第六十ニ話:『転生勇者が最初に行く八百屋のリンゴ』
『……私のプリンが見当たりませんね』
「リスポン。気持ちは分かりますが、俺じゃないですよ」
『いえ、別に疑っているわけではありません。プリンが見当たらないことで、少々力の加減ができなくなっているだけです。気持ち的には肩をポンとしたつもりだったのですが』
「ポンと消されてはいますけどね。プリンといえば三日前に作ったやつでしょうか」
『そうです。数日分作らせておいたやつです』
「俺じゃないのは確かなのですが、とりあえず一昨日の女神様の行動から確認してみましょうか」
『私が疑われているみたいでやや不快ですね。一昨日は知り合いの女神を呼び出して茶会をしていましたね』
「俺もその女神様を一目見たかったです」
『その邪な感情が理由で、丸二日ほど冷凍庫で拘束されていたということを理解していないようですね』
「ぐっすり眠れましたね」
『凍っていたのに死んでいなかったのには驚かされましたね。昨日は少しばかり用事があって別の神の空間に顔を出していました。今朝方帰ってきて、貴方を冷凍庫から出しましたね』
「たしかそのあと小腹が空いたので冷蔵庫を開けましたけど、プリンはもうなかったですね」
『ふむ……よもやあの女神が……。いえ、すぐに誰かを疑うのはよくありませんね』
「そういえば冷蔵庫周りに嗅いだことのない甘く豊満な胸を持っていそうな女性の匂いが漂っていましたね」
『さて、呼び出すとしましょうか。あとついでにポンと』
「リスポン。あれ、俺どうしてポンされたのだろう」
『報告の内容が気持ち悪く不快だったので。……そういえばあの女神が帰ったのは今朝でしたね』
「一昨日きて今朝帰ったのですか。そりゃあ丸一日も放置されたら小腹くらい空くと思いますよ」
『仕方ありません。プリンについてあの女神に言及することは控えておくとしましょう』
「食についての負い目があると、すごく寛大になりますね、女神様」
『神は本来お腹が空かないのですが、神性を奪われてはその限りではありません。私の空間では大抵の神は人間と同等レベルに堕ちますから』
「普通の人間レベルの状態にされた上に、さらに丸一日放置は酷いですね」
『普通の人間レベルのはずなのに、冷凍庫の中で丸一日放置されて平気だった貴方がいうと説得力がないですね』
「体中の細胞を意識できるようになると、ある程度の環境には耐えられますからね」
『人間に求められるハードルが上がりそうですし、他の神にはあまり見せたくないですね』
「でもそう考えると、俺は女神様の友達の女神様とニアミスだったんですね」
『そうですね。もしかしたら冷凍庫も開けていて、凍っていた貴方を見て見ぬふりくらいはしていたと思いますが』
「冷凍庫に人間が入っていたらビックリでしょうね」
『でしょうね』
「もしかしたら人間を食べる女神なのかもとか思われたりして」
『そんなまさか。……まさか』
「帰り際、そのお友達の女神様はどうでしたか?」
『いつもどおり、ひきつった笑顔で小刻みに震えていましたが』
「それがいつもどおりなのも可哀想ではありますが」
『そういえばお土産に魚を持たされたので、食事をしてから帰ってはどうかと誘いましたが断られましたね』
「紅鮭師匠のところの神様のところに行っていたんですね。ちなみにその時の誘い文句は?」
『ええと、活きの良い食材が手に入ったので、帰る前に食事でもどうですかと』
「見ていた場合、勘違いが加速しそうですね」
『誤解が生まれている可能性も考えて、また今度誘った時にでも説明しておくとしましょう』
「すぐに誤解を解かないあたり、女神様も大概ではありますね」
『そもそも人間を食する嗜好の神がいるのが悪いのです。いっそ根絶やしにしてしまえば、そのような誤解が生まれないのではないでしょうか』
「エゴが酷い」
『神は誰にも縛られず、己の判断に全ての責任を背負うエゴイズムの権化みたいなものですからね』
「妙に納得。ですがその理論だと女神様だって納豆とか食べるじゃないですか」
『ふむ……。確かに納豆嫌いの神様もいることにはいますからね。それで喧嘩を売られるのは迷惑ですね。自重しましょう』
「食に関しては本当に寛容ですね」
『食人と納豆を引き合いに出している貴方も大概ではありますが。そろそろ転生の時間ですね』
「まだもう少しありそうですが」
『くじを引いた後にプリンを仕込んでおいてもらいたいので、ちょうどよい時間ですね』
「なるほど、時間計算ピッタリですね。それではこちらをどうぞ」
『単発チケット……今回は十連チケットではないのですね』
「ああいうのはたまに配られるからありがたみがあるんですよ」
『無限に回せてはガチャに価値などありませんからね。ではぽちっと』
「お、この三本ラインの光は転生先演出ですね」
『転生先以外を引いてしまったら、今回の貴方はどうなるのでしょうかね』
「その場合は俺が課金して引きますので」
『これ課金できるんですか』
「ええと、ふやけたダンボールさんより『転生勇者が最初に行く八百屋のリンゴ』ですね」
『リンゴの三文字で良かったのでは』
「勇者と関わるようにしたかったのでしょう」
『シンプルなお題ですし、当たりの部類ではありますね』
「うーん、果物屋ではなく八百屋にあるということは、野菜と果物に対する価値観が似ている世界観ということですね。品揃えは豊富そうですが、専門的に取り扱ってくれているかは少し気になりますね」
※八百屋さんでも果物に詳しい人はいます。
『そういう意味の当たりというわけではないのですが』
「野菜との冒険は経験済みなので、今度は果物との冒険をしてみたいですね」
※十七話参照。
『もう少し仲間に対して高望みをしても許されるとは思うのですがね』
◇
『今日のおやつは何にしましょうか。……プリン辺りが良いですかね。プリンと言えば、何故か彼のプリンが女神の間で話題になっていた時期がありましたが……さてはあの女神が口コミで広げましたね』
「ただいま戻りました」
『丁度いいところに、プリンを所望します』
「リンゴに転生してきたのでアップルパイでもと思ったのですが」
『アップルパイの方も作れば良いじゃないですか』
「甘味は控えめに食べるからこそデザート感があると思うのですが」
『そういえば貴方の作ったプリンの話題が一時期女神達の間に広まっていましたが、何か心当たりはありますかね』
「うーん。紅鮭師匠の担当の神様にお土産でプリンを百個ほど持っていった時、食べきれないからお裾分けするとかは言っていましたね」
『お爺ちゃん系神様にプリン百個は軽い嫌がらせですね』
「いつも魚を百単位で貰っていたので、お返しも百単位が良いかなと」
『もはや企業間取引ですね。ああ、それで噂になって、あの女神が私のプリンを食べた際、貴方が作ったことに気づいたと』
「好評なようでなによりです。女神様向けに味付けを調整してあるので、他の女神様達の舌にも合ったんですかね」
『変な加護とか乗っていませんかね、貴方の料理。それはそうと転生勇者が最初に行く八百屋のリンゴでしたか』
「はい。ニュートソという勇者が最初に行った八百屋のリンゴに転生してきましたよ」
『万有引力とか武器にしそうな名前ですね』
「俺とニュートソとの出会いはそう、ニュートソが三歳の頃、はじめてのお使いとして八百屋を訪れた時です」
『日本でやっている番組みたいな展開ですね。確かに転生勇者なのだから初めて八百屋を訪れる年齢は結構若いでしょうね』
「まあ転生勇者なので、中身は普通に転生者らしく大人ではありましたね」
『それくらいしっかりしていれば三歳児であってもお使いくらい頼みそうですね』
「ニュートソは『オヤジ、大根を一つ頼む』と要求します」
『もう少し子供らしく振る舞っても良いでしょうに』
「生まれた時から物心ついている転生者って、大半が荒んでいるんですよね」
『普通はある程度育ってから前世の記憶を取り戻したりしますからね。リアリティを求めるのは大事ではありますが、大人の精神年齢で数年間の赤ちゃんプレイは拷問でしょうし』
「俺も一度は人として転生してましたけど、たまにくらいなら悪くないかなって感じでしたね」
※五十話タイトル参照。
『貴方の場合は人外としての生活が長過ぎますからね。時間の経過による精神的負荷が少ないのでしょう』
「まあその時に八百屋のオヤジが『一人でお使いたぁ偉ぇじゃねえか。こいつはオマケだぜ、受け取んな』と放ったのが俺です」
『粋な八百屋のオヤジですね』
「ニュートソは投げられた俺を回避しようとしましたが、八百屋のオヤジはそれを見越し、俺に高速回転を加えており見事なカーブでニュートソの買い物袋へとシュートします」
『避けようとした勇者も勇者ですが、八百屋のオヤジも侮れませんね』
「まあ魔王ですからね」
『八百屋のオヤジが魔王でしたか。色々気になるところはありますが、どうして八百屋をしているのでしょうか』
「魔王アニストテフスは非常に用心深い魔王で、近い未来勇者が自分の最大の障害になると予知し、勇者が生まれたとされる街で情報を集めていたのです」
『四元素あたり使いこなしそうな名前ですね。魔王のくせに単身で八百屋に化けて情報収拾というのもアレですね』
「まあ現れてもいない勇者が生まれているだろう街を調査するのって、冷静に考えると結構まぬけな話ではありますからね」
『魔王ならではの予知能力だとか言えば良いでしょうに』
「それで説得することはできても『えー本当かよ』とか思われて、押し付けられてしまった感を出させるのが嫌だったそうです」
『部下に対する恐怖心が強そうな魔王ですね』
「五年もの間八百屋のオヤジとして潜入していたアニストテフスは、転生勇者がニュートソであることを突き止め、あわよくばその命を奪おうと虎視眈々と狙っていました」
『ふむ、つまり貴方、渡されたリンゴに毒でも入れていたのでしょうか』
「いえ、それをやってしまうと八百屋としての立場がなくなってしまうので、俺はただのリンゴでしたね」
『潜伏先の仮初の職業にたいしなぜに未練を』
「世界を征服することばかり考えていたアニストテフスにとって、八百屋という世間の一歯車と言う立場は色々と考えさせられるものがあったのでしょう」
『なくはないのでしょうが、本末転倒ではありますね』
「あとはまあ、奥さんや娘のために稼ぐ必要もありましたし」
『潜入先の街で所帯を持つなと』
「話を戻しますが、ニュートソは帰り道、無理やり渡された俺を手にして、『なんか不気味だな、毒でも入ってるのか』とつぶやきました」
『カーブを掛けられながら渡されたリンゴですからね』
「それに対し俺は『いや、あいつは魔王だけど、俺はただのリンゴだよ』と返しました」
『投げ捨てられそうですね』
「よくおわかりで」
『わからいでか』
「しかし投げられた俺は超高速回転をしてカーブを描き、ニュートソのみぞおちへと戻ってきます」
『ちょっと狙いがずれてますね』
「食べ物を粗末にしようとした輩に対するちょっとした躾です。外見は三歳児でも中身が大人なら容赦する必要はないですからね」
『絵面は酷いですがね』
「俺はついでに『この程度の攻撃も避けられないようでは、今お前の命を狙っている魔王の手からは逃れられないぞ』と檄を入れます」
『食べ物を粗末にした説教のついでに命の話題はちょっと重いですね。魔王から渡されたわりに、今回は勇者の味方ですか』
「いえ、せっかくだから盛り上げられるだけ盛り上げたいなと思いまして。三歳児の状態で殺されてもつまんないですし」
『はた迷惑なリンゴですね』
「実際のところ、ニュートソは転生勇者だからと慢心しているところがありましたからね。既に魔王が自分の身辺に溶け込んでいると知って、焦っていましたよ」
『私としてはそんな事情を話しだしたリンゴの素性の方が気になりますがね』
「ニュートソも二度目の体当たりを受けるまでは似たようなことを言っていましたよ」
『力技でごまかしていますね』
「俺はニュートソに忠告をしました。所詮創造主からチートスキルを与えられた程度じゃ、八百屋にあったリンゴ一玉にすら勝てないと」
『事実なことには違いないのですが、想像以上にハードモード過ぎますね』
「あらゆる魔法が使えるようなチートスキルでしたけど、そんなものは世界の理を把握すればスキルなしで使えますし、ちょっとした干渉で封じられますからね」
『創造主並に難易度の高いこと言っていませんかね』
「そんなわけで俺はニュートソを鍛え上げ、魔王と互角に戦えるようにすることにしました」
『ブリーダー気質を発揮する回ですか』
「女の子相手なら優しい俺ですが、男相手には容赦しませんからね。それはもう厳しいトレーニングでしたよ」
『紅鮭とかの扱いを考えると容赦するしないの話ではありませんからね』
「まずは筋トレから、俺を背中に乗せながらの腕立て伏せやらを毎日」
『過酷そうではありますが、背中にリンゴを乗せるのは過酷なのでしょうか』
「成長期にすら入っていないニュートソには結構大変なメニューでしたけどね」
『逆に成長を阻害しそうですね』
「あと俺の重量は十キロくらいありましたし」
『普通のリンゴは一玉十キロもないですよ』
「俺も一緒に筋トレして果肉の密度が増えましたから」
『リンゴって筋トレしたら密度が増えるようなものでしたっけ。まあ十キロある物が背中にあれば、結構な負荷にはなりますね』
「さらには魔法構築の座学。スキルに頼らずとも魔法を使えるようにするためにミッチリとしごきました」
『創造主がわざわざチートスキルまで用意して使えるようにしてあげたと言うのに』
「八百屋に置かれているリンゴでさえ詰め込める内容ですからね」
『詰め込まれているのは筋トレでついた果肉でしょうに』
「寝ようものなら棚の上から俺が降ってきますからね。退屈だろうとしっかりと勉強させましたよ」
『十キロのリンゴが頭上から落ちてくるのは、万有引力の法則に気づいた学者でも命の危機を覚える程度でしょうね』
「リンゴ程度に苦戦するようでは魔王を倒すなんて夢のまた夢、実戦訓練も手は抜きませんでしたね」
『そのリンゴ、魔王くらい普通に倒せそうですけどね』
「倒しましたけど、そこはまあほら、勢い的な感じで」
『倒しちゃってるんですね』
「ちょっとばかり威力偵察をして魔王の力を見ておこうかなと思いまして」
『その勢いで魔王を倒してしまったと』
「大丈夫ですよ。翌日病院で目を覚ましたアニストテフスはリンゴに襲われる夢を見たって筋書きです」
『魔王がリンゴに襲われて病院行きになったのが現実だと思う方が難しそうですね』
「でもまあ流石は魔王でしたよ。うっかり奴の必殺技の直撃を受けてしまって、くきの部分が少し削れましたからね」
『魔王の必殺技なのだから、もう少しダメージを受けてほしかったですね』
「トレーニングを続け、気づけば十三年が経過。ニュートソは立派な青年となり、どこに出しても恥ずかしくない実力のある勇者へと成長しました」
『貴方のトレーニングを十三年も受けたことは称賛に値しますが、それよりもただのリンゴの貴方が十三年も生きていることに驚きですね』
「筋トレの影響ですかね」
『リンゴでなくても筋トレで寿命は伸びないかと』
「俺はニュートソの十六歳の誕生日に言いました。『お前は強くなった。その実力は魔王にも負けない。一応昨日確認で魔王を倒してきたが、間違いなくお前の方がちょっとだけ強いぞ』と」
『確認で魔王を倒すなと。しかもちょっとて』
「自信を持ったニュートソは早速その半年後、アニストテフスに勝負を挑むことになりました」
『早速なのに半年後て』
「先日入院したアニストテフスが全治六ヶ月だったので」
『律儀ですね』
「そしてニュートソとアニストテフスが対峙します。その横ではアニストテフスの家族が見守っていました」
『勇者的にやりにくそう』
「戦いは予想通り接戦で、ギリギリのところでニュートソが勝利します」
『貴方に十数年も鍛えられた勇者にギリギリで敗北した魔王を褒めてあげたいですね』
「アニストテフスは言いました。『見事だ、勇者。まさかこんなにも早く私を倒すとは……。それはそうと昨日お前の家のお母さんが野菜を買いに来た時、お釣りを間違えて渡してしまってな。後で差額を渡すから覚えておいてくれ』と」
『普通に八百屋は続けていたのですね』
「アニストテフスはさらに続けていいます『世界征服は諦めよう。いや、実のところはとっくに諦めていたのだ。最初私はお前の命を狙うためだけにこの街にきた。だが私はこの地で真に大切なものを得てしまったのだ』と妻と娘を見ながら言います」
『所帯を持ったことで心変わりが起きていましたか』
「『それとそこのリンゴに頻繁に病院送りにされ、自信とかもすっかり失ってしまっているし……』とも」
『案の定別のところでも襲っていましたか。勇者の命を虎視眈々と狙っていたはずの魔王が大人しかったのは貴方のせいだったのですね』
「圧倒的に成長していれば心配もなかったのですが、本当に接戦だったので、こまめにチェックをしていました」
『こまめに倒されて病院送りにされる魔王の立場が可哀想ですね』
「一応災害扱いで保険は降りていたので、家族を養うことについては問題がなかったそうです」
『それはなにより。なによりと言って良いのかはさておき』
「『あと十数年も魔界を留守にしていたので、今更魔界に戻っても地位とか危ういし……』とも」
『魔界を放置して十数年八百屋していた魔王への信用は低いでしょうね』
「そんなわけでニュートソとアニストテフスは和解し、共に平和のために協力する関係となります。ついでに婿入りも」
『魔王の娘との恋仲って、普通はついでで済ませる話でもないのですがね』
「幼馴染のようなものでしたからね」
『同じ街に住む八百屋の近い年頃の娘ですからね』
「ちなみに俺の最後ですが、どういうわけか諸悪の根源とみなされ、人間界と魔界の両方から敵対視されました」
『どういうわけかで濁していますが、多分やらかしていますよね』
「別に大した事はしてないんですけどね。ニュートソとアニストテフスが協力して世界平和のために頑張るとか言っていたので、彼らがどこまで本気でやれるか、たまーに試練を与えるような形で妨害していた程度なのですが」
『なるほど、諸悪の根源ですね』
「最後は二人に討ち倒されて焼きリンゴになりましたね」
『おや、貴方を倒したのですか』
「いやまあ、ニュートソとアニストテフスとの決戦の直前に創造主さんがやってきまして。『ちょっとここでリンゴが勝ってしまうと色々台無しなので、ここは一つ負けてもらえないでしょうか』と頼まれまして」
『リンゴが創造主に頭を下げさせないでください。……まあ、貴方の存在は結構有名ですからね。賢い選択と言えばそうなのでしょうが』
「最初は断るつもりだったのですが、女神様が喜びそうなお土産を用意すると言われましたので」
『賄賂で懐柔されましたか。リンゴのくせに』
「でもそこの創造主さん、リンゴ農家もビックリのリンゴ農園を持っていまして。すごく美味しいリンゴをもらえたんですよ」
『ふむ、それでアップルパイですか。ちなみに貴方の体は混じっていないでしょうね』
「焼きりんごになったので、足が早いと思い、創造主にプレゼントしましたよ」
『それはなにより。感想がちょっと気になるので今度聞いておきます』
◇
『リンゴだった貴方の体の感想ですが、奇跡的な美味だったそうで、どうにか栽培できないかとアドバイスを求められましたよ』
「ありゃ、それなら女神様へのお土産に持って帰れば良かったですね」
『いくら美味しくても貴方だったものを食べたくはないですね』
「女神様にだったら食べられても――」
『そういうのが嫌だと言っているのです』
紅鮭師匠「今回は野菜果物回だから、私の出番はないぞ」