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【web版(裏)】奴隷転生 ~その奴隷、最強の元王子につき~ 作者:カラユミ

カーリッツ王国編

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第22話 奴隷、息子の存在を知る

 ベネトナシュたちと合流したのは、翌日の夕方だった。

 再会してからのベネトナシュの一言目が、ウォルス様は戦争を起こす気ですか?という言葉だったのには、流石の俺も言葉に詰まってしまった。

 俺とダラスの噂が想像以上に広がるのが早かったことに驚いたのもあるが、それ以上に、ベネトナシュの辛辣な一言が俺の胸に突き刺さった。


 酒場でベネトナシュたちが酒を酌み交わしながら、邪教に繋がるかもしれない情報を話し始める中、俺はネイヤに「俺はベネトナシュに嫌われているのか?」と小声で尋ねた。


「嫌われてはいないと思いますよ」とネイヤは即答し、「思ったことは何でも口にするだけです」と平然と続けて言った。


「そうなのか……俺の顔を見るなりあんなことを言ってきたんでな、本当はネイヤが俺に付いてくることを快く思ってないのか、と勘繰ったりしたんだが」と俺はグラスに注がれた酒を一気に飲み干した。


「そんなことはないと思います。ただ、ベネトナシュは男というものが、あまり好きではないかもしれませんが」とネイヤは苦笑しながら言う。


 それはつまり、俺が男というだけで嫌われている可能性があるんじゃないか、と思いつつ、ベネトナシュへと視線を向けると「ウォルス様、私の話を聞いておられるのですか?」とベネトナシュから鋭い目を返された。


「西のエレントスって町で、各国の有力者を集めたパーティーがあるという話だろ。ちゃんと聞いてるよ」


「それならいいのですが、酒の席とはいえ、ネイヤ様にちょっかいを出すのはいかがなものかと」


「そりゃただの勘違いだ。手を出すとしても、こそこそやる道理がないだろ」


 ネイヤは今、俺の配下の位置づけなわけで、口説くなら堂々とやればいいことだ。

 何もこんな場で隠れるようにすることではない。


「道理ならあるわよ。そんな風紀を乱すような真似は、この私が許さないから。ちょっかいを出すのは禁止」とセレティアが笑顔を向けてきた。ただ本気の発言のようで、胸の血契呪けっけいじゅが機能したのは言うまでもない。


 セレティアは話を戻すように、「――――それで、そのパーティーには出たほうがいいのかしら?」と俺とネイヤに意見を求めるように見つめてきた。


「私には、正直どうしたらいいのかわかりません」


 ネイヤは政治的なものには無縁の平民出身ということで、そんなパーティーに出席したこともなければ、想像もつかないらしく、全て俺に決定権を委ねてきた。

 俺が奴隷だということを忘れているのか、と逆に質問したくなったが、ネイヤの俺を見る目があまりに情熱的で、俺が超人か何かで、何でもこなせると信じ込んでいそうだったため、そこは目を瞑って意見することにした。


「各国の様子を一度に探れるのは好都合だが、主催者は誰で、何のために開くパーティーなのかが重要だな。万一それがフェスタリーゼだったりしたら、目も当てられない」


「それなら心配いりません。主催はハーヴェイ・ディットランドですから」


 ベネトナシュから聞いたこともない名前が出てくる。

 フェスタリーゼのこともあり、俺が知らない身内が増えていることに驚きはない。

 あとは、二人の関係がどうかが問題になってくる。


「フェスタリーゼとハーヴェイの仲がよくないというのは有名です。このパーティーは定期的に開かれているもので、ハーヴェイ・ディットランドの道楽で行われているということですので、怪しいパーティーではないと思われます」


「フェスタリーゼと仲が悪いのか……二人の関係は知らないが、それは好都合だ」


「二人は従兄妹です。ハーヴェイはアルス・ディットランドの子息ですから」


 俺は口にしていた酒を、思わず噴き出した。

 俺の子供だとっ?

 妻は誰だ?というか生きているアルスは誰なんだ?

 まさか、俺自身なのか?

 もうどこまでが本当で、どこからが嘘なのか判別できない。


「もう、汚いわね」とセレティアが俺を冷たい目で睨んでくるのと同時に、「フェクダ、テーブルを拭いておいて」とベネトナシュが巻毛のお嬢様っぽい仲間へ命令を下した。


「悪い、アルス・ディットランドに子がいるなんて、意外過ぎたんでな」


「そういえば、あの時、アルス・ディットランドは十七年前に死んでるとか言っていたわね。わたしはそんな噂すら聞いたことなかったわよ」とセレティアはネイヤたちを見回した。


 ネイヤもベネトナシュたちも、当然のように頷き、この中で俺だけがおかしいのだと無言で訴えかけてくる。


「ただの憶測だと言っただろ。十七年前、体調が相当悪い時期があった、という話を聞いたからな」


「変なことばかり詳しいのね。それなのに誰でも知ってそうなことは知らないなんて」とセレティアが怪訝な目で見つめてきた。


「……そういうことは、周りが知っていれば済むことだからな」


「そう言われればそうね。ウォルスにも間抜けなところがないと可愛げがないから、それで丁度いいかもしれないわ」


 セレティアがからかうように言うと、真っ先にベネトナシュが賛同して拍手を送った。

 つっこんでやりたかったが、それをするとセレティアの発言を否定することになって、またややこしくなるため控える。


「で、エレントスのパーティーに招待されてないんだが、参加方法は把握してるんだろうな?」


「身分証さえあれば大丈夫とのことです。それと、男女ペアでないと入れないとあります」


 貴族階級の道楽パーティーなら当然のことだ。

 大抵はパートナー自慢であったり、力の誇示だったり、理由はつまらない。

 そんなものを催しているのが、俺の子とか意味がわからない……顔を見て確認する必要がある。


「わたしが出ないと入れないのなら、パートナーはウォルスになるわね。悪いけど、ネイヤたちには待機しておいてもらうわね」


「承知いたしました。当日はすぐ駆けつけられるよう、会場周辺を警戒していたいと思います」

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