【先生ができること(7)】読者の反響から思うこと①

弁護士 太田 啓子
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著書『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』は、何かを指南するというより、私自身が子育て当事者として「どうしたら子どもが性差別意識を持たずに子育てができるんだろう」「私は悩みつつこうしてるんだけど、皆さんはどうやってるんですか?」と、口火を切るつもりで書きました。そのため、この本の問題提起に対する読者の感想はぜひ知りたく、SNSや読書レビューなどを見ているのですが、考えさせられ、興味深いものが多くあります。幾つかに分類してご紹介したいと思います。

まず、女性と思われるアカウントからは、「モヤモヤしつつ言語化できていなかったことが言葉にされていてすっきりした」という共感の感想が数多く寄せられました。特に、子育てパートナーの夫や両親世代が無意識に「男の子らしく」「女の子らしく」と子どもに接するのに違和感があるけれどうまく伝えられない悩みや、夫から「君には分からないかもしれないけれど、男は気が弱いと苦労するんだ。強く育てないとこの子のためにならない」などと「男性としての経験」を根拠に言われると「女性の自分には分からないことがあるのだろうか」と気持ちが揺れてしまうなど、思わず「分かる分かる」「義理のお姉さん、義理のお母さんとかだと本当に言いづらいよね」「よかれと思って善意で言っていることが分かると、傷つけずに伝えたいと悩むんですよね」とうなずいてしまう感想がつづられていました。

「『男子ってバカだよねー』っていうのは、ママ友との会話で本当によくある。自分も言っているかもしれない。ぎくっとした」などと、自分の言動を省みる感想も数多くありました。また、夫や恋人などの身近な男性に読んでほしいという声もありました。「夫が付箋を貼りながら読んでいた。ジェンダーの話ではなかなか夫に通じづらかったけれど、夫の理解力が上がってありがたい」という、本書を実用的に使っていただいている感想も複数目にし、大変うれしく思いました。それとは逆に「夫に勧めても意地でも読もうとしないので悲しい」という声も幾つか寄せられました。

SNS上のハンドルネームしか分からない、どこのどなたかも分からない方々の言葉であるにもかかわらず、「分かる分かる」と共感するものが多く、「今、この日本社会で女性として生きることについてのモヤモヤだからなのだな」と改めて感じた次第です。


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