▼行間 ▼メニューバー
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
パワハラ会議で追放された召喚士、旧友とパーティを組んで最強を目指す~今更戻って来いと言ってももう遅い。えっ、召喚獣だけでも貸してくれ? 悪いが、それもお断りだ~ 作者:月島 秀一
3/3

第三話:召喚士アルト・レイスの実力

「う、わぁ……。一年ぶりに見たけど、とんでもない破壊力ね……」


「れ、レックスさーん? 生きてますかぁ……?」


 ステラが顔を青く染め、ルーンが安否確認の声を掛けた。


(こんなので終わってくれたら、楽なんだけどなぁ……)


 残念ながら、レックスはそんなに(やわ)な男じゃない。

 直後――前方から突風が吹き荒れ、額から血を流す彼が姿を現した。


「は、はぁはぁ……。お前はマジで容赦ねぇな……っ。並の冒険者なら、今ので消し炭だぜ?」


「水龍ゼルドネラの水秘鏡(すいひきょう)で防御したのか……。さすがはレックス、『万優(ばんゆう)龍騎士(りゅうきし)』だ」


「はっ。お前に『万優』なんて言われても、嫌味にしか聞こえねぇ、……よッ!」


 言うが早いか、水龍の力を宿した彼は、凄まじい速度で駆け出した。


(この距離を一足で詰めてくるなんて……。冒険者学院の頃より、さらに速くなっているな)


(アルトみてぇな超一流の召喚士に、遠距離戦を挑むのは自殺行為だ。召喚士の弱点は、『超接近戦』……!)


 互いの視線が交錯。

 先手を打ったのは、十分な加速を付けたレックスだ。


龍技(りゅうぎ)霞断(かすみだち)ッ!」


 聖霊降剣(せいれいごうけん)ディアスが、鋭い風切り音と共に迫る。

 この距離この速度じゃ、召喚獣は間に合わない。


「武装召喚・王鍵(おうけん)シグルド、殲剣(せんけん)ロードル」


 俺は二本の剣を召喚し、迫り来る斬撃を打ち払う。


「く、そ……召喚士のお前が、なんでこの速度に付いて来れんだって、のッ!」


「あはは、けっこうギリギリだよ」


「抜かせ! この間合い(レンジ)に持ち込まれたら、普通の召喚士は即終わりなんだッ!」


 その後、一合二合と剣を重ねるたび、レックスの体にのみ生傷が増えていく。


 雷龍リンガと炎鬼オルグの後方支援があるため、互角以上に立ち回れているのだが……。

 ちょっと『決め手』に欠けているのが現状だ。


(ここまで『ビタ付き』されたら、リンガとオルグは大きく動かせないし、何より手印が結べない……。レックスの召喚士対策は完璧だな)


(畜生、接近戦でも押し切れねぇ……っ。それどころか、一瞬でも気を抜いたら逆にやられちまう。近接もいける召喚士とか、反則だろ……!)


 火花と硬音を散らし、激しい剣戟を奏でる中、俺は思考を巡らせていく。


(こっちの手札は、リンガ・オルグ・王鍵・殲剣の四枚。ちょっと心許ないけど、『要は使いよう』か)

俺は殲剣ロードルを解放し、漆黒の闇を広域に展開。


「黒の型・弐ノ太刀――闇影斬(あんえいざん)


 横薙ぎの一閃、数多の黒い斬撃が吹き(すさ)ぶ。


「ぐっ……!?」


 圧倒的な物量に押されたレックスは、大きく後ろへ押し流されていく。

 これでようやく間合いを取ることができた。


「――王鍵・開錠」


 王鍵シグルドを大地に突き立て、『王律』に指を掛けようとした瞬間、


それ(・・)だけはさせねぇ……!」


 血相を変えたレックスが、闇の斬撃をその身に受けながら突っ込んできた。


「っ!?」


 俺は仕方なく王鍵を引き抜き、眼前に迫る一撃を防ぐ。


「おいおい、随分と無茶をするな」


「馬鹿野郎、『必殺』を許すわけねぇだろう、がッ!」


 彼は凶暴な笑みを浮かべながら、苛烈な攻撃を休みなく繰り出す。


(……参ったな)


 召喚士の一番の強みは、多種多様な『召喚』による変幻自在の特殊攻撃。

 しかしレックスは、こちらの召喚獣や武器の能力をほとんど全て知っている。

 これでは手札を公開したまま、ポーカーをやっているようなものだ。


(さて、どうしたものか……)


 この先の『詰め筋』を模索していると、


「うっし、いい感じに温まってきたぜ……! ――天龍憑依・龍王バルトラ!」


 レックスの全身から、莫大な魔力が解き放たれた。


「……凄いな。あのバルトラを降ろせるようになったのか」


「おうよ! つっても、『三分間』って制限付きだけどな!」


 彼はニッと笑い、三本の指を立てて見せた。


「……それ、バラしたらマズいんじゃないのか?」


「俺はアルトの召喚獣や武器の能力を熟知してんだ。こっちだけ手を伏せたまま、ってわけにはいかねぇだろ? 公平に行こうぜ!」


「そういう馬鹿真面目なところ、昔から本当に変わらないな」


「へへっ。そんじゃまっ、時間もねぇから……行くぜ?」


「あぁ、来い!」


 首肯(しゅこう)の直後、俺は驚愕に目を見開く。


「速い!?」


 眼前には天高く剣を振りかぶったレックス。


「龍技・天限斬(てんげんざん)ッ!」


「――武装召喚・ケルビムの盾!」


 大上段からの斬り落としに対し、巨大な盾を召喚。


 しかし、


「龍王の一撃、舐めんなよ!」


 レックスの斬撃は、ケルビムの盾を叩き割ってきた。


「嘘、だろ……!?」


「ここだ! 龍技・破国槍(はこくそう)ッ!」


 煌炎(こうえん)を帯びた鋭い突きが、視界一面を埋め尽くす。


 俺は王鍵と殲剣をもって、なんとか迎撃に努めたのだが……。


「……ッ」


 体勢を崩された状態からの切り返しは難しく、左脇腹にもらってしまった。


「あのアルトが手傷を……!?」


「し、信じられません……っ」


 ステラとルーンの驚愕に満ちた声が響く。


(幸いにも傷は浅いけど……)


 大地を踏み抜く脚力・人間離れした腕力、今のレックスと斬り合うのは、あまり得策じゃなさそうだ。


「まだまだぁああああ!」


 怒涛の追撃。


 俺はそこへ変化球(カウンター)を繰り出す。


「――簡易×増殖召喚・スライム!」


 右の踵を打ち鳴らし、召喚術式を大地に刻む。


「ぴゃぁ!」


 一匹の青いスライムが飛び出し、


「「ぴゃぁ!」」


 それはすぐさま二匹に分裂、


「「「「ぴゃぁああああ!」」」」


 瞬く間に数千・数万と増殖していった。


 これらは全て、増殖術式によって増やされた偽物。

 本体は今、俺の右肩にちょこんと載っている。


「ぐっ、次から次へと……ッ」


 無限に増え続けるスライムに呑まれ、レックスの動きが止まった。


(よし、いいぞ)


 俺はバックステップを踏み、大きく間合いを取りつつ、近くにあった大岩に身を隠す。


(リンガとオルグの大技で削りを入れて、その間に近接特化の召喚獣を呼び出す……!)


 そんな俺の戦略プランは、(まばた)きのうちに崩れ去った。


「――龍技・紅蓮閃(ぐれんせん)!」


 大出力の煌焔(こうえん)が吹き荒れ、数万のスライムが一撃でやられてしまった。


「増殖召喚で茶を濁した後は、大きな遮蔽物のところへバックステップ――だよな?」


 こちらの動きを読んだレックスは、既に俺の目と鼻の先『必殺の間合い』に踏み入っていた。


「やるね」


「へっ。アルトの行動パターンは、学院時代にみっちり研究したからな!」


 聖霊降剣(せいれいごうけん)ディアスの刀身に、龍王の(ほむら)が燃え盛る。


「俺の勝ちだ! 秘奧(ひおう)龍技(りゅうぎ)・龍王斬ッ!」


 莫大な魔力の込められた剣が、容赦なく振り下ろされる。


(やっぱりレックスは強い)


 圧倒的な膂力・冷静な判断力・鋭い洞察力、どこを取っても隙がない。


 だけど一つだけ、忘れていることがある。


「――俺だって、レックスのことはよく知っているんだぞ?」


 一年間の冒険者生活を経て、さらに強くなった彼ならば、きっと俺の思考と動きを先読みし、この間合まで詰めてくるだろう。


 そこまで読んだ俺は、右目に召喚しておいた、虚烏(うつろがらす)の魔眼を解き放つ。


「瞳術・無限縛鎖」


「しまっ……!?」


 レックスはすぐに両目を閉じたが――遅い。


「あー……くそ、やられた……っ」


 瞳術・無限縛鎖によって、精神の檻に囚われたレックスは、そのままバタリと倒れ伏す。


「レックス、戦闘不能!」


「よって勝者は――アルトさんです!」


 ステラとルーンが高らかに勝敗を宣言。


「ふー……疲れた」


 こうして俺は、『万優の龍騎士』レックス=ガードナーに勝利したのだった。

【※とても大切なお願い】


『面白いかも!』

『続きを読みたい!』

『陰ながら応援してるよ!』

と思われた方は、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援していただけると嬉しいです!


今後も『毎日更新』を続けていく『大きな励み』になりますので、どうか何卒よろしくお願いいたします……っ。


↓広告の下あたりに【☆☆☆☆☆】欄があります!

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
お読み頂きありがとうございます!

↑の☆☆☆☆☆評価欄↑にて

★★★★★で、応援していただけると嬉しいです!

感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。