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前世聖女は手を抜きたい よきよき【コミカライズ開始】 作者:彩戸ゆめ

前世は聖女でした

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19話 ドリュアスの加護を持つクラスメイト

クラスメイトの名前募集に応募してくださってありがとうございます。

早速お名前を使わせて頂きました。

 あれからポール先生の授業はすぐに終わって、レナリアたちはそれぞれの教室へと戻った。


 他の属性の授業はまだ終わっていないのか、クラスに戻ってきた生徒はレナリアだけだ。

 といっても、すぐ隣にエアリアルのフィルがいるのだから、一人ぼっちという訳ではない。


「知らなかったわ。魔法紋を(きざ)めるのはエアリアルの守護を持つ者だけだったのね」


 今はレナリアの他に誰もいないので、普通にフィルに話しかけられる。

 教室の外には学園の護衛騎士が立っているが、これくらいの声ならば聞かれないだろう。


「一応他の魔法でも魔石を削る事はできるけどさ。複雑な模様をつけるのは無理だと思うよ」

「フィルは物知りなのね」


 レナリアが感心すると、フィルは誇らしげに胸を張った。


「風はどこにだって行けるからね! 何でも知ってるのさ」

「凄いわ」


 本当に凄い。

 もしかしたらフィルにかかれば、隠し事など一切できないのではないだろうか。


 エアリアルと意思の疎通ができる加護持ちが諜報員にでもなったら、弱点が全てさらけ出されてしまって、世界は全てその諜報員に属する国に侵略されてしまいそうだ。


 レナリアくらい高い魔力を持っていないとエアリアルと会話できないのは、どの国にとっても幸いだった。


「さっきの先生が持ってた魔石にも、細かい魔法紋が刻まれてたでしょ? あれはきっとあの先生が刻んだ魔法紋だと思うな」


 確かにあの魔石には、あれほど小さいのにも関わらず、かなり複雑な魔法紋が刻まれていた。

 それをあのポール先生がやったのだとしたら、一見すると凡庸そうに見えるが、さすが学園の教師を務めるだけの事はある。


「でもそれならどうしてエアリアルの守護はあまり喜ばれないのかしら」


 確かに精霊の姿を守護されている本人も含め誰も見る事ができないが、それだけの能力を持つなら、もっと評価されていいはずだ。


 レナリアも、もし洗礼式をする前に魔法紋を刻めるのが風魔法使いだけだという事を知っていれば、エアリアルの守護を得た事でショックを受けなかったかもしれない。


 だがそのショックで前世の記憶を思い出しフィルの姿を見れるようになったのだから、知らなくて良かったとも言える。


「人間ってさ、目の前に派手な魔法をドーンと見せられたほうが凄いって思っちゃうんだよ。それに僕たちが集められる魔素は、守護する相手の魔力に比例するからね。会話するどころか姿も見えないんじゃ、竜巻一つ起こせないよ」

「いえ。別に竜巻は起こせなくてもいいと思うわ」

「そう?」

「ええ」


 なんだつまんない、と口をとがらすフィルに、人と同じような姿をしていてもやはりフィルは精霊で、人間の持つ常識とは違う思考をしているのだなとレナリアは思う。


 けれどそれが精霊というものなのだ。


 力には善も悪もないの。

 ただその力を使う者によって決まるのよ。


 レナリアの前世の記憶は、日々を過ごすうちに段々と記憶の向こうへと遠ざかっていく。

 だがふとした拍子に、今のように鮮明に思い出す。


 あれは、レナリアを導いてくれた少し年上の聖女の言葉だったはず……。

 十六歳まで生きのびて、ディオネ・カルバンという名前を得た、黒髪で薄い紫の瞳をした優しい人。


 生きて教会を出る事ができた彼女は、幸せになってくれただろうか。


 窓の外には手入れをされた中庭が見える。

 低い生け垣には色とりどりの小さな薔薇の花が咲いていて、眩しいほどの光が花びらの色を際立たせる。

 そよ風が吹くたびに揺れる花が、まるで歌っているかのようだ。


 心がほころぶような美しさに、不意に胸が痛む。


 前世で聖女だったレナリアが身を置いたのは、戦場だ。

 戦う相手は魔物だったり敵国だったり。

 こうして庭を眺める心の余裕などなかった。


 けれども今はこうしてゆっくりと庭を眺める事ができる。

 その幸せを、ただこうして感謝したい。


 レナリアがそうして幸せをかみしめていると、教室の外から生徒たちが戻って来る気配がした。


 最初に入ってきたのはフレーゲル・ガンシュだ。ミルクティー色の長い髪を左側でゆるく結んでいる。いつも笑っているように見える細い目が、レナリアの姿を見て「おや」という様子を浮かべた。


 次に入ってきたのは肩までの緑の髪に青い瞳を持つアジュール・ライトニアだ。


「あれ、一番乗りだと思ったんだけどな」

「こんなところで早さを競ってどうするの。えーっと、レナリアさんってお呼びしていいのかしら?」


 フレーゲルとアジュールは元々顔見知り同士なのだろうか。ずい分と気安く話しあっている。


「ええ。もちろん。私もアジュールさんとお呼びしても?」

「ぜひそう呼んで。ああ、こっちのフレーゲルは私の幼馴染で、こちらがトレイ・サーバーさんとエイミー・マクセルさんとノエル・オーウェン君。皆ドリュアスの加護を受けているわ」


 トレイ・サーバーはまっすぐな銀髪に赤い目を持っている大人しそうな少女で、エイミー・マクセルは栗色の髪を流行の形にゆるく巻いている。


 ノエル・オーウェンは、頭を下げた後はレナリアにはあまり興味がなさそうに、気だるげに窓の外を眺めている。


 彼らからはエアリアルを守護精霊とするレナリアを馬鹿にするような気配はなかった。


 仲良くできそうだわ、と、レナリアは内心でホッとした。



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『前世聖女は手を抜きたい よきよき』
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