美少女になってちやほやされて人生イージーモードで生きたい!   作:紅葉煉瓦

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#71 都会の乗り換えは一度間違えると大変

「うぅ、つかれた……」

 

 うちの学校は12月26日に学校が終わる。

 だから今日は実質最後の授業の日だったんだけど、高校2年生の冬は来年の受験に向けて色々と準備が必要でこんこんと小難しい説明をされ続けて頭が疲労を訴えていた。

 今すぐ家に帰ってお風呂に入ってベッドにダイブしたいところだけど、今日はこの後にスタジオでクリスマス配信をしなきゃいけないからそういう訳にもいかない。

 学業で疲れ切った身体を押して電車に乗り込み、本社ビルへ向かう。

 

 最近は何かとスタジオで収録やレッスンがあるせいで、最寄り駅からどの電車に乗ればスムーズに着けるかというのも分かってきた。

 最初の頃は一人で電車に乗ったら逆方向に行ったり迷子になったりと、遅刻をしまくっていたのが今となっては懐かしい……。

 短縮授業のおかげで5限目で終わったこともあり、帰宅ラッシュの満員電車に揉まれることもない。

 身体が小柄なせいで満員電車に乗ってしまうと人の圧で押し潰されてしまうから、座れる今の時間帯は本当にありがたい。

 

 それからどんぶらこ、どんぶらこ、と数十分電車に揺られ続ける。

 車内でスマホにイヤホンを挿してあるてまの配信を見ていたんだけど、途中で疲労からこっくりこっくりと寝落ちしていた。危うくあと数分起きるのが遅かったら乗り過ごすところだった……。

 それから数回の乗り換えを経てようやく目的の駅に到着した。流石に乗り換え後は一眠りするほどの乗車時間がなかったので乗り過ごす、なんてことはなかった。

 

「人が多い……」

 

 相変わらずこの街は人が多いなぁ、と思いながら人波に攫われないように懸命に前進していく。

 身体が小さいと日常生活を送るのも何かと一苦労だということに、最近遠出をするようになって身に沁みて理解した。

 今までは家から出る、なんてことが滅多になかったからなぁ……。ほら、通販があれば基本的に世界って完結するから、さ。

 

 駅からしばらく歩いて目的のビルに辿り着く。

 受付で関係者カードを見せて中に入れてもらい、ようやく人心地付いた。

 スマホで時間を確認すると、まだ打ち合わせの集合時間には大分時間があった。

 正直、真っ直ぐ来るんじゃなくてちょっと寄り道しても良かったなぁ、と思わなくもないけど今更後悔しても遅い。

 わざわざ中に入れてもらったのに、外出するのは面倒だと黒音今宵の怠惰な部分が声を上げているし、事務所かスタジオを外から見学して時間でも潰そう。

 

 そんな感じでふらふら~っと廊下を歩いていると、

 

「おや、そこにいるのは今宵さんでは?」

「ぴぃ!?」

 

 急に背後から声を掛けられて、飛び上がるほどビックリした。

 完全に気を抜いてたから名前を呼ばれて心臓が飛び出るかと思ったぁ。

 

「あ、えと、ルカ、さん……?」

「イエス! ルカ・イングリッドなのですよ! リアルで会うのはお久しぶりですね!」

 

 天然ブロンドヘアに少し高めの身長はわたしからは少し見上げる形になる。

 そこにいたのはシャネルカ・ラビリット改め、ルカ・イングリッドだった。

 最後に会ったのが夏コミのときで、それが初対面でもあったからこれが2度目の顔合わせになる。あれから数ヶ月の時間が空いているので、久々に会うルカさんに妙な緊張感を覚えてしまう。

 ネットでよく通話する相手でも、実際に会って話すとやけに緊張して普段通り喋れないのはなんでだろうね……。これがネット弁慶ってやつか。

 

「ミーティングまでまだまだ時間があるのに、今宵さんはお早いのですね!」

「あ、学校が早く終わったから……。る、ルカさんも早いですよね」

「ルカはお家が近いので誰かいないかなーと思い、早く来たのですよ」

「あ、そですか……」

 

 う、うーん気まずい。

 以前に比べればコミュ力は大分付いてきたと思いんだけど、自分から話を広げるのは未だに苦手な分野だ。相手が会話を先導してくれると適当に相槌を打ちながら乗っかれるんだけど、ルカさんは何故か普段のマシンガントークを控えて謎にニコニコと笑顔を浮かべているだけだ。

 うぅ、顔を見つめるんじゃなくて喋ってくれ……。

 

「………」

「うぅ……」

 

 な、なんだ、居心地が悪いぞ。

 そりゃ今は誰も歩いてないけどビルの廊下で片やニッコニコの外国人と、片や相手の目線から顔を逸らす小柄な女子高生だ。傍から見れば異様な光景に見えるだろうし、当事者からすれば余計に違和感を覚えてもおかしくない。

 違和感がない人間がいるとすれば、意図してそういう空気を作り出している下手人だろうけど……。

 

「今宵さん」

「ひゃ、ひゃい」

「ふっふっふっふ」

「ひぇ……」

 

 な、なんだなんだなんなんだ?

 ルカさんはニコニコした笑顔から一転、次は怪しく笑い出した。

 この人は一体何がしたいんだ!?

 

「はいはいはい、今宵ちゃんをイジメるのも程々にしよーねー」

 

 一体これから何が起こるのか戦々恐々としていると、パンパンと手を叩きながらきりん先輩──七星七海さんがやって来た。

 

「あやや、ごめんなさいなのですよ。今宵さんってばコロコロ表情を変えるものですから、思わず意地悪したくなったのです」

「ダメだよー年下の子をからかって遊んじゃ。ほら、今宵ちゃん涙目になってるし。大丈夫だった?」

「だ、だいじょぶです」

「怖かったよねー。ほら、優しい七海お姉ちゃんのところにおいでー」

「七海さんのほうが危ない人に見えるのですよ……?」

 

 両手を広げてさあ飛び込んでこい、と言わんばかりの七海さんはちょっと危ない雰囲気があった。

 どうして会う人会う人わたしの周りには変な人が多いんだろう。

 ネットだとマトモな人もリアルで会うとなんかちょっと変な人が多いし、でも変な人じゃないとVtuberなんか出来ないっていう理由ならこれが正常なんだろうか……謎だ。

 

「おっと、今宵ちゃんを見てると保護欲というか母性が刺激されるんだよねー。ほらほら、チョコレートあるよー」

「チョコ?」

 

 チョコは大好物だ。

 七海さんがポケットから出したチョコに視線が奪われて、ふらふらと誘われるように近寄る。

 特に疲れた身体にはチョコの糖分は格別なもので、いつもより魅力的に見える。

 

「うーん、ちょろい……」

「流石のルカも今宵さんを見ていると心配になってくるのです」

「チョロくないが」

 

 貰ったチョコは甘かった。あと抱きついてくる七海さんは暑苦しかった。

 

 ◆

 

「くぅくぅ……」

 

 事務所の談話室に入ると祭先輩──凛音さんがソファで熟睡していた。

 

「凛音ちゃんはお昼に交代してからずっと寝てるよ。早起きしたからずっと眠たかったんだろーね」

「無防備ですね……」

「それだけ皆のことを信頼してるってことなのかもね」

 

 隣のソファに腰を下ろしても起きる気配はない。

 興味本位でほっぺをツンツン、としてみるけど小さく寝息を漏らすだけでやはり起きる気配はない。

 外でここまで熟睡できるって逆に凄いな……。

 

「他の人はいないんですか?」

「朝のゲストはみんな終わったらすぐに帰っちゃったね。今は結ちゃん、桜花ちゃん、リースさん、京介くん、リーゼちゃんが配信してるね。咲夜さんはお仕事が終わったら来るって言ってたから、多分打ち合わせぎりぎりになるんじゃないかな? あと、アルマちゃんが後で差し入れのケーキ持ってきてくれるって言ってたよ」

「ルカは今からケーキが待ち遠しいのですよー」

「ルカちゃんはお昼もコンビニのケーキ食べてたよね」

「甘いものはいくら食べても美味しいのです!」

 

 まあ甘いものが美味しいのは事実だ。

 にしても、ルカさんはお昼からずっといるのか……。

 一応今日は平日だし、働いている人や学校の人も休みを取ったり時間をズラしたりで対応しているというのに、ルカさんは一日事務所で過ごしているってこの人はいったい何をしている人なんだろう……。

 

 皆の私生活に興味は尽きないけど、その辺を詮索するのはマナー違反だからぐっと堪える。

 それにルカさんのことだから、こっちが聞かなくても向こうからある日突然ポロポロと個人情報を漏らしそうな気がするし。

 ……思えば本名を知った経緯もいきなり向こうが名乗りを上げたからだから、あながち無いとも言い切れない。

 

「今宵さんが増えたことですし、時間まで色々遊ぶことが出来るのですよ」

「別にいいですけど、何するんですか?」

「今宵さんがしたいことで!」

「えぇ……」

 

 そんなこと急に言われても、なぁ。

 談話室にはボードゲームとか色々暇つぶしが出来そうなものが揃っているけど、どれもある程度の人数がいたほうが面白いゲームだしそもそもルールを知らないものばっかりなので手を出しづらい。

 下手につまらないゲームをして気まずくなるぐらいなら、一人で外出をするほうが幾分かマシかも知れない。

 

「っすぅー」

「あ、そーだ! 今宵ちゃん誕生日おめでとー!」

「ほぇ?」

「そうでした! サンタさんに会えるかなってワクワクして忘れていたのです! 昨日は今宵さんのお誕生日、おめでとうございます!」

「あ、あぁ……。ありがとございます」

「それにしても昨日はどのツールでもつぶやかないからビックリしたよー。でも日付が変わる前にちゃんと呟いてたし、よかったよかった」

「うっ、ご心配をば……」

 

 昨日呟いたあともリプライで色んな人から心配されてしまった。

 その後に夏波結が『いま燦と一緒にケーキ食べてまーす』って呟いたから更に色んな人から囃し立てられて、色々と大変だった。

 次個人配信したらクリスマスイブのこととかリスナーから聞かれるんだろうなぁ……。

 

「というわけでー、はい、これお誕生日プレゼントでーす」

「え、いいんですか……?」

「もっちろん、可愛い後輩のお誕生日だからね! 先輩奮発しちゃいましたよ!」

 

 手渡されたのは小さな小包だった。

 あまり重くないから小物だろうか……?

 

「開けていいですか?」

「どーぞどーぞ」

 

 綺麗なラッピングを慎重に剥がしていく。

 これがネット通販なら雑に開けるんだけど、先輩からの誕生日プレゼントとなると変な切れ目なく丁寧に開けたくなるのが心情だ。

 途中、ビリっと行きそうになりながらも何とか包装を解いて箱を開ける。

 中から出てきたのは赤いヘアピンだった。

 

「前に前髪が掛かってトラッキングが外れるって言ってたから、ヘアピンだったら持ってても困らないかなーって」

 

 確か、一ヶ月ぐらい前に通話した時、そんな話をしたような覚えがある。

 Live2D配信はwebカメラやスマホを通して表情をアバターに反映させるから、あまり前髪が長すぎると目元のトラッキングなどが外れる時がある。

 だからそういう愚痴を零していたんだけど、まさかそれを覚えていてこうやってプレゼントを送ってもらえるなんて……。

 下手にアクセサリーとか、好みが分かれるものじゃなくてVtuber活動にも活かせるシンプルなヘアピンをプレゼントする辺り、七星七海という人間のマメさが現れていた。

 

「喜んでもらえるかな?」

 

 でも、そんなマメな彼女でも絶対の自信がないのかその瞳は不安で少し揺れているように見えた。

 頼りになる先輩の珍しい一面に驚きを覚えつつも、今の素直な気持ちを告げる。

 

「ありがとうございます。その、人からプレゼントを貰う経験とかあまりなかったんですけど……凄い嬉しいです。大切に、使います」

「よかったぁ」

 

 安堵の表情を浮かべながら胸を撫で下ろす七海さん。

 なんだかいい雰囲気だなぁ、と思っていたのもつかの間、

 

「ドーン!」

「ぴぃ!?!?」

 

 横からルカさんが急に飛びかかってきて、思わず大声が出た。

 

「ルカはプレゼントを用意するのを忘れていたので、ルカをプレゼントに差し上げるのです! さあさあ今宵さん、ルカをどうぞ!」

「いや、ちょっと、あの」

 

 ぐりぐりぐりーっと顔を擦り付けられるけど痛い痛い。

 普通に体格差があるから飛びつかれると結構痛いし、じゃれ付きも勢いが凄いのでやっぱり痛い。

 なんかさっきまでいい雰囲気だったのに台無しだよ!?

 

「むぅ……うるさい……」

「あ、凛音ちゃんが起きた」

「るか、しゃらっぷ……」

「凛音さん! 一緒に今宵さんのお誕生日をお祝いしませんか!」

「今宵……お誕生日……一緒に寝る……」

「ちょわっ!?」

 

 ルカさんに横から飛びかかられたせいで、わたしの身体はいま隣にいた凛音さんのソファに倒れ込んでいる。

 そこに起きてきた凛音さんが両手でわたしをガッチリとホールドして、すやすやと再び寝息を立て始めた。

 片や凛音さんから抱き枕状態で、片やルカさんから子犬のように──体格で言うと寧ろこっちが子犬だが──じゃれつかれて、全く身動きが取れなくなってしまった。

 助けを求めるように辛うじて動く頭で七海さんに視線を投げるが、七海さんは「打つ手なし」、といったように諦めた表情で両手を上げるだけだ。

 

「うぐぅ、た、たすけてぇ~……」

「すみませーん、遅れましたぁー。あれ、黒猫ちゃんが揉みくちゃにされてる……?」

「たすけてぇ」

「私も混ざっていいのかしらぁ?」

 

 神夜姫咲夜がやってきて更に場は混沌として、十分後マネージャーがやってくるまでそれは続いた。




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