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失敗短編作品 投棄場 作者:唯乃なない
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ナンセンス短編 「イカスルメトリプルゲソミックス」

失敗の原因:何も考えないで書いてみた結果、オチも何も思いつかず宙ぶらりんになった。


夢を見た。


天使の夢だ。


……でも、全然神秘的ではなかった。


「へい兄ちゃん、日常に退屈かい? いいねぇ、地球の裏側じゃ飯にも困ってる奴らが大勢いるって言うのに、飽食に埋もれ怠惰な生活を送り、それで退屈とはねえ」


 しゃべっている肌色の物体は、天使のわっかと羽がある小さな子供のような姿をしている所からして天使であろう。

 しかし、どういうわけだかサングラスをしてココアシガーレットをくわえている。

 時々、本物のたばこのようにぷはーぷはーっとやっているが、どうみてもココアシガーレットだ。


「だがまぁ、おらっちは別に説教しにきたんじゃぁねぇ。あんちゃんの退屈を解決してやろうと思ってきてやったんだ。感謝するんだぜい?」


 夢のなかなのでふわふわしていて、自分がどういう状態なのかもわからない。

 が、とにもかくにも天使の格好に突っ込みを入れたかったのだが、声がでない。

 声が出ない設定の夢なのか。


「そうだなぁ。奇跡を起こしたいときは『イカスルメトリプルゲソミックス』と叫ぶこった。じゃあな。忘れるんじゃねえぞ。『イカスルメトリプルゲソミックス』だ」


 なぜそこまでイカにこだわる!と突っ込もうとしたが、声が……声がでない!

 ちくしょう!


と、ここで目覚ましがなって目が覚めたのである。


*************************


「あ~変な夢だった」


 学校への道すがら、あの変な夢を思い出した。


「なんかへんな呪文を言っていたな……。ま、いいか。夢だし」


 学校は町のなかにあるのだが、町からちょっと離れると田園が広がる。

 まぁ、田舎は田舎なのだが、町と田園が半々に見えてなかなかよい景色である。

 新緑が美しい。


「春だなぁ……」


 後ろから自転車の音が聞こえると思ったら、すっと横を駆け抜けていった。

 ふとみると、クラスの女子である。

 風に制服のスカートが揺られながら、颯爽と走っていく。

 そりゃ歩きの俺がここをのんびり歩いていられる時間である。自転車なら急ぐ必要もなく余裕の登校であろう。


「なんだっけなぁ、あの変な呪文。イカ…スルメ……ミックス?」


 思い出せない。


(イカ!スルメ!トリプル!ゲソ!ミックス!だ!馬鹿たれ!)


「!? ……びっくりした本当に声がしたのかと思った。ただの気のせいだよな……。まぁでも、なになに? 『イカスルメトリプルゲソミックス』? 我が夢ながらなんでこんなイカづくしなのか」


 その瞬間!!


「……ま、なにも起こるわけないよな。ばからしい」


 が、なんかちょっと叫びたくなった。

 普段テンションが低い分、時々突発的にテンションが高いことをしたくなるのである。


「イカスルメトリプルゲソミックスーーー!! なんか楽しいこと起これーーー!!」


 叫んでみてから、は!っと我に返る。

 キキー

 っと音がして前を走っていた女子が自転車を止め、こちらを振り向く。

 うわ、気まずい!!

 さらに自転車を手で押しながら、怪訝な顔でこちらにやってくる。


「あ、いやいや、なんでもないって……」


 クラスの女子……というか太田さんは目の前までやってくるとニコっと笑った。


「ふふ。山田君で意外とおもしろい人なんだね」


「え、そう?」


「うん。もうちょっと堅くて話しかけにくい人かと思ってた。ふふ」


「いや、え、あはは……」


 あれ、なんかいい感じだぞ?


「そういえば、山田君英語の成績いいよね? どういう勉強してるか教えてくれない?」


「え、そうだなぁ。別に塾とかに通ってるわけじゃないから我流なんだけど、とにかく英語の映画をみてなんとなく英語の感覚になれちゃうのがこつと言えばこつかな?」


「へぇ、そうなんだ? 今度よさそうな英語の映画紹介してくれる?」


「う、うん」


 あぁ、天使さんありがとう。

 奇跡が起きたよ!

 女の子と会話するなんて何ヶ月ぶり……うぅ!


「私、国語系は割と得意なんだけど英語が……」


 ボン!

 唐突に、太田さんの頭が爆発し、アフロになった。


「は………?」


 爆発から少し遅れて、自分の口からそんな言葉が出た。


「…………」

「…………」


 無言の間がしばらくあって、太田さんが足を止めた。

 そして、無言で自分の頭を触る。


「…………え? え? え?」


 太田さんが混乱した様子で自分の髪を何度も触る。


「な、なにこれ!?」


「あ、アフロ……」


「な、なに? なんなの!? え、え、意味わかんない」


「ア、アフロ!! アフロになってるよ! あ、別になんかぶつかったとかじゃないから怪我の心配はないと思うけど……」


「なにこれ!? なにこれ!?」


 自分も太田さんも混乱の極み。

 まさかこれがさっきの呪文の効果!?

 いやそんなまさか!?


*************************


「……で、太田さんは病院に行くっていったん家に帰ったんだ」


「へぇ、いきなりアフロねぇ。ってお前そんなこと信じられるか?」


「そんなこといっても本当なんだから・・・俺も訳がわからないけどな」


 学校の休み時間、そんな話をしている相手は腐れ縁の祥一だ。

 気楽にショーと読んでいる。


「で、もしかしたら、もしかしたら……なんだが、馬鹿にするなよ?」


「なんだ?」


「もしかしたら魔法の呪文のせいかもしれない……」


「はぁ!? 今日のお前はいつにもまして電波だなぁ。別にいいけど、太田さんをネタにするなよ。俺結構好きなんだから」


「いやいや、アフロの件はまじなんだよ! 本当にいきなりなったんだからな!」


「いい加減しつこいっての。もうちょっとましな冗談考えてこいよ」


「く……お前、後でないてもしらんぞ!? 魔法の呪文唱えるぞ!?」


「唱えたきゃ唱えろよ。あんまりおもしろいネタじゃないぞ」


「く……」


 ふと何が起こるかわからないという危険性が頭をよぎったが、ショーに目に物見せてやりたいという思いが勝った。


「い、いか……イカスルメトリプルゲソミックス!!」


 小さい声だと効果がないらしいので、中くらいの声で発音してみた。


「なんだそのわけわからんの」


 ショーがゲソーっという顔をする。


「ま、魔法の呪文だ!」


「ならもうちょっと気の利いたの考えてこい。なんでそんなイカづくしなんだよ」


「それは天使に聞いてくれよ。俺が考えたんじゃないんだから」


「はぁ!?」


「……おかしい、なにも起きない」


「そりゃそうだろ……」


 と、ショーが後ろを振り向いた瞬間、ショーの髪がゆらゆらっと揺らめいた。

 これは!?


「ほら!ショーもアフロに……あれ?」

 ショーの髪がざーっと長くなったかと思うと、ショーの輪郭全体が一瞬揺らいだかと思うと体型が一変した。


「…………」


「ん? なんか? あれ、声が……? お、おぅ? なんだ、なんかおかしいぞ!?」


 ショーが振り向くと、


「…………」


 いや、認めない。

 さすがにこれはない。

 現実としてありえない。

 夢だ。夢だ夢だ。


「お、おい、山田。なんかおかしいぞ?」


「大丈夫だ。さすがにこんなことはあり得ない。100%夢だ。気にすんな」


「おい、ふざけてるんじゃない……どうなってるんだ??」


「いや、ありえないありえない。これはありえないから。いきなりショーが女になって、しかもむやみに美人で胸もあるとかありえないから。それはありえないから。アフロになるぐらいは許容してやるけど、いくらなんでもこれはない。理不尽すぎる。夢だ夢だ。ないないないないない。目よ覚めろ」


「女……? え、ええ!?」


 この瞬間からクラス中が大騒ぎである。

 そりゃそうだ。


(文章はここで終わっている)




解説:ナンセンスな呪文で頭がアフロになった変な光景が頭に浮かんだのでそれを文章にしたものの、それ以降同じようなネタを列挙してもつまらないなぁと筆が止まった作品。短編を書く場合、やはりオチを考えてから書かないとどうにもならんと思い知りました。長編だったらだらだらやれないこともないと思うのですが、突飛なものは伸ばすと薄味になるので長編にする気はありませんでした。そんなわけでゴミに出します。


教訓:短編はオチの目処を付けてから書きだそう。

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