「天むす」の発祥は三重県津市にある天むす専門店

「天むす」の発祥は三重県津市にある天むす専門店

2016/05/17

名古屋圏の名物料理「名古屋めし」を代表する一つ「天むす」。この発祥が三重県津市にあることをご存じだろうか? もともとはお店のまかないとして食べられていた天むすの誕生の背景にある考案者の優しさと、食べる人への誠実な思いが、今も変わらず息づいていることに感心する。

Yahoo!ライフマガジン編集部

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忙しい仕事の合間に食べたまかないが名物に

おむすびの具材として天ぷらを握る「天むす」。人気の名古屋めしとして知られるこの天むすだが、三重県津市にある「千寿」が実は発祥だ。現在も天むす専門店として営業している。

三重県津市の繁華街の一角に店舗を構える。常に注文でいっぱいなので、3名のスタッフはフル回転で天むすを作る

津市の繁華街の一角にある千寿は、もともと天ぷら定食の店として戦後まもなくから営業。天むす誕生のきっかけを2代目店主の仲村磯路さんに尋ねると、創業者の水谷ヨネさんが「忙しい仕事の合間に夫に栄養のあるものを食べてもらいたいと、車エビの天ぷらをおむすびに入れて、まかないとして出したから」だと教えてくれた。「これは、おいしい」と評判を呼んだことから、昭和33年頃に天むす専門店をオープンした。

注文ごとに作りたてを提供

千寿の天むすは2口ほどで食べられる小ぶりなサイズ。一見、シンプルな作りに見えるが、実はこの中にこだわりがいっぱいなのだ。

「天むす」(750円)は5個で一人前。店内でできたてを食べることもできるが、来客の8割が持ち帰りで注文。電話注文も受け付けている

こだわりその1はご飯。三重県が開発した新しいお米「結びの神」を使用。結びの神は米の粒がしっかりしてもっちり感が強くおむすびに最適であり、より地元のものを使いたいという強い思いもあって変更したという。こだわりその2は新鮮な生エビを使った天ぷら。アカシャエビやシバエビなどのエビを使った天ぷらは、おむすびの中に入れても崩れないよう衣が少し厚め。高品質のコーン油でからりと揚げている。こだわりその3は海苔。色つやと香りのよい三重県大淀産の海苔を使用。皇后美智子様が身に着けていたストールの巻き方にヒントを得た水谷さんが、細く切った海苔を真ん中で折って巻く巻き方を考案したという。そして、こだわりその4はきゃらぶき。天むすのお供といえばきゃらぶきが定番だが、これも創業者の水谷さんが発案。まかないとして天むすを食べていた夫がたくあんが苦手できゃらぶきが好きだったことから、これを付けるようになったという。

2代目店主の仲村磯路さん。現在は3代目店主の娘さんとともにお店を切り盛りする

「創業以来ずっと、新鮮な素材を使い、注文を受けるごとに天ぷらを揚げて作りたてを提供しています」と、仲村さんは長年変わらぬ姿勢を語る。バランスのよい食材を組み合わせ、絶妙な握り加減の元祖天むすには、「おいしいものを食べてもらいたい」という初代から続く思いが今も息づいている。

※掲載の内容は2016年5月時点の情報に基づきます。
※2019年5月に店舗(住所、電話番号、営業時間など)、メニュー、料金などの一部情報を更新しました。

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