ここ数年、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表される米国のグローバルIT(情報技術)企業の活躍ばかり目立ち、日本企業は元気がありません。米国の力の源泉は、リスクを負ってベンチャー企業を立ち上げる起業家たちであり、彼らが起こすイノベーションです。
米国では毎年、何千何万というベンチャー企業が生まれ、そこに優秀な人たちが集まり、一獲千金を狙った投資家たちのお金が流れ込みます。そして、「1000社に6社しか生き残れない」と言われる壮絶な戦いを勝ち抜いた企業の創業者や社員たちが、上場や買収により莫大(ばくだい)な富を手に入れ、さらなるチャレンジを試みたり、次は自分たちが投資家になったりする。そんな「価値を生み続けるサイクル」が米国の強さなのです。
日本にも元気の良いITベンチャーは存在しますが、どれもグローバル企業と呼ぶには程遠く、大半が、ガチャ・FX(外国為替証拠金)取引・暗号資産(仮想通貨)などの「手っ取り早い金もうけ」に走るつまらない企業になってしまっています。
忘れてはならないのは、今や大企業となって世界で活躍している、パナソニック、トヨタ自動車、ソニー、ホンダなどの日本企業も最初は名も無いベンチャー企業だったことです。ビジョンを持った創業者が、様々なイノベーションを起こして世の中に価値を提供したからこそ、世界で活躍することができるようになったのです。
「次のチャンスはどこにあるか」を常に意識
私は仕事柄、日米両方のビジネスパーソンと仕事をしています。そこで感じる一番大きな違いは、「当事者意識」の有無です。
米国で活躍している人たちは、そもそも、いつまでも同じ企業で働こうとは全く考えていないので、会社に対しても常に「この会社で働いていて大丈夫か?」「この経営者・上司に付いていって大丈夫か?」という厳しい目で見ています。また、自分のキャリアパスを常に意識しており、働いている会社内でのポジションはもちろんのこと、業界全体を見渡した上で、「次のチャンスはどこにあるのか」を探しています。
私がマイクロソフトの本社で働き始めたばかりの1990年ごろ、同僚の一人が「自分は2年後ぐらいにマイクロソフトを辞めて自分の会社を作るのが夢だ」と堂々と語っているのに驚きました。米国では、それが当たり前なのです。
私自身も、その後マイクロソフトで部下を持つようになりました。一番気に入っていた部下が会社を辞める時、「私は何年後かにはマイクロソフトを辞めてベンチャー企業を立ち上げるつもりだけど、その際には誘うからよろしく」と声をかけました(そして、実際に会社を作った時には一番に雇いました)。
逆に、役に立たない部下に対しては、「私の部署では君のことをもう必要としていない。他の部署に仕事が見つけられるなら移ってもよいけど、そうでなければ会社を辞めてもらうことになる」と言い渡したこともあります。
つまり、米国の企業で働く人は、「役に立たなければいつでもクビになる」という緊張感を持ちつつ、同時に「他により良いチャンスがあれば転職する」ことを常に考えているのです。
また、優秀な人たちほど、「いつかは一緒に働きたい」と思える人のネットワークを会社の内外に持っており、転職や起業の際にはそれを最大限に生かすのです。
コメント9件
けーしー
同じ今日の、興味のない仕事をどうやって部下にさせるかを説いたコラムと対極にある記事で、NBOもなかなかやるな、とにんまりさせられましたW。
BANDIT
「サムライ経営者、アメリカを行く!」 こういう人もいますよ。
Latebloomer
こういうのは言いにくいですが精神論ですね。元凶は過去最高といわれる大企業の内部留保かと思ってます。利益を社員に還元しないから景気が良くならず本当はダメでも内部留保があるから生き延びてしまう。大企業は安泰だから優秀な人材も入社し牙を抜かれる。
この悪循環ではないか。逆に動くと飛び出し色々回ると思いますよ。日本IBMは出戻り歓迎らしいです。ほかを知っていることはプラスととらえる。しかし一般的な大企業はゼロではないにしろ冷遇されるのが普通ではないか。東西冷戦時の捕虜みたいな...続きを読むZED
鍵は解雇規制の緩和(撤廃)でしょうね。
米国の労働者が常に「そういう姿勢」でいるのも、いつ解雇されるか分からない緊張感があればこそでしょう。解雇による生活不安が無ければ緊張感が生まれないのは人間心理として当然です。
雇用の流動性が上がるのは
、被雇用側も含めてメリットが大きいと感じます。...続きを読む読者の端くれ
以前にいた会社は(古い、と言われる方の)日本企業でしたが、社員を相対評価した上で下側を切ってましたけど。
コメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
日経ビジネス電子版の会員登録