133話 レナリアの腕輪
迷子用の首輪をつけられたノームだが、ずっと眠っていた魔石を気に入ったらしく、しばらくどこかに行ったとしても、必ず魔石に戻ってくるようになった。
レナリアが魔石を持っていると自然に魔力が補充されるらしく、それを気に入っているらしい。
基本的に魔力をすべて放出した魔石は、色をなくし透明な石になる。
それまでは何の役にも立たないと捨てられていたが、魔力を通しやすく頑丈で透明なことから、粉々にして窓ガラスに再利用できる方法が発明されたのだ。
部屋の中からは外の景色が綺麗に見えるが、外からは目隠しになっていて部屋の内部が見えず防犯に優れる事から、学園でも貴賓室や王族専用の食堂の窓ガラスに使われている。
そのように魔力を放出しきった魔石に再び魔力を
だがノームが眠っていた魔石は、長い間精霊を内包していたからなのか、それともその精霊がレナリアの魔力を吸収したからなのかは分からないが、魔石の中に戻ったノームがすべてその魔力を吸い取って魔力がなくなってしまっても、レナリアが肌身離さず持っていれば再び元の魔石に戻るということが分かった。
そこでレナリアはノームの魔石を常に身に着けていられるよう、霧の聖女を発生させる魔道具として作った腕輪に、その魔石を新たに加えた。
「なんだか豪華だわ……」
レナリアは手にした腕輪を、角度を変えて眺める。
シェリダン家の紋章である薔薇の刻印がされている腕輪は、風の魔石に水と火の魔法紋を持ち、さらにその横にはノームが住む魔石がついている。
これで光と木の属性が揃えば、この腕輪にはすべての属性が付与されるのではないだろうか。
「確かにノームをペットにして飼うって贅沢だよね」
うんうんと頷いているフィルは、原始の精霊はペットだと認識することにしたらしい。
「えっとー、ノームがレナリアのペットってことはー、フィルの子分よりも下だよねー? チャムはフィルの子分だからー、ノームはチャムのー……なんだろー?」
横にいるチャムは、首を傾げてうんうん唸りながら、自分がノームよりも上の立場かどうなのかを気にしている。
「アンナ、学園にはこの腕輪の装着の許可を申請してくれた?」
「もちろんでございます」
「それならつけていけるわね」
学園では、申請さえしていれば、身を守るために魔道具を身に着けることが許可されている。
具体的な効力を記入する必要がないので、レナリアの腕輪の内容も学園側に知られる心配はない。
もちろんアーサーには報告済みだし、話の流れで王族兄弟にも知られているが、レオナルドたちも最近ではレナリアの規格外の行動に慣れてきつつあるのか、あまり驚かなくなってきた。
きっとこの腕輪を見せてもそれほど驚かないだろう。
「それにしても迷子用の首輪も小さくなるなんて不思議ね」
「私たちには、ノームに着けた途端に見えなくなりましたよ」
レナリアが魔石の中で眠るラヴィを見て不思議そうにする。
その隣でアンナも腕輪の中のノームを見ようとするのだが、アンナには何も見えない。
レナリアから聞くノームの姿は、普通のノームのような石ではなく可愛らしい子ウサギだというので、見ることができなくてとても残念に思っていた。
「気持ちよさそうに寝ているみたい」
「きっと安心しているんですね」
前足を体の内側に折り畳んで座っているラヴィは薄目になっていて、どうやら安心して眠っているようだ。
その首には迷子用の魔法陣を刻んだ魔石をつけた首輪がついている。
魔石の中に魔石があるというのも不思議な話だ。
ノームにつけている首輪は、つけた途端にアンナたちには見えなくなってしまった。
それどころか、自分の身体よりも小さな魔石に入っていく時に、どういうわけか首輪も小さくなるのだ。
なぜそんなことができるのかフィルにも分からないらしいが、原始の精霊だからということで納得するしかない。
とりあえず精霊たちの仲が良好なので、レナリアは安心した。
「そろそろエレメンティアードね……」
「お嬢さま、がんばってくださいね」
「ええ」
毎年最下位の風魔法クラスだが、今年はもっと上位にいくだろう。
観戦にくる両親にも早く会いたい。
エレメンティアードが始まるのは、もうすぐだ。
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