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【web版(裏)】奴隷転生 ~その奴隷、最強の元王子につき~ 作者:カラユミ

カーリッツ王国編

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第18話 奴隷、己の過ちの尻拭いを申し出る

「ウォルス、あなたしっかり寝たのよね? 一晩中警護なんてしてたら、日中の護衛が疎かになるわよ」とセレティアは言う。


「大丈夫だ。俺に問題があれば、今はネイヤもいるし、どうとでもなる」


「わたしに何かあれば、ウォルスも危なくなるのよ? 忘れてないでしょうね」


 セレティアは自分のことを心配しているのか、それとも俺を心配しているのかよくわからない返事をよこし、それが後ろを歩くネイヤを混乱させる。そのせいで、「ウォルス様はセレティア様に大切に思われているのですね」とネイヤは意味不明な発言をした。


「わ、わたしは何とも思ってないわよ。ただ、護衛奴隷として、ちゃんと仕事をしてもらわないと困るだけよ」とセレティアは普段より早口で喋る。それが逆に図星を突かれたように見え、ネイヤもニコニコと笑顔でセレティアを見守ることになった。


 仕える者としては、上に立つ者が臣下を大事にするのは喜ばしいことではあるが、ネイヤの場合、ただの勘違いにすぎない。

 セレティアは俺を労っているわけでも、大切にしているわけでもなく、ただ俺を上手く扱えないことに手を焼いているだけだ。この調子だと、ネイヤがそれに気づくのは当分先になるだろう。


 三人で冒険者ギルド前までやってくると、昨日より騒々しく、冒険者がひっきりなしに出入りして横を抜けてゆく。そのただならぬ様子に、ネイヤの目が厳しいものに変わるのがわかった。


「この様子だと、冒険者ギルドから緊急依頼が出ていると思います」とネイヤが言う。


 普段から一線級の活躍をしてきたネイヤが、その表情を固くしていることから、かなり緊迫した状況なのが窺える。だが、そんな様子を見たセレティアの態度は変わらない。


「わたしたちには関係ないわよ。ネイヤにも話はこないから相手にする必要もないわよ」


 セレティアの言っていることに間違いはない。

 冒険者ギルドは俺たちに依頼をすることはできない。が、俺たちから依頼を受けることは可能だ。それはネイヤもわかっているため、少し残念そうに、わかりました、とだけ返事をした。


「一応話は聞かせてもらったほうがいいだろう。俺たちに関係なくとも、情報は武器になる」


「――――そうね、話を聞くくらいなら問題ないわ」


 冒険者ギルドの中に足を踏み入れると、ネイヤと、そのネイヤが認める俺へと向けられる職員からの視線が凄まじい。無言の圧力が四方八方から襲いかかってくる。


「緊急依頼が出ているようですが、詳細を伺いたいのですが」とネイヤが言うや否や、職員が依頼書を差し出してきた。


「受けないわよ」


 セレティアは職員のその行動を窘めるように、冷たく言い放つ。


「申し訳ございません。何分情報が交錯しておりまして、こちらも実力のある方々に協力していただきたく焦ってしまいました」


「そ、そんなにかしこまらなくてもいいのよ。説明だけしてくれればいいから」


 焦るセレティアを見ていると、最初は奴隷という存在に否定的なだけかと思っていたが、単に為政者としての器に問題があるんじゃないか、という疑問さえ湧いてくる。

 そこらへんのケジメはきっちりしておいてもらいたい――――俺のことは除いて。


「では、緊急依頼の内容につきまして、まずはその異常性について――――」と職員はミッドリバー周辺の魔物の説明から入り、昨晩現れた異常生物、この地域だけではなく、大陸全土を見渡しても今まで存在すら確認されていない、ゴブリンゾンビについて語りだした。


 俺はしばらくの間、大人しくその話を聞いていた。

 自分の失敗を指摘されているようで、全然頭に入ってこなかったが。


「ねえウォルス、聞いてる? さっきから顔色が優れないわよ」とセレティアが俺の顔を覗き込んでくる。その目は純粋に心配しているようで、俺を怪しんでいないのは確かだ。俺はそれを見て少し安堵した。


「あ、ああ――――この依頼は受けたほうがいいな」と俺は深刻なフリをして答えた。


 職員が話しているゴブリンゾンビとは、俺が昨日、実験して作り出したゴブリンで間違いないと思われたからだ。早朝にはその体を維持できず、元の肉片に戻ると思っていたのだが、そのゴブリンゾンビは切り刻んでも、時間とともに元に戻るらしい。

 今のところ冒険者だけでは手に負えないらしく、王国軍にも通達はしているが、来るのがいつになるのかわからない、と職員は愚痴をこぼす。


「私もウォルス様の意見に賛成です。ここでユーレシア王国の力を示すのもいいかと」とネイヤが言う。俺とは全く違う理由だが、勝手に乗ってくれるのはありがたい。


「邪教と関係あるかもしれないしな。ここは絶対受けるべきだ」


「そこまで言うのなら、引き受けようかしら――――でも、ウォルスがそこまで乗り気なのも気になるわね」


 セレティアの俺を見る観察眼は、なかなか馬鹿にできないものがある。

 俺が奴隷という立場で、普段からおかしな行動を取っているのを怪しんでいるのかもしれないが。俺としても自重したいところだが、なかなかできないのが痛い所だ。


「今の話だと、ゴブリンゾンビは不死なんだぞ? これは気になるだろ。それに、俺がそれを処理できれば、ユーレシアの名も広まるというものだろ」


「それもそうだけど、そう上手くいくものかしら」


「上手くいくから見ておけ」


 自分で撒いた種だからな、調べる必要もあるし、上手くいかないわけがない。それに、今の話を聞く限り、一等級魔法を使わないと対処できないだろう。

 それにしても、どうしてこんなことになってしまったのか、と頭を悩ませながら現地へ向かうことにした。

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