楽しもう。4人でこの世界を堪能しよう!」

 

野に咲く花も澄んだ空気も全てが魅力的だ。

海はどうなんだろう?リアルじゃ死滅してた魚も居るんだろうか?砂漠はどうだ?リアルみたいな環境破壊の砂漠化じゃ無いぞ。自然の砂漠だ。ああ、素晴らしいな!

鈴木は飽きる事無く満天の星を見ていた。

 

ーーーーー

 

夜が明けるとエリンは1番近い街に幼馴染が居てるので行ってみてはどうかと言ってきた。

もちろん、まだ情報不足な鈴木は二つ返事で賛成する。

いくら強者だと言え無鉄砲は愚の骨頂だ。闘いは始まる前に終わっている、らしい。まあ、別に好き好んで闘う気も無いんだけどね。戦闘狂じゃねーし。

 

簡単に身繕いを済ませて、さぁ!出発!という時にデスナイトから伝言が届いた。どうやら直接は話せないが伝言では意思の疎通が可能らしい。これもチートか?

(何?馬に乗った一個小隊がこちらへ向かっている?)

 

「息子よ、客らしいぞ。言った様に早速次のイベント発生だ!」

 

ーーーーー

 

ガゼフ・ストロノーフは持って行き場のない怒りに満ちていた。

近隣の村を襲う輩から王国民たる村人を救うべく部下と王都を出立したものの。国王と対立する貴族勢力の横槍で国宝級の装備は削がれ。情報不足から救援は後手後手に回り未だ救えた村は無く、その無力感から部下の疲労も頂点に達していた。

(一体、俺は何をやっているんだ!)

焦っても仕方ない、しかし、だ。

余りにも無力ではないか。行く先々で民は殺され村には火も放たれていた。

(こんな辺境のカルネ村まで、まさかとは思うが)

もはや1人でも良かった。民の命を救いたかった。

 

ガゼフは手綱を握る手に一層力を込めた。

 

ーーーーー

 

(で?どの程度だ?)

鈴木は伝言でデスナイトから話を聞いていた。

横では姉妹が不安そうに見つめている。

 

「大丈夫ですよ。父上は今警戒にあたっている僕と連絡を取っています。あ、終わったようです。」

 

「結論から言うと昨日の兵士より多少マシなのが1人だ。朝の運動にもならんが、まあ相手をしてやるさ。お前はエリンとネムを守ってやれ。万が一があるやも知れん。エンリ、ネム。決してアクターから離れるなよ。」

 

「「ハイ!」」

 

ーーーーー

 

「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長。ガゼフ・ストロノーフである。誰か居らんか!?生き残っている者は居らんか!?」

 

「これはこれは、戦士長殿。ご覧の通りの有様で最早鼠1匹居りはしませんよ。」

物影から鈴木は両手を広げて現れた。敵意は無い事を先ずは示し相手の緊張を少しでも和らげる。

 

「これは!騎士殿とお見受けしたが?」

身構える部下を右手で制しガゼフは馬から降りた。

 

「うーん、騎士、では無いのですが、、、まあ、旅人ですよ。」

 

(旅人?下手な嘘だ。この様に見事な甲冑を身につけて旅人だ?もし仮にそうなら何処かの国に仕える身分ある騎士に違いあるまい。)ガゼフは一見して"単なる旅人"では無いと感じていた、それはその装備だけを見ても分かる。

「左様か、では旅人殿。先ずはお名前をお伺いしても宜しいかな。」

 

「これは失礼。私はサトル・スズキと言います。原因不明の事故でそこのトブの大森林、ですかな?に飛ばされましてね。途方に暮れていた所でこの騒ぎに巻き込まれたのですよ。そうだ、その時助けた子供たちが、、、。アクター!王国の戦士長殿だそうだ、心配ない出て来なさい。」

鈴木は振り返り物影に隠れていたアクターと姉妹を呼び出した。

(この村を管轄する王国の戦士長ならエンリたちに危険はあるまい。なら、プランBだ。)

「戦士長殿、こちらは我が息子のアクター。そして助けた子供たちです。

「初めましてガゼフ・ストロノーフ殿、パンドラズ・アクターと申します。」優雅に一礼する。

「あ、あの、ガゼフ・ストロノーフ様、、、わ、わたし、

わたしはカルネ村のエンリ・エモットとい、いいます。そ、それでこっちは妹のネムです。」偉い人に緊張する。

「ネムです。」なんだかよく分からない。

 

「なんと!生存者が!サトル殿、感謝する!」

村に入った時から、ここも全滅だ、間に合わなかった、と思っていたガゼフには自らが成しえなかった事をやってくれた目の前の旅人。それは恩人と言っても言い過ぎでは無かった。

 

(ほう、、見た目は脳筋マッチョだけどキチンと挨拶出来んじゃん。人助けしたんだからな。人命救助は表彰状とか貰えるって"たっち"さん言ってたし。)

「戦士長殿、どうか頭を上げて下さい。私達は偶然このエンリたちが襲われていた現場に出会しただけです。困った人が居たら助けるのは当たり前、でしょう?」

ウン、カッコイイ。鈴木はこの台詞が言ってみたくて仕方なかったのだ。この台詞に憧れてユグドラシルを続けていたと言っても過言ではなかった。

 

「困っている人、か。俺は今まで困った人を助けられていたのか?助けるどころか見て見ぬフリをしていたんじゃないか?」

平民出ながらその剣の力を現国王に見出され取立てて貰った。国王には一生かかっても返しきれない恩がある。国王の剣として死ねるのなら本望だ。

が、しかし。

本当にそうで良いのか?陛下はそれを望んでいるのか?

否。

陛下は我が剣をその警護のみに使われる言葉をお望みではない。きっとこう仰る、ガゼフよその剣は我が民の為に振え、とな。

「困った人、か。お陰で目が覚めたようだ。サトル殿のに感謝の言葉もない。」

 

「隊長っ!囲まれていますっ!」

 

ーーーーー

 

「周囲を魔法詠唱者と剣士が取り囲んでおりますっ!」

ガゼフ配下の声に再び緊張が走る。

 

「総員!戦闘準備!私が正面から突破する。敵の包囲網が崩れたらそこから退避せよっ!」

「しかしそれでは!」

「私を誰だと思っている?あの様な卑劣な連中に一歩も遅れは取らん!それよりも一刻も早く本国へ帰りこの事を報告するのだ。もう民に犠牲者を出すな、とな。」

「「隊長っ!」」

 

(うわぁ、あっついなぁ、、、コレ。ガゼフ死ぬ気でしょ。別にこいつら全滅しても構わないけど。相手はエンリやネムの言わば仇になるからなぁ。なんでガゼフたちを狙ってんのか知らんけど奴等はエンリとネムの言わば仇。ここでガゼフの首取って意気揚々と凱旋されちゃあ、俺も腹の虫が納まらないっての。)

 

「サトル殿。聞いた通りです。我々が騒ぎを起こしている間に反対側から逃げて下さい。縁があったらまたお会いしましょう、その時は一杯奢ります。」

ニヤリとガゼフは笑った。

ガゼフの部下も笑顔だ。

 

(ナニ、ナニ?チョーカッコいいんですけど?負けてらんないぞ!ココはかっこいい合戦だ!厨二病舐めんな!)

 

鈴木は自身が厨二病だと自覚があった。

一時はそれを否定していたが、最近は楽しむ余裕があった。ロールプレイバトルだと勝手に名付けて正当化していたのだ。

 

「貴殿はココで死ぬべき漢ではない。もっと民の為に汗を流すのだ。汗臭い漢になれ。」

(アレ?汗じゃないよな?血の方が良かった!でも血臭いって無しだよなースプラッターじゃないんだから。)

鈴木は失敗だったと項垂れていた。もっとキメるはずだったのにと。

 

「助太刀のお申し出はありがたいですが、エンリたちが居る。折角救くわれた命、逃げて欲しい。」

 

「心配無用。エリンたちの護衛には我が息子パンドラズ・アクターが付くので指一本触れは出来ぬ。」

 

「それなのですが父上、私に作戦があります。」

ここまで静観していたパンドラズ・アクターが意を決して言葉を発した。

「先ずはガゼフ殿たちは分散して攻撃して貰います。すると敵の大将が動くので、今度はそれを狙います。大将さえ落とせば後は四散するでしょう。それと父上、今回は私に出番を回してくださいね。」最後は何か思惑があるかの様に鈴木に目配せした。

 

「分かった。アクター、今回は任せよう。私は後方でエリンを、、、」

 

「お待ちくださいっ!」

鈴木の言葉が終わらない内にエリンが話したので、鈴木とパンドラズ・アクターは驚いた。

 

「エリン、どうしたのです?貴女らしくもない。父上の言葉はまだ終わっていませんよ?」

優しい物言いとは違い、視線は冷たく突き刺さっている。

 

(ヤバい、ヤバい、ヤバい!どしたの?パンドラちゃん?そんな怒るほどじゃないよ?目ぇ恐いよ?)

「よい。我が息子よ。どうしたエリンよ。珍しいな。構わん申してみよ。」

 

エンリは初めて見るパンドラズ・アクターの視線に恐怖した。それは兵士に襲われた時の恐怖とは違った。あの時、兵士は自分を人間の女として見ていた。だが今の目は自分たちを虫や石ころを見ているような、そんな無機質な目だった。

 

「さ、エンリ。父上のお許しも出ました。続けなさい。」

 

パンドラズ・アクターの目が元に戻ったのを確認してエンリは話を続けた。

「今襲って来ているのはお父さんやお母さんを殺した人たちですよね?だったら今度は戦いの場に居させて下さい。お役に立てないのはわかっています。でも、もう逃げて隠れてはイヤなんです!強い者からコソコソ逃げて生きるなんてもう嫌。折角助けては頂いた身で我儘ですが、連れて行って下さい!お願いします!」

 

(ほう、強い娘だとは思っていたが。ここまでとはな。ひょっとして何かスキルでも持っているのか?もしくは職業か?)

 

 

「フフ、実はな、エンリ。私も我儘なのだよ。良かろう!覚悟あるならついて参れ!」

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

本文が3900字なのに後書き2000字ってなんだ?って感じです。
書きたい事は本文に書きましたので、ここには読んで下さった方々へ謝辞を。

また次回もお付き合い下さい。
ありがとうございました。

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