ペロリ
失敗の原因:そもそもふざけて数行書いてみただけ。
ペロリ
ペロリ、ペロリ
ペロリ、ペロリ、ペロリペロリ
「お前……なにやってるんだ?」
「空気を舐める練習だ」
「意味不明すぎる。こいつは短編だ。一文字一文字が黄金のごとく大事なのだ。もうちょっとなんか意味あることをしろ」
「馬鹿かねお前は!? ギャグ短編にどんな意味があるとでもいうのか!? はっ! バカバカしい! なんの意味があるものか!」
「ちょっとまて、その発言は俺達の存在に意味が無いということになりはしないか?」
「そうだ。その通りだ! さぁ、お前もいっしょに空気をなめる練習をしよう!」
「断る! せめてもうすこし意味のあることをしよう。俺達の生きる短い時間をせめてなにか意味あることにしようぜ」
「お前は馬鹿か! 意味があるギャグ短編などあると思うのかね!?」
「あるかもしれないじゃないか。あるいは、ギャグと見せかけてすごく真面目な話に展開するという方法もある」
「お前は馬鹿か! そんなことをしてはいけない。看板に偽りありは我々の信条に反する!」
「じゃあ、どうしろというんだ」
「お前も一緒に空気をなめる練習をするんだ。これをしつこく繰り返せば寒いネタがひとつできあがりだ。これで僕らの義務は果たしたことになる」
「そんな意味のないことでこの短い人生を終わらせる気はない! もっと意味のあることをしよう。幸いここは短編だ。世界設定も白紙な上に人物設定も俺たち二人以外はまだ定義されていない。俺たちで舞台を作ってやろうぜ!」
「お前はギャグ短編の登場人物にあるまじき真面目なやつだな。だがしかたない。そういうなら手伝ってやろう」
はるか遠くから、家々の連なりが超高速ベルトコンベアーで運ばれるように移動してきて、二人の両脇まできて停止した。
白い地面に道や白線が浮き上がり、目に見える速度で草がのび、標識までもにょきにょきと生えてきた。
さらに空から様々な格好の老若男女が自由落下速度で地面まで落ちてきて、地面にあたると立った姿勢や歩いている姿勢のまま静止した。
「へい、れっつぱーりぃぃぃぃ!!」
男Bがそう叫ぶと、とたんに町の中に喧騒が満ちて静止していた人々が動き出した。
あっという間に地方都市の商店街といった舞台が完成した。
「ちょっとまて、なんでお前にそんなことができるんだ」
男Aが怪訝な顔をした。
「お前も自分で行ったじゃないか。短編故に設定は空白だ。僕には舞台設定能力があるということにしたんだ」
「なんだと、お前、そんなことが……。じゃあ、俺はキャラクター作成能力があるということにしよう! これで本当にいいのか!?」
「いいんじゃないのか?」
「よし、じゃあ綺麗な黒髪ロングヘアで美人で笑うとえくぼがかわいくて身長が165cmくらいの22,3の女よ来い!」
そのまんま目の前に現れた。
ただ、まだ頭がはっきりしていないようでぼーっとした表情で焦点が定まっていない。
「うをおおおおおおお!!!」
男Aは興奮した声を上げた。
「これはすごい! これはすごいぞ! おい、ギャグなんかやめだ! ここからハーレム世界をつくろう!」
「なんだよ、意味があることをしようとか言っていたくせに」
「いや、せっかくの短い人生だ。おもいっきり楽しもうぜ! ということで、ハーレムな舞台設定を頼む」
「本気か。まぁ、それもおもしろいか」
(文章はここで終わっている)
解説:遥か彼方の記憶なので曖昧ですが、たしかなんにも考えずに「ペロリ ペロリペロリ」と書いていたらできてしまった作品。作者自身も「どういう展開するのかなぁ」と主人公二人に勝手にやらせていたのですが天地創造に乗り出して主人公二人が盛り上がっているところで「なんかありがちなハーレム展開になりそうだ」と一気に書く気が失せました。「生きている間(短編が続く間)に意味があることをしよう」と言っていた主人公の予想よりも早く終わってしまいました。ちょっと気の毒な気がしてきました。