YouTubeについて。
ちょっと微妙なテーマなんですけど
どうしても書きたくなってきたので書かせてください。
これ、音楽業界の人はかなり嫌がっているんだけど、どうなのかな。
そらミュージシャンとかレコード会社とかJASRACとか
TV屋さんからしたら、とんでもないですよね。
こんなもん許してしまったら生存基盤が根底から揺らぎますから。
で、自分もいちおう著作権が絡む商売で食っているので
最初は見もせずに拒絶している部分があったのですが
実際に1度やってみると、
どうしても肯定せざるを得ないんですよねコレ。
ちょっと検索すると、
見たいものがかなりの確率で出て来ます。
例えば手塚治虫のレアなカートゥーンをみつけて喜んでたら
それと同時に
新人賞に入賞して東北から上京したうら若き荒木飛呂彦先生を
手塚先生が厚く激励する画像まで発見して驚愕。
そっから「JOJO繋がり」であるのか
非常階段を介してメルツバウや
灰野さん等の方角に飛ばされてしまい
こりゃイカンと慌てて軌道修正し、大好きなオーティスを眺める。
生前の朗らかかつディープなステージングに感涙し
祈りを伴なった歌はやっぱ良いなと再確認。
涙で前が見えぬうちにブラコンに流されており
アレクサンダー・オニール、ルーサーヴァンドロスあたりから
徐々に80年代のディスコに流れて
キャメオやミッドナイトスターに出会い
ついでに米国の'80TVコマーシャル等を目撃しつつ
いつのまにか自分の知らない日本の70年代歌謡に突入し
山口百恵の異常なオーラと当時の歌番組のタイトさにやられ
最終的に八代亜紀のかっこよさに気づいて
演歌童貞を捨て去るのであった。
うん、演歌って良いんだなー。
(そして嗚呼。。。百恵ちゃんを見て下さい。
オイルショックの直後に百恵ちゃんは現れたそうです。)
踊るケイトブッシュ、リターントゥーフォーエヴァー、
アイアートモレイラ、ローランドカーク、
ジェルーザダマジャ、アフリカンヘッドチャージ、
ゲンズブール父娘の苦笑するしかないPV、
ハンコックとザヴィヌルのピアノデュオ、
健在ぶりに驚いたロイエアーズ、
JBとマイケルとプリンスの共演、
懐かしい北欧デスメタ、ソフトセル、
ナンシーシナトラ、タイマーズの確信犯的放送事故、
小室とYOSHIKIの微笑ましい友情、
グレちゃってグランジ化してゆくWANDS、
同じ早弾きでも太陽と月のように遠い
スティーヴ・バイとイングベイ、
メジャーデビューしても
己の牙は抜け落ちてない事をアピールする氷室京介
しかし数年後には
歌番組に初恋の人を呼んでもらって
大はしゃぎする氷室京介、
MCでハラボーとの結婚を報告する桑田、
祝福するお客さんたち。
ああ、なんでも出てくる。。。
もう笑うしかない。
貧しかった10代の頃にこんなものがあったら
嬉しかっただろうなと思う。
もちろん現状では音質も画質も良くはないですが、でも例えば
色々な音楽に触れたい若く鋭敏な感性を刺激する
「取っ掛かり」としてはこれでも十分でしょう。
不景気がなんじゃい。格差がなんじゃい。
もうあんまりお金が無くたって平気なのじゃ。
気に入ったものだけ厳選して買えば良いんだもんな。
「名前と評判だけ知ってて10年も気にしてたけど
未だにチェック出来てないアーティスト」とかって
ざらに居るでしょう?俺はいっぱい居る。
でもこれからはそういうのさえ成立しにくくなる。
(善し悪しはあるけどね)
ニュープアの少年よ、お坊ちゃんに負けるんじゃねえぞ。
ミュージシャンがなかなか演奏しに来ないような
地方に生まれ育った子だって、
LIVE映像を観れば雰囲気くらいはつかめる。
どんどん夢を広げられる。
昔の子供がラジオから新しい音楽に出会ったように
今の子はYouTubeを使って
時間的距離や空間的距離が倒壊した異常なダイナミズムの中で
あらゆる時代、国の音楽に出会っていく。
矢継ぎ早に出会っていく。
映像はやっぱ速い。
PVやLIVEで観られる昔の音楽家たちの髪型や服装、ノリ。
そして同じ頃のコメディやドラマ、CM、事件報道など。
いくつかの事物がリンクし合いながら
かつて存在した或る一つの時代が立ち上がってくる。
ポップミュージックの歴史が
いつでも閲覧可能なものとして手のひらの中にやって来る。
先達の魂の連なり。
「魂の連なりとしての歴史」を感じる時、
ようやく麻痺から逃れて、根源的探求が始まる。
留意すべきなのは
人々の中の「もう発明できないかも知れない」という潜在的な恐怖が
情報の整頓、合理化、公共化を速めているということです。
飽和とやり尽くし感の中で、(例えばJBがやったような)
「本当の発明」を生み出しづらくなった音楽界は
80年代頃から必死で無意識のあがきをしてきました。
(レアグルーヴとかDJ文化とかiPODとか。)
YouTubeはそのとどめを飾る巨大な一撃かもしれません。
これの普及によって20世紀のポップカルチャーを支配し規定した
いくつかのものが無化して行きそうです。
現状の自分の立場で
あまりおおっぴらには言えないのですが、
YouTube、素晴らしい。
まあYouTube自体は単純なシステムを作っただけで、
大した発明じゃない。
いずれ必ず誰かが始めたコンセプトだろうと思う。
何が素晴らしいかというと、
それがこうして実際に始まってしまった今、
懸念や絶望よりも「希望の方が遥かに大きい」こと。
これが素晴らしい。
音楽界は10年前と比べても相当に冷え込んでると思うけど、
このままいけば段々と救われるかも。
企業やシャチョさんがじゃなくて、新しい作り手が。
レコード会社は綺麗さっぱり無くなってしまうかも知れないが、
なにかとんでもない音楽家がきっと現れるでしょう。
「本当の発明」を携えて。
それも1人や2人じゃない。何人も何人も現れるんだ。
さあ、著作権で食べる事を諦めよう。
そして新しい天才の登場に備えよう。