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前世聖女は手を抜きたい よきよき【コミカライズ開始】 作者:彩戸ゆめ

エレメンティアード

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107話 チャムの挑戦

ブックマークがはずれたまま復旧されていない方がいらっしゃるようですので、お手数ですがご確認頂けると嬉しいです。

またこの件につきまして、活動報告

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/456859/blogkey/2703034/

でお知らせをしております。

 レナリアは魔石に魔法紋を刻むナイフに魔力をこめる。


 先ほどのセシルの水魔法の威力と同じくらいの火魔法を出さなくてはいけないから、バランスが難しい。


 しかもレナリアに頼られて張り切りすぎているチャムのしっぽの先の炎は、やる気に比例して、かなり勢いよく燃えている。


(チャム、もうちょっと魔力を抑えてもらえる?)


「こおー?」


 チャムのしっぽの炎が少し小さくなった。

 でもこれではまだ魔力の釣り合いが取れないだろう。


(うーん。もうちょっとかしら)


「むーん。これでいいー?」


 しっぽの炎はかなり小さくなった。

 でも、まだバランスが悪い。


(もう少し抑えられる?)


「難しいー」


 魔力の細かい調整は、チャムの苦手なところだ。

 自分でもしっぽの炎をチェックしながら魔力の調整をするのだが、なかなかうまくできない。


 全然思い通りにできないチャムは、眉間にしわを寄せて肩を落とした。


(チャムならできるわ)


 レナリアが励ますと、やる気になったチャムは逆に炎を大きくした。


「チャム、それじゃ反対だろ」

「だってー。難しいんだもーん」


 ぷうっとふくれるチャムに、レナリアはさらに励ましの言葉をかける。


(チャムならきっとできるわ。だからがんばって)


「……チャム、がんばるー」


 むん、とがんばるポーズになったチャムは、慎重に魔力の威力を下げていく。


 レナリアはじっとチャムのしっぽを見つめる。

 やがて、ちょうど良い大きさになった。


(ありがとう。ちょうどいいわ)


「チャム、てんさーい!」


 チャムに魔力を流してもらい、ナイフでゆっくり魔法紋を刻む。


 抵抗はあるが、思ったほどではない。


 やがて魔石の水の魔法紋が刻まれた反対側に、炎の魔法紋が刻まれた。


「……できました!」

「見せてもらってもいいかな?」

「はい。どうぞ」


 レナリアが魔石を渡すと、セシルはそれをじっくりと見た。


 その間に、レナリアはチャムを思いっきりほめてあげる。


(チャム、凄いわ。あんなに難しい魔力操作を、本当によくがんばったわね)


「チャム、えらいー?」


(ええ、とっても偉かったわね)


 レナリアが頭をなでてあげると、チャムは嬉しそうに目を細める。


 だが気に入らないのはフィルだ。


 チャムが成功させるのを願ってはいたけれど、いざ成功してレナリアにほめられると、自分だって凄いんだぞというのを証明したくなる。


「ボクだってそれくらいできるよ」


 フィルはそう言って、セシルが持っている魔石に向かって魔法を放つ。


「フィル、何をするの?」

「もちろんレナリアのお手伝い!」


 フィルの放った魔法は魔石に吸い込まれる。


 レナリアは何だか大変なことが起こってしまうのでは、と、とっさにセシルの持つ魔石を取り上げようとする。


「レナリア?」


 だが魔石に触れた瞬間、少しだけレナリアの魔力が流れてしまった。

 とたんにもくもくと白い蒸気が湧き起こる。


 そしてすぐに部屋中が白い霧で見えなくなってしまった。


「殿下!」

「レナリアお嬢さま!」


 それぞれの護衛が姿の見えなくなった主人の安否を確かめようと声を上げる。


「あ……。ごめんなさい、私のせいだわ。フィル、風でこの霧を払って!」

「おっけー」


 レナリアに頼られて嬉しいフィルは、すぐに風の魔法で霧を払う。


 すると、席を立ってレナリアに触れないように、レナリアの椅子の背もたれに捕まりながらかばうような体勢になっているセシルがいた。


「え……セシルさま?」


 レナリアが驚いて見上げると、優しく見下ろすタンザナイトの瞳があった。


 どうやら霧が発生して見えなくなった時に何かあってはいけないと、レナリアを守ってくれていたようだった。


 目を瞬いていると、セシルは大人びた微笑みを浮かべる。

 その微笑みが、前世で見たマリウス王子の笑みに重なる。


「レナリアに何かあったら大変だからね」


 セシルはそう笑って元の席に戻ると、手に持ったままの魔石を光に透かして見る。


「魔法紋は完璧だよ。さすがレナリアだ。……おや?」


 別人だと分かってはいても、ふとした瞬間にその面影を探してしまっていたレナリアは、何かを見つけたようなセシルの言葉に、ハッと我に返る。


「どうかしました?」

「魔石に、こんなインクルージョンがあったかな」

「見せてもらってもいいですか?」


 インクルージョンというのは宝石の中に含まれる内包物のことだ。


 レナリアが選んだ風の魔石は、内包物がなにもない綺麗な魔石だったはずだ。


 おかしい、と思ってセシルから魔石をうけとって良く見ると、確かに魔石には何かの影が入っている。


 レナリアもよく分からずに首をかしげていると、フィルがパタパタと飛んできた。


「これはね霧の聖女だよ。姿が見えるようにしたんだ!」


 フィルはそう言って、誇らしげに胸を張った。





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『前世聖女は手を抜きたい よきよき』
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