米国原産品または米国原産品を含む製品を日本から再輸出する際のEARの規制および再輸出許可申請方法
質問
当社(メーカー)は米国から調達した部品を組み込んで完成品にし、諸外国に輸出します。米国産部品の再輸出が米国輸出管理規則(Export Administration Regulations: EAR)に該当しますか。また、商務省の輸出許可が必要かどうかを調査する方法および留意点を教えてください。
回答
米国商務省産業安全保障局(Bureau of Industry and Security: BIS)は、軍事用としても非軍事用としても利用可能な「デュアルユース品目」と呼ばれる商用製品の輸出の管理・規制を管轄しており、米国輸出管理規則(Export Administration Regulations: EAR)の執行を所管します。軍事用としての利用を意図しない、純粋に一般向けの商用製品もEAR規制の対象となる可能性があります。また、米国の輸出管理関連法規は、管轄権の及ばない他国での取引にも域外適用されます。ある物品が米国から輸出されるときのみでなく、すべての再輸出取引に適用されます。
I. EAR規制
- EAR規制の対象品目
EAR規制対象品目は広範にわたります。物品(Commodities:服、建築資材、回路基盤、自動車部品など)、ソフトウェア(Software)、技術(Technology)も含まれます。ただし、すべてのEAR規制対象品目の再輸出に商務省の輸出許可が必要なわけではありません。輸出許可の必要の有無は、対象製品、輸出国、輸出先(輸入者)、輸出用途により異なります。特に注意を要するEAR対象品目は規制品目リスト(Commerce Control List: CCL)に掲載されています。なお、他の連邦政府機関(国務省、財務省、原子力規制委員会、エネルギー省など)によって輸出・再輸出が管理されている製品は、EARの規制対象外です。詳細はEARパート734.3
(b)(1)を参照ください。
再輸出に関するEAR規制対象品目(Items subject to EAR)は以下の3つです。
- 米国国外にあるすべての米国原産品目
- 米国原産品目を組み込んだ非米国産の品目
さらに以下の4つに分かれます。
- 輸出規制リスト(Commerce Control List: CCL)に該当する米国原産品が組み込まれた(incorporated)外国製品
- CCLに該当する米国原産のソフトウェアが組み込まれた(bundled)外国製品
- CCLに該当する米国原産のソフトウェアが組み込まれた(commingled)外国製のソフトウェア
- CCLに該当する米国原産の技術が組み込まれた(commingled)外国製技術
これらのうち、外国製物品に組み込まれた米国原産品の割合がその価値において、あらかじめ設定されたデミニマスレベル(De Minimis Level:最低限レベル)を超えない場合には、一部の製品を除き、当該外国製品はEARの規制対象外です。設定されるデミニマスレベルは、輸出先によって異なります。デミニマスレベルについての詳細は、EARパート734.4とパート734補足2を参照ください。
- 再輸出に際して厳格な制限が設けられている「特定の地域」を仕向地とする「直接製品(immediate product)」および「直接製品」に分類される工場で生産された製品
直接製品とは、米国原産の技術、ソフトウェアを直接使用して米国外で作られた製品を指します。例えば、米国製のソフトウェアを使って日本国内で開発され、イラン向けに生産した扇風機、主要設備が米国製である日本国内の工場でイラン向けに生産したクーラーなどがこれに該当します。テロ支援国家など、特定の輸出先に対する規制条項です。詳細は、EARパート736.2(b)(3)を参照ください。
- デミニマスルール
EARで設定する仕向地のうち、E:1と呼ばれるグループ(イラン、北朝鮮、シリア、スーダン)が仕向地の場合は、以下の品目のデミニマスレベルは10%以下となります。これを超えなければEARの規制対象外です。
- 外国製物品に組み込まれたCCL該当の米国原産品や米国原産のソフトウェアの合計金額が当該外国製物品の再輸出金額の10%以下の場合
- 外国製ソフトウェアに組み込まれたCCL該当の米国原産のソフトウェア合計金額が当該外国製ソフトウェアの再輸出金額の10%以下の場合
- 外国製技術に組み込まれたCCL該当の米国原産の技術の合計金額が当該外国製技術の再輸出金額の10%以下の場合
E:1グループ以外の地域を仕向地とする場合には、以下の品目のデミニマスレベルは25%以下となり、これを超えない限り、EARの規制対象外となります。
- 外国製物品に組み込まれたCCL該当の米国原産品や米国原産のソフトウェアの合計金額が当該外国製物品の再輸出金額の25%以下の場合
- 外国製ソフトウェアに組み込まれたCCL該当の米国原産のソフトウェア合計金額が当該外国製ソフトウェアの再輸出金額の25%以下の場合
- 外国製技術に組み込まれたCCL該当の米国原産の技術の合計金額が当該外国製技術の再輸出金額の25%以下の場合
デミニマスルールが適用されず、米国成分割合に関係なくEAR規制対象となる品目があります。
例:キューバ、イラン、北朝鮮、スーダン、シリア向けの高性能コンピュータ、ECCN 5E002で規定される米国製技術を用いた暗号技術。
E:1グループ、D:5グループ、中華人民共和国向けの600番台品目や9x515を組み込んだ製品などは、上記のデミニマスルールの適用を受けないケースです。詳細はEARパート734.4を確認してください。
II. 再輸出許可の判定基準
米国から輸出する品目(物品、技術、ソフトウエア)がEARで規定されている輸出規制品目に該当し、商務省の輸出許可を必要とするかどうかを判定するには何を、どの国へ、誰に、どんな用途で輸出するのかを明確にする必要があります。
まず、当該製品に組み込まれた米国原産品がCCLに掲載されているか、つまり規制対象品であるかどうかを調べます。BISは、輸出の際に規制が適用されるすべての品目(物品、技術、ソフトウェア)をCCLに掲載しており、これらの規制品目に0から9までの番号を割り当て、10のカテゴリーに分類しています。CCLは、EAR774補足1に収められています。
- 0=核物質、核施設・装置およびその他
- 1=材料、化学物質、細菌、有毒物質
- 2=材料加工
- 3=エレクトロニクス
- 4=コンピュータ
- 5=通信装置、情報セキュリティ製品
- 6=レーザーおよびセンサー
- 7=航法装置、航空電子
- 8=海洋技術
- 9=推進システム、宇宙機器、関連施設
さらにそれぞれのカテゴリーは次の5つのグループに分類されています。
- A=システム、機材、コンポーネント
- B=製造機器および試験装置
- C=材料
- D=ソフトウェア
- E=技術
CCLでは、規制している各品目に5桁の輸出規制品目分類番号(Export Control Classification Number: ECCN)を割り振っています。再輸出にあたって、商務省の輸出許可が必要となるかどうか調べるには、CCLで当該品目にECCNが付与されているかどうかを確認する必要があります。ECCNの5桁の記号には意味があり、例えば、3A001というECCNの最初の数字3はカテゴリーを示し、2番目のAはグループを示しています。3番目と4番目の数字は規制理由を示しています。5番目の数字は、品目ごとに割り当てられている通し番号です。
輸出する品目がどのカテゴリーに属し、さらにそのカテゴリーのどのグループに属するかの見当をつけてCCLを確認します。CCLではECCNの右側に品目名が記載されていますので、その部分も確認します。規制理由、規制レベル、どのような許可例外が適用されるかなどもそれぞれのECCNに記載されています。
当該品目のECCNが見つかったら、次はカントリーチャート(規制理由による国別許可要否判定リスト)を参照して、輸出先に関する規制を調べます。カントリーチャートにおいて、仕向先と規制理由・規制レベルで交差する欄に「X」印がある場合は、輸出許可が必要になります。その場合でも上記の許可例外が適用される場合は、顧客、用途等のチェックで問題がなければ輸出許可不要で輸出することができます。「X」印がない場合には、輸出許可は不要と判断できます。
再輸出を考える品目が商務省管轄下のもの(EAR規制対象品目)であっても、CCLに記載がない場合(個別のECCN番号が割り当てられていないケース)は、当該品目の番号はEAR99となります。EAR99に該当する品目は、低技術の消費財分野の品目で構成され、通常は輸出許可不要とされていますが、これら品目を禁輸国や懸念のあるエンドユーザー、あるいは禁止されている用途に使用するエンドユーザーに輸出する場合などには許可申請の対象となり、原則不許可になります。禁輸国や、懸念のあるエンドユーザーについては、BISのウェブサイトおよびEARパート744補足4のエンティティーリスト(Entity list)を参照してください。
CCLからECCNの判定が困難な場合には、BISに当該製品の正確なECCNを問い合わせることが可能です。ECCNの問い合わせは、電子申請システム(Simplified Network Application Process - Redesign: SNAP-R)を利用します。詳細についてはEARパート748.3
を参照してください。
III. 再輸出許可申請方法
再輸出の許可申請は、BISが特に紙書類による申請を要求あるいは許可しない限り、全て電子申請システム(SNAP-R)を利用して行います。
SNAP-Rにアクセスして再輸出のライセンス申請を行うには、まず、会社のID番号(Company Identification No.: CIN)を取得してユーザアカウントを作成する必要があります。BISウェブサイト内にあるSNAP-R企業登録ページで、ユーザアカウントとCINを取得します。
IV. その他
現在米国には、輸出/再輸出を規制するリストとして、国務省が運用する米国武器リスト(United States Munitions List: USML)と、BISが運用するCCLの2種類があります。
関係機関
関係法令
参考資料・情報
- 商務省:
-
Commerce Control List(CCL)
-
カントリーチャート
-
再輸出許可書が必要となるエンティティーリスト
-
The Simplified Network Application Processing Redesign(SNAP-R)申請手続き
調査時点:2014年11月
最終更新:2018年4月
記事番号: A-020135
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