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前世聖女は手を抜きたい よきよき【コミカライズ開始】 作者:彩戸ゆめ

エレメンティアード

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128話 大発見

 レナリアに宣言した通り、フィルは寮から校舎までの途中で突風を起こし、ロウィーナとキャサリンの髪の毛をぐしゃぐしゃにした。


 もちろん風魔法クラスの生徒が疑われたが、近くに誰もいない時ですら突風が起こるので、不幸な偶然か、もしくはどこかでエアリアルの怒りを買ってしまったのではないかと噂された。


 それを聞くたびに、レナリアの胸が痛む。


 だがフィルを止めると今度は髪の毛を丸焦げにしに行きそうなので、せめて一週間で終わりにしてあげてと頼むしかなかった。


 当然彼女たちがレナリアにしたことは、すぐにアーサーの耳に入った。

 とてもいい笑顔を浮かべたアーサーは、すぐに父に連絡を入れた。


 きっと娘を溺愛するシェリダン侯爵が、アーサーの情報を元に色々と考えてくれたのだろう。

 それぞれの実家から注意された二人は、表向きは大人しくなった。


 セシルも、レナリアに対して「従妹なのだから特別扱いしてもおかしくはないだろう」という態度を一貫させている。


 側近候補たちにも言いふくめているのか、以前のように無視はされない。


 なんとなく、レナリアも特別クラスの中で馴染めるようになってきた。


 だが時折ロウィーナたちから刺すような視線を感じる。


 一方的に嫌われるのは辛いが、気にしても仕方がない。

 それよりも、仲良くしてくれている人たちを大事にしようとレナリアは思った。


「レナリアさん、そろそろリッグルの飾りは用意した?」

「ええ。もちろん」


 すっかり木魔法クラスの生徒たちと仲良くなったレナリアは、アジュールに話しかけられて笑顔で答えた。


 エレメンティアードでは、三年生までは生徒の属性を表す飾りをリッグルの鞍の下につけなければならない。


 水属性は青。

 火属性は赤。

 木属性は緑。

 土属性は茶。

 風属性は黄。

 光属性は白。


 と、それぞれ色が決まっている。


 レナリアは風属性だから、黄色の飾りが家から送られてきていた。黄色というよりも、金色に光っているような気もするのだが、遠目に見れば黄色だということにしている。


「今日から練習場が使えるようになるから、楽しみね」

「本当に、そうね……」


 レナリアが壊した練習場の修理がやっと終わって、今日から練習を再開できる。


 先日の食事会でレオナルドが意味ありげに「今度の練習場は凄いぞ」と言っていたので、なにがどう凄くなっているのか確認するのが怖い。


(今日こそノームを捕まえなくちゃね)


 レナリアが心の中で声をかけると、フィルがぴょこんと顔を出した。


「最近はレナリアの護衛で探せなかったからね。でもレナリアが魔法を使ったらすぐに出てくると思うよ。お腹ぺこぺこだろうから」


 ノームが逃げ出した後は、風魔法の授業中に窓を開ける機会がなかったので、レナリアが魔法を使っているのをノームが察知することはできなかっただろう。


 レナリアがチャムと初めて会った時のように、生まれたてで実体を持っていない状態ならばわずかな隙間を通り抜けることができたかもしれないが、ウサギの姿になってしまった今では難しい。


 精霊が実体化するというのは、魔素を吸収しやすくなるが、利点ばかりではないということだ。


(そろそろ見つけないと……学園中が穴だらけになりそうだわ……)


 ノームの被害はあれからも頻繁で、姿が見えないことからモグラかなにかの仕業だと思われている。


 一部の生徒……特に土属性の生徒たちは、モグラ狩りと称して地面の穴を探しまくっているらしい。


 だが一向にその姿を見ることができず、謎の生物モグランと呼ばれるようになった。


「人間っておもしろいよね。精霊にノームって名前をつけたはずなのに、今度はモグランって呼んでる。しかもあいつの姿は、モグラじゃなくてウサギだし」


(待ってフィル。ノームっていう呼び方は、人間がつけたの?)


「もちろん。だってボクらは人の思いから生まれたからね」


(それってどういうこと?)


「どういうことって言われても、そのまんまだよ。あのノームが原始の精霊と魔石が融合したものだとしたら、僕らは原始の精霊と人の思いが融合して生まれた」


(そんなの、初めて知ったわ……)


 精霊がなぜ生まれるのか、どうして人間と契約をして守護してくれるのか、その疑問は未だ解明されていない。


 マーカス先生の授業でも、まだ研究が進んでいないと言っていた。

 それがいきなりフィルによって解き明かされてしまって、レナリアは驚いた。


 もしかしてこれって、大発見なんじゃないかしら……。


 レナリアはとりあえずすぐに、アーサーにこのことを教えなければと決心した。





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『前世聖女は手を抜きたい よきよき』
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