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失敗短編作品 投棄場 作者:唯乃なない
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リアルなRPG プレイ日記

失敗の原因:ネタ切れ

0日目

今度、ものすごく手の込んだRPGがでるというのでものすごく楽しみにしている。

グラフィックもすごいし、フルボイスだし、なによりものすごいマルチシナリオらしい。

なんでも、友達が言うには1兆通りを超えるとか・・・。

まぁ、そいつはさすがにないだろうけど、とにかく今までにないRPGだと友達が言っていた。

ちょうどハードも持ってるし、発売が楽しみだ。


開発者一言:たとえばA地点からB地点までのシナリオが20通り、B地点からC地点までのシナリオが18通りなら、結局A地点からC地点までのシナリオが360通り。このように掛け算的に増えていくので本当に1兆通り以上あります。って、本当は10の80乗オーダーだったと思うけど・・・。(0が80個続く数字。一兆はゼロがたった12個)




1日目


ついにそのRPGが発売になった!!

予約しておいたのでスムーズにゲット完了。

早速プレイしてみる。


・・・って、なにこれ!?

名前が自分で決定できない。

かといって固定でもない。

新規ではじめるたびにランダムで名前が決まるらしい。

でも、それを知ったのは長いオープニングを終えた後。

いまさら、はじめなおすのも面倒だ・・・。

今の名前は「フトン」。

・・・布団?

やっぱやり直そう。


開発者一言:自分の名前とは親が勝手につけてしまうもの。自分に選択権はありません。



2日目


結局昨日はまともな名前が出るまでリセットし続けて、疲れてやめてしまった。

でもとりあえず、まともな名前だけは手に入れた。

「ノクト」

他に出たのはむちゃくちゃ長いのやふざけてるような名前ばかりだった。

40文字あるのとか、「アイウエオ」とか・・・。

アイウエオはないだろうアイウエオは・・・。

名前を決めるのにここまで苦労するとは思わなかった。

で、始まっていきなり(ゲームの中の)母親にフルボイスで怒られる。

それをバックにスタッフとかの名前が流れる。

なんていうオープニングだよ。

たしかにグラフィックはむちゃくちゃ綺麗だけど・・・というか、そこまで念入りに母親のしわを再現しなくても・・・。

しかも、怒ってるいる内容が「毎日仕事もせずにぶらぶらして・・」とか。

え、俺ってニート!?


開発者一言:硬い仕事をしている人は冒険になんて出かけたりしませんからね。




3日目


今日はいきなり、父親に殴られて、主人公ノクトが村を出る決意をしちゃった。

「親父の顔なんか見たくねぇ!」

だって。

なんでそんな情けない決断の仕方なの!?

普通、世界を救うためとかじゃないの!?

しかも、その勢いで装備品もそろえずに村を飛び出しちゃったよ、おい!

どうするんだろう・・・


開発者一言:世の中、勢い余って後で後悔というのはよくあることです。




4日目


村を出てすぐの森に入ったら、いきない狼に襲われた。

このRPGはリアルさを追求するために、戦闘もターン制ではなくいわゆるアクション系だ。

さすが大作だけあって、狼は毛並みも顔つきも本当にリアルで驚いた。

ただ・・・・・ありえないほどつよかった。

素手で立ち向かおうとしたら、とたんに腹に突っ込まれて倒されて、そのまま立ち上がる暇もなく狼の群れに食われた。

食われていく様子があまりにリアルで吐き気を催した。

って、なんなんだこのゲームは!!

これはどうやっても勝てないぞ!!


開発者一言:丸腰で猛獣のいる森に入るなんて、自殺に等しい行為に決まってますよ。



5日目


今日は武器を買っていろいろ工夫してなんども狼と戦ってみた。

でも、どうやっても勝てない。

絶対に噛み付かれて、動きが鈍ったところをやられてしまう。

数十回試したが結局だめだった。

ゲームバランス最悪だぞ!?

どうやってすすめればいいんだ??


開発者一言:リアルさが売りなので、ゲームバランスは現実に即してあります。



6日目


しかたがないので、攻略本をチラ見して、街からときどき出るという荷馬車を待つことにした。

しかし、まっている間に空腹度が上がっていき倒れてしまった。

しかたがないので、お店でパンを買おうとしたらお金が足りない。

そしたら、パンを持ったままカウンターに行かずに店を出られることを発見した。

バグか!? と思ってうれしくなって何度も繰り返していたら、突然店主に見つかってタコ殴りにされた。

盗めるけど、みつかったおしまいらしい。

店主に殴られた後、いろんな人にフルボイスで軽蔑に満ちた言葉を浴びせられた。

声優さん、そんなに感情満ちた声でののしらないでくれよ、結構心が痛むんだけど。

ゲームなのに、本当に悪いことをしたような気になったじゃないか。

とにかくひどい展開になったのでロードしてやりなおした。

一個だけそうっと持ち出して空腹をすこしだけ回復させた。

このゲーム、なんでこんなにセコセコしなきゃいけないんだ?


開発者一言:一人で生きていくのはつらいものです。


7日目


なんとか、荷馬車に乗ってとなり街に着いた。

よし、なにかイベントが!!

・・・と、思ったら何も起きなかった。

どうなってるんだ、このゲームは!!

たくさん家があるけど、どれも戸締まりがしっかりしていて入れない。

入れるのは教会やお店だけらしい。

しかも、盗むのがより難しくなっていてほぼ不可能。

お金もないし、働き口もないし、買い物もできないし、お金がないと移動もできないし、なんだよこの無理ゲーは。

本気でやる気をなくした。

ディスクたたき割ってやる!!


開発者一言:説明書を読みましょう!



8日目


今日も町中をうろうろしていたが、どうにも埒があかない。

ふと、人に話しかけたときに時々へんなアイコンが出ることに気づいた。

どうやら、その時に左右の方向キーでいろんな行動が選べるらしい。

マジかよ・・・。

それを知らずに俺はよくここまで進んでこられたな。

どうやらこれで自分を展開を切り開いていくらしい。

なんだ、おもしろいじゃん。

って、あれ「金品を脅し取る」「物乞いをする」って・・・もうちょっとましな選択肢はないのか!?

何人かに話しかけてみて、やっと「仕事を探す」という選択肢がでた。

そしたら、何か仕事をくれるのかと思いきや「鉄くずを拾ってあそこの店に売ればいい」とか言われた・・・。

グラフィックが凄い、キャラの動きも凄い、フルボイスも凄い、音楽も凄い、効果音もものすごくリアル。

・・・なのに、やってることは鉄くず拾い。

たしかに、鉄くずを拾う音とか毎回違ってものすごくリアルだ。

って、力を入れるところが間違っているだろう!?


開発者一言:がんばりました。



9日目


鉄くず拾いを永遠とやること、ゲーム時間で2週間。

自分で自分をほめたくなった。俺は偉い!

正直、リアルでやってるコンビニバイトのほうが楽だと思えるような内容だった。

土の中に埋もれてる鉄くずを長い時間かけて必死に掘り出したら、ものすごく小さな鉄くずだったり。

あのときは正直心が折れそうになった。

それでも続けた俺は相当偉いと思う。

でも、毎日食費で結構な支出があって、なかなかお金が貯まらない。

壮大なRPGのはずなのに、なんでこんなにちまちましないといけないんだろう・・・

あともうちょっとでナイフが買える!

ナイフが買えたら、冒険にでてこんな生活ともおさらばだ!


開発者一言:新天地でスキルもなにもない人間が食べていくのは大変なことです。



10日目


ついにナイフを手に入れた!

毎日食べていたりんごの皮もむける!

肉を切ることもできる!

すげぇ!

でも、回復HPは変わらないようだ・・・

まぁいいや

とにかくもう一度森に挑戦だ!!

・・・ってなんだこれ!?

全然歯が立たない・・・。

やっぱり獣にたこなぐりにされる。

どうするんだよこのゲーム

くそゲーすぎる。


開発者一言:そんな簡単に獣に勝てるわけがありません。



11日目


正攻法ではこのゲームは進められないようだ・・・

今日、俺は初めて悪いことをした。

人混みでスリをした。

何度か失敗して、ロードを繰り返したが、ついに成功した。

よし!!

と、思って財布をみたら、15G・・・??

なんか、俺の持ち金より少ないんだけど・・・逆に凹むわ

盗んで申し訳ない気持ちがしてきた・・・

しかも、中からポイントカードとかお守りとかいろいろ出てきた。

盗んだ相手の家族の写真なんか出てきたときにはなんともいえない気持ちになった・・・

って、ちょっとまて!?

このゲーム、力入れるところ完全に間違ってるだろ!?

ストーリーはどうなってるんだーーーー!!!!!


開発者一言:ストーリーを切り開くのはあなた自身です!



12日目


その後、セーブロードを繰り返しながら何度かスリを成功させた。

だんだんスリのスキルがレベルアップしていくのがなんとも・・・

それに、うまくスルと鉄くず拾いの数週間分を手に入れられることが分かったので、もうやめられない。

人はこうやって墜ちていくのだろうか・・・

そして、スリをつづけてついに10000Gを超えた。

喜んで装備を買いに行ったら、親父に「そんなお金どうしてもってるんです?」と怪訝な顔をされた。

あまりに気まずくてそのまま出てきてしまった。

どうしてこのゲームはこんなに苦しまないといけないんだ・・・

全く楽しくないんだけど


開発者一言:リアルさを追求した結果です



13日目


もう吹っ切れた。

こんな世界など無茶苦茶になってしまえ!

そう思って、剣を奪って町中で振り回した。

おばあさんに当たって、倒れて、血を出して「痛い痛い。苦しい苦しい」と叫びながら痙攣して動かなくなった。

今だからいえる。声優さんすごすぎ。

遠巻きに見ている野次馬と、「おばあちゃん!おばあちゃん!」と叫びながら駆け寄ろうとしている子供とそれを必死に止めている母親の姿が見えた。

なんでこういうところを力入れて作るんだろう・・・


開発者一言:開発者一同、心を込めて作りました。




14日目


さすがに昨日のプレイはセーブせずにやり直すことにした。

かといって、まともなことをしてお金を稼ぐのは難しいし、森に行ったら獣に食われるし、関所をでる移動にも旅券がいるらしい。

これじゃ、八方ふさがりでどうしようもない。

と、あきらめかけていたら、闇市で旅券を発見した。

これだ!と即座に買って馬車に乗ろうとしたら、「偽物だろ!帰れ!」って兵隊に3回ぐらい殴られた。

とんでもない勢いでHPを削られて、もう少しで死ぬところだった。

いくらなんでも強い力で殴りすぎだろ!

くっそ~


開発者一言:統治者が親切とは限らないのが世の常です。


(文章はここで終わっている)


解説:何年も前の作品(未公開)。ネタ一本で始めたものの、ネタが尽きて終わってしまった作品です。「リアルなRPGを追求した結果、アンバランスなRPGになった」という所がポイントなのですが、10日目ぐらいのあたりから限界が見えて14日目で次が書けずに終わっています。続きを書きたいなぁと思わなくもないのですが、最近RPGとかプレイしていない自分ではこれ関係のネタが出てきません。続きを書くのは難しいのでゴミ捨て場に投棄します。



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