ブランド牛の横綱「松阪牛」の産地である三重県松阪市では、豊かな焼き肉文化が花開いている。誰もが食べやすい価格で、無駄なくおいしく松阪牛を食べ尽くすその文化の一端を担ってきた名店で、本物の味にとろけてみよう。
Yahoo!ライフマガジン編集部
産地であっても松阪牛は高根の花
三重県松阪市と言えば、泣く子も黙る「松阪牛」の産地。全国各地にブランド牛は数多くあれど、松阪牛のご威光はやはり別格といっていいだろう。
しかし、一般庶民がそうそう気安く食べられるものでないのは産地であっても同じ。そんな庶民の味方となるのは、昔から営業している焼肉店だ。
数多くの焼肉店が存在する松阪市の中でも、「一升びん」は創業以来54年間、上質の牛肉をお値打ちな価格で提供しているため、地元民はもちろん観光客も多く訪れる人気の店だ。全12軒の店舗を持つことから、その人気ぶりはうかがい知れよう。
松阪牛はすき焼き用として消費されることが多く「一升びん」の創業当時、焼き肉として提供する店はほとんど存在しなかったそうだ。
そんな中、「一升びん」創業者は「肉は高くてなかなか一般の人では手が出せないが、ホルモンだったら気軽に食べられるから」と、「松阪牛のホルモン焼き」を主体としてオープン。その後、松阪牛の認知が高まるにつれ赤身肉も焼き肉として食べられるようになっていった。
上質な脂が口中でとろける
「一升びん」の松阪牛は最高ランクの「A-5」のもの。それを誰もが食べやすい価格で提供できる秘密は「一頭買い」にある。
牛肉は部位毎に仕入れると割高になりやすい。そこで、一頭まるまる仕入れ、肉も内臓も無駄なく食べることで結果としてコストを下げている。店舗数の多い「一升びん」だからできる方法だ。
「松阪牛の魅力は上質の脂。融点が低いので口に入れるととろりと溶けるが、脂の質が良いのでしつこさがなく甘味がある」と、語るのは2代目社長の浅井松寿さん。
丁寧に育てられた松阪牛の恩恵はホルモンからも感じ取れる。じっくりと火を通していると次第に厚みが増し、ぷりっとした張りが出てきて、かみしめると肉汁がほとばしるのだ。
このホルモンに合わせるのが、特製の甘辛い味噌ダレ。ホルモンと相性がいいからと、松阪周辺で古くから営業している焼肉店ではこの味噌ダレ文化が広がった。
国産の炭火で焼くのも「一升びん」スタイル。高温で表面をパリッと焼き、遠赤外線効果で芯まで火を通すため、ジューシーさが損なわれない。「いいお肉なので焼き過ぎないで」という浅井社長からのアドバイスを参考に、三重県へ来たら松阪牛をぜひ味わって!
※掲載の内容は2016年4月時点の情報に基づきます。
※2019年5月に店舗(住所、電話番号、営業時間など)、メニュー、料金などの一部情報を更新しました。