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 2021年4月以降に新型コロナウイルスのワクチン接種がまず高齢者から本格化する。これに向けて、各自治体はワクチン接種をスムーズに進めるためのシステム導入に急ピッチで取り組んでいる。

 例えばワクチン接種業務のうち、接種対象の住民との接点となる「接種予約」では、約200の自治体が対話アプリ「LINE」を活用する予定だ。一方、政府で新型コロナワクチン接種を担当する河野太郎規制改革相が進める接種管理の新システムはその全貌がまだ見えず、自治体にとってはスムーズな接種開始に向けた懸念の1つとなっている。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

LINE活用の予約接種システムの導入進む

 各自治体は現在、ワクチン接種について、予約だけでなくコールセンターの対応や接種会場での接種券の確認といった一連の流れをスムーズにするため、それぞれの工程で別々のシステムの導入を進めている。中でも接種予約で導入が進むのはLINEを使ったシステムだ。

 休日も含めて24時間対応が可能になるだけでなく、ワクチンの供給状況が不確定ななか、電話よりも簡単に接種対象者に連絡できるメリットがある。接種対象者にとっても予約変更が容易になるメリットがある。

 LINE社は2021年1月上旬、自治体向けの説明会を開き、LINEアプリを使った接種予約システムと、システム構築を担うパートナー企業を紹介した。自治体は接種予約にも使える自治体ごとのLINE公式アカウントを無料で開設・運用できるが、接種予約管理システムについてはパートナー企業が有料で構築する。LINE社によれば既に約200の自治体が導入する見込みという。

 その1市が静岡県磐田市だ。同市は人口が約17万人と多いため、接種予約をコールセンターの電話対応だけではさばき切れないと判断し、2020年11月ごろからシステム導入を検討し始めた。

 磐田市は2021年1月の説明会でLINE社からシステム構築の事業者の紹介を受けた。1月下旬には、市民にとって使いやすく個別通知ができる点を評価してLINEを使った接種予約システムの導入を決めた。目下開発を進めており、2021年2月26日に稼働させる予定である。

 同市の健康福祉部健康増進課新型コロナウイルスワクチン対応班は「なるべく多くの人に使ってほしい」と話す。ワクチンの供給状況が不確定のため、電話対応よりもLINEを使ったほうが逐次連絡しやすくスムーズに予約業務が進むとみている。

 磐田市のように自治体が独自にLINEを使った接種予約システムの導入を決める一方で、ワクチン接種業務一式を請け負う事業者がそのパッケージの中に同システムを含めるケースもある。人口約6万人の和歌山県紀の川市はワクチン接種業務一式をある旅行業者に委託。その事業者からの提案で同システムを使うことにしたという。

4月開始の政府システム、いまだ全貌見えず

 自治体がシステム導入を急ぐ一方で、政府が2021年4月からの提供に向けて開発中の「ワクチン接種記録システム」はその全貌がいまだ見えない。自治体が準備を進めるうえでその足を引っ張りかねない。

 ワクチン接種を円滑に進めるために政府がつくるシステムは2種類ある。1つは、主にワクチンの供給や分配を円滑にするために厚生労働省が開発中の「V-SYS(ワクチン接種円滑化システム)」である。