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地上最強のスマートフォン

作者:唯乃なない


 とある大会社の社長室に、新製品の開発部長がやってきた。


「失礼します」


 その姿を見た社長は顔を歪めて悲鳴を上げた。


「むっ……き、君は!? 今度は一体何事だ!? もうモバイルバッテリーは開発しないぞぉっ!!」


「はぁ……あれは残念でした。わずか800台生産したところでラインを止められてしまいましたから」


「当然だ! 我が社にどれだけの損失を与えたと思っている!」


「そうですね。首がつながっているのが奇跡だと思います」


「わ、わかっているなら……」


「ということで、また新製品を作ってきました」


「き、君! どういう思考をしているのかね!?」


「ええ、ここは攻めどきかなと思いまして」


「ま、待ちたまえ! また勝手にラインを組んだりしていないだろうな!?」


「大丈夫です。自律移動型モバイルバッテリーで痛い目にあいましたので、試作だけで止めてあります」


「ふぅ……よかった……」


「さて、前回『地上最強のモバイルバッテリー』を無事製作できました。残念ながら量産は止まってしまいましたが……」


「当たり前だ! まだ凝りてないのかね!?」


「やはり次はスマートフォンだと思いました。そこで今回の試作品は『地上最強のスマートフォン』です」


「む……ま、まぁ、試作品だけならば……」


「なぜそのような渋い顔をされているんでしょうか」


「君、前回のアレを見た私が、君の開発したその最強のスマートフォンとやらに期待を込めて笑えると思うかね」


「ご安心下さい。今回はよりどりみどり、きっと社長の気に入るスマートフォンがあるに違いありません」


「よ、よりどりみどり!?」


 開発部長が合図をすると、色々なものが載せられている台を次から次へと社長室に運び込まれた。


「な、なんだねこれは!?」


「今回開発したスマートフォンたちです」


「な、なん……なんという……なんだ、この試作数は。毎回思うが君たちの開発力はどうなっているのかね!? 君の部隊は人数もそんなに居ないというのに」


「ええ、変わったものになると、全員並外れたパフォーマンスを発揮するんですよ」


「もっと普通のものでそのパフォーマンスはでないのかね」


「でません。『最強』や『無敵』みたいなキーワードがないと誰も動きませんね」


「そ、そうなのかね……」


「しかし、凄いでしょう。この短期間でこれだけの試作品を作るというのは。こんな人材なかなかいませんよ」


「悔しいがそこだけは同意しよう。アグレッシブな人材は宝だからな」


「そうです。しかし、莫大な種類のパーツを協力会社に特急料金で作らせているので、開発費用もとんでもないことになりますが」


「んんっ!? 私はそんな巨額の開発を許可した覚えは無いぞ!?」


「まぁまぁ。こちらが最初に考案した最強スマホになります」


 開発部長は大きな金属製の品物を指差した。

 30cmx20cmほどの物体で、中央に普通の5インチ程度の画面がついている。


「なんだこの鉄の塊は」


「やはり最強といえば『殺傷能力』ということで、鈍器として活躍するスマホを作ってみました」


「なん…………」


「重量は約8kgあります。これだけあれば横綱でも殺れますよ」


「なにを物騒なことを言っているのかね!?」


「しかしたったひとつ問題がありまして」


「一つ? 本当に一つかね?」


「ええ、一つだけです。全体が金属ですので内蔵したアンテナが機能しないのですよ。さすがにモバイルネットワークやWiFiにつながらないスマホは使えませんからねぇ」


「そういう問題かね!?」


「これは諦めまして、部員全員で考え直しました。そして『音』に着目しました。今やスマホには画面の美しさだけでなく音質の良さも重視されます」


「そうだね。それはよい。しかしその後ろにあるおおきなスピーカーは何かね。まさかそれがスマートフォンだと」


「さすが社長、察しがいいですね」


 開発部長は自分の後ろの物体に目を向けた。

 高さ1m、横40cmほどのスピーカーである。

 そして、その上に5インチ程度の画面がついている。


「なかなかいい出来ですよ」


「どこがだね……?」


「ところがまた一つだけ問題がありまして、一つのスピーカーでは音の広がりがイマイチなのです。しかし、スピーカーを二台となりますとなかなか持ち運びに難があります」


「ま、待ち給え、今の状態でも十分に持ち運びに難があるとは思わないのかね?」


「しかし最高の音質のためには携帯性は犠牲にせざるを得ません。スピーカーだけでなくパワーアンプやバッテリーも内蔵しているんですから無闇に小さく出来ませんよ」


「あ、頭が痛くなってきたな」


「ということで暗礁に乗り上げてしまいました。最強の音質をめざしているのにモノラルスピーカというわけにはいきませんからね。一つの筐体に左右のスピーカーを内蔵する案もありましたが、それでは音の広がりが悪くて最強とはいえないですから」


「そ、そうかね……」


「そこからしばらく開発チームも迷走しましてね」


「私には最初から迷走しているように感じるのだが、これは気のせいかね……?」


「音つながりで最強の『音量』を目指そうと思ったのですが、これもイマイチでしてね。『象も倒れる大音量!』をキャッチコピーに売り出そうと思ったのですが……」


「だから君たちはどうしてそんな極端なのかね!? そんな大音量を誰が求めているというかね!? 普通に聞きやすい程度の音量で良いだろう!」


「我々はそんな生ぬるくないですよ。しかし、どうがんばってみてもなかなか象は手強くてですね。試作品でガラスぐらいは割れるんですけど」


「き、君たちか!? 3ヶ月前の新規テクノロジー開発棟の原因不明の騒音と、北側の窓ガラスを割ったのは!?」


「象も失神しない程度の音量ではインパクトがないと全員やる気を失いまして、次に考えたのは最強の『バイブ』です。ガラケーと比べてスマホのバイブは軒並み弱くなっていますから、ここでバイブが強い製品が出ればインパクトがあると思ったんです」


「少しは視点が変わったか……。なるほど、考えはわからないことはないが……」


「そこで『骨が砕ける勢いのバイブレーションをするスマホ』を目指して開発を進めたのですが……」


「ま、待て、ど、どんな頭の持ち主がそんな発想をするのかね!? 誰がそんなものを欲しがる!?」


「ええ、田淵が『そんなものがあったら絶対に欲しい』と言っておりました」


「また例の男か!」


「しかし、さすがにそこまで強く振動すると本体が自壊してしまいまして、電池も破損して発火しますので大問題になります」


「そもそも骨が砕ける勢いのバイブなど……っ! う……ふ、不整脈が……」


「いろいろ右往左往した挙句、結局『バッテリーが長持ちするスマホが最強』という結論に落ち着きました」


「う……うぅ……ふ、ふぅ……。き、君たちにしてはまともなところに落ち着いたじゃないか」


「その案で開発した一号機『デュアルスマホ』です」


 開発部長は二台のスマホを指差した。


「ん? これは普通のスマホとどう違うのかね?」


「二台セットです」


「どういうことかね」


「二台持ち歩いて、まず一台目を使います。一台目のバッテリーが切れたら二台目を使うのです。既存の製品を2セットにして売るだけです。売り上げが二倍ですよ」


「ふざけているのかね? 残念ながら真面目なのだろうな」


「ええ、もちろんです。こちらが『トリプルスマホ』です。売り上げが三倍になります」


 開発部長は3台のスマホを指差した。


「そうかね……まぁ、変な試作品をつくるよりはマシといえるか……」


 社長は頭を抱えた。


「しかしやはり使いにくいということになりまして」


「それはそうだろうな。気がついてくれて私も嬉しいよ」


「そこで発想を変えました。気楽にバッテリーを変えられれば実用上よいと思いまして、乾電池式のスマートフォンをつくりました」


「おお、なるほど」


「ただ、まともな容量にするためにはそれなりの本数が必要でしてね」


 開発部長は台の上の黒い物体を指差した。

 上から見ると普通のスマートフォンのようだが、横から見ると高さが10cm以上ある。


「な、なんだねその大きさは」


「単三電池を18本搭載しているので、これくらいの大きさになるんですよ。一般的なスマホの二倍は電池が持つんです。すごいでしょう」


「その大きさでたった二倍かね……?」


「無茶言わないで下さい。乾電池とリチウムイオン電池じゃ勝負になりませんよ」


「なぜ作ったのかね……」


「我々もそう思いまして、リチウムイオン電池を使用した製品を作りました」


「おお、ようやくまともなものを……」


「これです」


 開発部長はやたらゴテゴテしたズボンを取り出した。


「これは何かね」


「ええ、スマホの本体に内蔵できるバッテリーには限界があります。そこで、バッテリーを外付けすればいいというわけでズボンにバッテリーを内蔵しました。これで我々もアパレルメーカーの仲間入りです! どうです。この角ばったデザイン! もちろん、サイズ別にラインナップしますよ!」


「す、スマホと専用のズボンをセットで売る気かね。う、し、心臓が痛い……」


「次にこれです!」


「待ってくれ、どれだけあるのかね」


「期待してください!」


「全く期待できん。早いところ終わらせてくれたまえ!」


「こちらです。お子様のスマホも安心。ランドセル型バッテリーです! 中はバッテリーでいっぱいです!」


「こ、これかね……ん? ランドセルと言う割に中に何も入らないじゃないか」


「当たり前ですよ。バッテリーにノートや筆箱が入るわけがないじゃないですか」


「き、君たちね……」


「それから、これが傘型太陽電池です。これを日傘代わりにしてあるけば、歩きながらスマホを充電できます」


「どうしてそういうものばかり作るのかね……。もっと違う発想ができないのかね!?」


「といいますと?」


「どこの小学生がモバイルバッテリーを背負って学校に通うというのだ! それに、こんな傘、重くて仕方がないだろう!」


「たしかに我々も開発していてそう思いました。これでは持ち物がどんどん増えてしまう。持ち運ぶものはできるだけ軽くしたいのが本音です」


「そうだろう。ようやくわかってくれたか。こういう、重くてバカでかいものはもう止め給え!!」


「ええ、実はそう思いまして、更に開発してみたものがあります」


「まだあるのかね!? 本当に君たちの開発力はどうなっているんだ!?」


「はっはっはっ。すごいでしょう」


「頼むからその開発力をまともな方向に使ってくれ! で、一体どんな物を作ったのかね」


「えぇ。重さを増やさずにバッテリー寿命を伸ばそうとするともう徹底的に省電力化を進めるしかありません」


「ようやくまともな方に行ったか。しかし、それは各社がしのぎを削っている。我々が努力したところでどんぐりの背比べから抜きん出ることは難しいだろう」


「いいえ。そんなことはありません。我々からすれば、世界中のメーカーの省電力化の取り組みはあまりにぬるいですね。我々の実力にかかれば圧倒的な省電力化を実現できます」


「ほぉ、どうするのかね」


「これです」


 開発部長は一見普通のスマホを取り出した。


「これかね。しかし、どうみても普通のスマホだが」


「そのまま操作をしてみてください」


「ふむ。ブラウザを開いて、適当に検索をして……ふむ、全く普通だな。別にCPUの速度を落としているわけでもないようだな。普通にサクサク動くじゃないか。これで省電力化を実現していると言うならすごいことだ。ん!? 画面に『30分お休みします』などと表示されて画面が消えたぞ!?」


「ええ。どうですか。3分操作すると30分完全に動作を止めて操作を受け付けなくなります。これで電池寿命が10倍ですよ」


「胸を張って言うことかね!? こ、こんなものを本気で作っていたのか!? 誰がこんなもんを買う! 不便で仕方がないだろう!」


「まぁまぁ、これは序の口ですよ。我々の発想力を舐めないでください」


「このあとも期待できないと思うのは気のせいかね」


「次はこれです!」


 開発部長はまた一見普通のスマホを取り出した。


「ふむ。これも見た目は普通のスマホのようだな……ん? 画面が緑っぽく見えるが、気のせいかね」


「気のせいではありません。スマホの電力消費が大きいのはCPUと画面です。その画面を徹底的に省電力化しました。自発光しない反射型液晶ディスプレイです。要は、電卓や初代ゲームボーイの液晶と全く同じです。モノクロで残像もひどいですが、電力は格段に小さくなります。それにノスタルジックでいいでしょう! どうです!?」


「どうですと言われても反応に困るのだが……。カラーが見れないスマホなどどうかと思うが……。それに暗いところでは画面が見えないではないか」


「そんなときのために、付属品としてキーホルダー型LEDライトを付けます。それに、残像がひどいので多少動作遅くてもわかりませんので、CPUも大幅に遅くしています。これで更に電池寿命が伸びています」


「そうかね……」


「あれ、反応悪いですね。もしかしてお気に召しませんか?」


「君はどうして私がこれを気に入ると思ったのかね?」


「はっはっはっ。辛辣ですね。まぁたしかにこれではLINEや検索ぐらいはできても動画を楽しむものは難しいですね。そこで我々はさらに開発を進めました。普通のスマホと同じようにカラーで残像もなく楽しめて、そして省電力なスマホをね。そうなると他社と同じように有機ELや液晶を使わざるを得ません。そうすると方式そのものでは省電力化できません。そこで、面積を小さくすることで省電力にできないかと頭を絞りました」


「ほぉ……まさか目に見えないほど小さな画面を搭載するなどと言わないだろうね」


「まさか。我々はそれほど愚かではありません」


「そう思えればいいが、とてもそう思えないのでね」


「これです」


「なにかねこれは。画面の代わりになにか筒が突き出ているが」


「ファインダーです。そこを覗き込むんですよ。他人に盗み見されることもなくプライバシーも万全です」


「なるほど、これなら……いや、私の頭が君らに毒されてきたようだ。と、君、一体いつまで続くのかね」


「おっと。すいません。つい一つ一つに時間をかけ過ぎた。ここからは駆け足で紹介しますね」


「なに!? もう終わりじゃないのか!? まだあるのかね!?」


「もちろんです。これがオクタバッテリーなスマホです」


 開発部長は、後ろから巨大な筒が何本も突き出たスマホを取り出した。


「オクタCPUではなくオクタバッテリーです!バッテリーが8個もつくんですよ。すごくないですか!?」


「またそっち路線か!重すぎると言っただろう!」


「そして、これが常にバッテリー残量5%表示のスマホです」


「なんだそれは!?」


「ええ。人間心理をつく方向で攻めた製品です。バッテリー残量が少ないとなるとユーザーは必要最低限の動作で作業をしようとします。これを利用して駆動時間を伸ばすという製品です。いつでも残量5%と出るのですよ」


「怖くて使えないじゃないか!」


「そしてこれが、充電ハンドル付きスマホです。このハンドルを回すことで充電できるのです。回してみてください」


「む……結構重いな」


「もっと速く回してください」


「む……むぅ!!」


「そうです。その速度で20時間回し続ければ50%ほど充電できます」


「で、できるわけがないだろう! こんなもの回してられるか!」


「そうですね。我々もこれを回し続けるのはあまりに厳しいとの結論に達しました。ここまできて、我々も考え直しました。いろいろなバリエーションを作りバッテリーを長寿命化にするためにがんばってきましたが……はたしてバッテリーの持ちが長いだけで『最強のスマホ』といえるのかどうか」


「いや、私はそれでいいと思うがね。間違っても骨が砕けるようなバイブレーションなど不要だ」


「切れ者と評判の田淵がこう言ったのです」


「またあの男か!」


「『バッテリーが長く持つだけ、音質がいいだけ、そんなものが最強のスマホだろうか。いや、すべての要素で他のスマホを圧倒しなければとても最強とは呼べない!』とね。我々も胸を打たれました」


「待て! 待て! やめろ! それはいかんぞ! 物事が良くない方向に向かっている!」


「我々も田淵に共感し、すべての要素で他のスマホを圧倒する最強のスマホの開発に没頭しました。徹夜を厭わずに、開発費を厭わずに」


「ん!? 今、怪しい言葉を聞いたぞ」


「気の所為です。我々は度重なるブレインストーミングで最強のスマホのコンセプトを作っていきました」


「もちろんその中には例の男も参加しているんだろうな……」


「田淵ですか? もちろんです」


「やはりな……」


「まず最強と言うにはディスプレイが素晴らしくなければいけません」


「ふむ」


「そこで、既存のサイズのなかの解像度を高めるという方向も考えたのですが、インパクトがありません」


「待て」


「ここは大画面を極めようということで、180インチディスプレイを採用しました」


「ん、んん!?」


「もちろん、強大なバッテリー、最強のCPU性能に世界最強のメモリ!」


「まて、ものすごく嫌な予感がするぞ!」


「こちらです! ご覧ください!」


 開発部の開発者達によって、会議室に大画面のスマホが持ち込まれた。

 幅は2メートル、長さは5メートルはある。


「見てください。これが我々の技術力をすべて注ぎ込んで作り出した世界最強最高のスマホです!」


 社長をそのスマホに映し出された美麗な映像に圧倒された。


「これは……なんと素晴らしい映像美! まさに世界最強の名にふさわしい……は!?」


「どうです、素晴らしいでしょう!」


「どこだが! うっかり騙されそうになったが、こんなものを誰が使う!」


「そう仰らず。ちょっとゲームを起動してみましょう」


 開発部長は足でアイコンにタッチしてゲームを起動すると、スマホの上で足を動かし始めた。


「見てください。このようにただのパズルゲームでも全身を使う運動になります」


「なるほど。……いや、違う! なにを考えているのかね!?」


「さらに音ゲーなど起動してみるともっとすごいですよ」


 開発部長は音ゲーを起動すると、激しく体を動かし始めた。

 年齢を感じさせない動きで滑らかな動きで、画面上のボタンを足でタップし始めた。

 部長の動きと音楽が完全にシンクロする。


「い、いきなり何を始めるのかね!?」


「見てください! たとえイージーモードであっても、このスマホで音ゲーをするとこれだけの運動量! ハードモードなどプレイしよう物なら、一瞬で足腰が立たなくなりますよ!」


「ええい、だれがこんなものを買うかね! 全く違うゲームになって居るではないか!」


「まぁまぁ、このスマホの実力はこんなものではありません。超高速CPUとメモリにより普通のアプリも非常に快適です」


「ふむ。それではLI●Eを起動してみてくれないか」


 開発部長はLI●Eのアイコンをタップした。


「む? どうも表示がおかしいようだが、どうしたのかね」


「このスマートフォンは超高解像度ですが、そんな解像度を想定していない普通のアプリではよく表示が崩れるんですよ」


「使えないではないか」


「ご安心ください。この世界最強のスマホがリリースされた暁には世界中のソフト開発者がこぞって対応するに違いありません」


「なるほど。いや、違う! 私はこんなものをリリースさせんぞ! 断じて許さん! 絶対に売れないに決まっている!」


「いえ、そんなことはありません。必ず売れます」


「何を根拠に! しかも、こんな重たいスマホ、どうやって持ち運ぶというのかね」


 すると開発部長は爽やかな笑みを浮かべた。


「ご安心下さい。我が社が総力を上げて開発した例のモバイルバッテリーがあるでしょう」


「それがどうした」


「あちらに載せれば問題ありません」


「なんだと!?」


「実はあのモバイルバッテリー、積載量に余裕があるのです。あの世界最強のモバイルバッテリーにこの世界最強のスマホを乗せてみてください。最強×最強。これはもう売れるに違いありません!」


「そう来たか! だが私はあの戦車もこのスマホも生産はみとめんぞ!」


「ええ、我々も今回は自重して勝手にラインを組むのは止めました」


「わかってくれてうれしいよ。すでに開発費だけで我が社は取り返しがつかないことになっていると思うがね」


「ですが、せっかくモバイルバッテリーが800台もあるのですよ。あれを遊ばせておくのはもったいないでしょう」


「まて、まさか君は……」


「試作でこのスマホを800台作りました。今、モバイルバッテリーに搭載している真っ最中です。ほら、あそこにすでにスマートフォン搭載済みのモバイルバッテリーが並んでいますよ」


 開発部長が窓の外の駐車場を指さすと、大きな画面を載せた戦車のようなモバイルバッテリーが並んでいた。

 さらに次々と新しいモバイルバッテリーが移動してくる。


「な、な……。ち、ちなみにこのスマートフォンの開発費は一体……いくらなのかね?」


「一台40億円ぐらいなので、800台でだいたい3兆円ですね」


「んがああああああ!!!」


 社長は昏倒した。


 その後、彼らがどうなったかは誰も知らない。





「地上最強のモバイルバッテリー」の続編です。

かなり前に書きかけてほったらかしになっていたので、これを気に投稿してみました。

なにげにアイディア出しに手間がかかってる作品です。

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